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「浮世絵 Floating World」展 旅は楽し、今年の夏は江戸時代にトリップ !

三菱一号館美術館で開催中の「浮世絵 Floating World 珠玉の斎藤コレクション」展へ、火曜日に行ってきました。
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この展覧会は、川崎にある砂子の里資料館という私立美術館で収蔵している浮世絵約500点を3期に分けて展示するというもので、第1期 「浮世絵の黄金期 江戸のグラビア」、第2期 「北斎・広重の登場 ツーリズムの発展」、第3期 「うつりゆく江戸から東京 ジャーナリスティック、ノスタルジックな視線」と題して開催されています。今回、私がうかがったのは第2期です。
 
第2期は「ツーリズム」という切り口から、葛飾北斎の「冨岳三十六景」や初代歌川広重の「東海道五拾三次之内」の展示が中心です。また、浮世絵が海外の画家に与えた影響を見るために、ロートレックなどの作品も所々で展示され、対比して見られるようになっています。イメージ 2
 
会場に入ると、まず北斎の作品が並んでいます。でも、なんというか摺りが甘いのか紙の問題なのか、あまり鮮やかな摺り上りの作品ではないように見えました。以前に、北斎はまとめて見ていて、その時の作品はとにかくくっきりはっきりと美しい摺り上りで色も鮮やかに乗っている作品でした。それで、私としてはそちらが基準になってしまっているのですが、浮世絵というのは版画ですから、何版も摺ると板自体が甘くなってくるということがあるのでしょうか。そのあたり、よく分かりませんが、今回、ここで拝見した作品は色も青すぎるし、と言って鮮やかと言うのではなく、ぼけたような風合いなのです。
 
「およよ・・・」と思いつつ進んでいくと、あっ ! これは美イメージ 5
しい ! という作品が出てきました。北斎と言えばこれでしょう ! あの波の絵です。(版画ですが) 「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」です。これは摺りもすっきりとして美しい仕上がりです。いつ見てもこの作品は美しい。大荒れの海の波間に何艘かの船が揺られています。それも大揺れ。そこに振り落とされまいとしてびっしり乗客がしがみついている姿が愛おしい。大波の向こうにはきりっと立った富士山の姿。自然の猛威に振り回されながらも必死で揺られている人間の姿と、どこ吹く風の涼しい顔をした富士山の姿の対比が鮮やかです。
 
 
部屋の角を曲がったところに、これまた有名な2枚が並んでいます。これがまた、どちらも美しい。左に赤富士「冨嶽三十六景 凱風快晴」、右に黒富士「冨嶽三十六景 山下白雨」が並んでいます。どちらもとても美しい。赤富士のバックに流れる雲は細長い雲でさらさらという感じで流れていきますが、黒富士の方ではもくもくという感じです。中国の絵に出てくるような雲とでも言いましょうか、孫悟空が乗って居そうです。そして雲間から龍が躍り出そうな雲の描写です。赤富士の方は山肌に乗っている絵の具の様子がちょっと荒い感じでこすれているように見えます。黒富士は「黒」と言いながら紫色で、紫という色の深い色合いが重なって黒く見えるような色合いです。本当に美しい。
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大きな空間に出ると絹本着色の軸装がずらり。美人画が大半で、ここはわりとすらっと見て通り過ぎます。
 
次の小部屋では、北斎の「東海道彩色摺り 五拾三次」というカルタのようなサイズのものがズラッとガラス・ケースに展示されています。細かいので見るのが大変ですが、ちまちまとみていると楽しい。別のコーナーに北斎の双六の展示がありましたが、それも見ていて楽しく、ただ非常に見づらいのが残念でした。レプリカがあれば、実際に双六遊びをしてみたいと思うほどです。
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さて、その小部屋のどん詰まりから、歌川広重の「東海道五拾三次之内」の始まりです。まず旅立ちの日本橋。これは時間違いで2枚の構図になっています。朝ともっと遅い時間です。次の部屋からはひたすら「五拾三次」が並びます。色々な土地の色々な風景。風景ですが、そこで暮らしいてる人々の生活が垣間見え、そこを通っていく旅人の様子も描かれています。茶屋でお茶を準備している風景や、店先でご飯を掻きこんでいる旅人の姿や、客の襟首を後ろから掴んで話さない宿女の迫力や、皆で力を合わせて渡って行く川や、急な箱根のの山道の斜面にもめんめんと続く旅人の小さな姿、しんとしイメージ 9た雪の夜を歩いていく美しい作品、陣屋の様子などなどなど、一枚一枚が楽しいのです。今まで、「五拾三次」を見ても気づかなかったのですが、そこに描かれている人の姿はそれぞれ表情も違い、違う模様の着物を着て、それきまるでマンガのような人物たちです。北斎の作品にこまごまと描かれている人たちも可愛いのですが、広重のマンガっぽい人物たちも可愛いのですよ。こんなに有名で高名な作品に実はこんなに可愛いマンガのような人物たちが躍動していたとは驚きました。日本と言う国はつくづくマンガの国なんですね。
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東海道五拾三次之内」がかなりあったので全部で53箇所あるのかと数えてみたらスタートの日本橋とゴールの三條大橋は数えずに53宿場のうち、33宿場でした。そうか、まだあったのね、と思いつつ、全てをズラッと見てみたいと思いました。今回出ている中では「蒲原 雪の夜」という作品が好きです。しん、とした雪の夜の音を吸い取ってしまうような静けさの中わ歩いていく旅人。白い美しい1枚です。空の色も夜ですから、灰色の濃淡で、ますます音の無い静けさを引き立てています。こういうシンとした感じは、不思議ですが時空を隔てたブリューゲルの「雪中の狩人」と相通ずるものがあります。冬景色の美しさです。イメージ 4
 
続くコーナーでは、渓斎英泉、歌川豊国と展示があり、豊国と広重のコラボというのもありました。人物を豊国、風景を広重が担当したようです。面白い試みですね。英泉や豊国の作品は人物が着ている着物の柄まで細かく凝った表現になっています。
 
最後に歌川国芳で、「縞揃女弁慶」というシリーズが面白いです。来ている着物が全てチェックで、タイトルに合わせて色々なポーズを取っている女性が描かれているのですが、江戸ものにありがちな駄洒落のようなものが多く、楽しいシリーズです。「流行猫の戯」もあるのですが、字がびっしり書かれているのに、何て書いてあるのか読めないのが残念です。何が書かれているか、現代の文字にして貼りだしてくれればいいのになと思いました。
 
総体的には楽しく満足のいく展覧会でしたが、所々、見せ方が下手だったりして残念な展示がありました。三菱一号館美術館の方に再考願いたい点です。途中、映像で浮世絵はいかにして出来るのかを見られるコーナーがありますが、これを見ることで浮世絵に対しての理解が深まり、より鑑賞を助けてくれると思います。
 
この美術館は毎回思うのですが、企画展のお土産コーナーがいささか寂しい気がします。ここもご検討いただきたい点です。
 
それにしても、こんなに楽しませてくれる展覧会であろうとは思わずに出かけました。今回の私の目玉は広重の「東海道五拾三次之内」でした。北斎の富士の絵も良かったし。浮世絵でも風景を見たい方は、ぜひともお出かけください。かなり楽しめますよ。
 
 
美術館中庭に面している入り口には大きな展覧会のポスター。
  展覧会ポスター。
  葛飾北斎「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」。
  左、葛飾北斎「冨嶽三十六景 凱風快晴」、右「冨嶽三十六景 山下白雨」。
  初代歌川広重東海道五拾三次之内 日本橋 朝之景」。
  初代歌川広重東海道五拾三次之内 箱根 湖水図」。
  初代歌川広重東海道五拾三次之内 蒲原 雪の夜」。
  初代歌川広重東海道五拾三次之内 御油 旅人留女」。