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「怒りの葡萄」読了、なぜか現代日本とリンクする物語

このところずっと読んでいたスタインベックの「怒りの葡萄」上下巻を遂に読了。

 

初めの方は物語の展開がゆっくりで、果たしてこの土地を追われた小作農の家族は、夢の土地と喧伝されるカリフォルニアに辿り着けるのか、とヤキモキしていましたが、途中からは展開が結構早く、登場人物がどんどん欠けていきます。

オクラホマを出発した時は、爺さん婆さん、父ちゃん、母ちゃん、おじさん、ノア、トム、アル、ローザシャーンとその夫コニー、子供たち2人、元説教師1人のジョード一家12人と飛び入りの説教師1人の13人。改造車のオンボロトラックに最低限の家財道具と家族を積んで長年住み慣れた痩せた土地を後にしたのでした。

途中、色々な出会いがあり、なにやらカリフォルニアに行ってもあまり良くないような情報も入ってくるものの、後には戻れず進むのみ。

過酷なトラックの旅は続くのでした。

やっとやってきたカリフォルニアの地、でも宣伝ビラは嘘ばかりで働き口は無く、やっと仕事にありついても食べていくのがやっとで、夢に見たカリフォルニアの豊かな生活なんて、ただの夢に終わりそう。

アメリカ中から不作で土地を追われた農民たちがカリフォルニアへ流入していて、賃金はどんどん下がる一方。

 

と、ジョード家の人々の苦難は続くのです。

この小説は最初、次男のトムが主役かと思って読むのですが、途中から、苦難の中、徐々に母の存在感が増してきます。男たちが元気で順調な間は後ろに控えて一家を支えるしっかり者の母ですが、苦難続きで男たちはどんどん萎れて行き、そこを母が大地のような底力を発揮し始めます。この一家の真のリーダーはおっかさんだったのですね。

この時代の貧しい農民の代表的な存在がジョード一家で、その物語が語られるのですが、奇数章ではジョード一家の物語では無く、この時代を切り取ったルポルタージュの様な話が差し込まれます。そのことで、より物語が分かりやすく展開して行きます。

上下2冊ですが、読みやすく、ジョード一家の面々の人物造形が良くできているので、この一家の行く末が気になりどんどん読み進められます。

タイトルの「怒りの葡萄」とはそういう意味だったか、と明かされる章があり、なんだか気持ちはよく分かるのです。

アメリカの30年代を描いた話ですが、どうやらアメリカ版「出エジプト」の様です。そして、なんだか今の時代の日本でも同じような労働者の実態があり、不思議と現代ともリンクしているような小説です。ちっとも古臭さは感じませんでした。

いつか読まなくちゃと思っていた、世界の名作なわけですが、読んで良かった。

きっかけは小川洋子さんの「約束された移動」という短編の中で、読まれている作品だったから、読んでみようと手に取りました。「約束された移動」に出てくる移動する物語としての「怒りの葡萄」。何かきっかけがないとなかなか「世界の名作」はハードルが高いですね。読んでみると、読みやすくて面白いのにね。ちなみにスタインベックノーベル賞受賞作家で、「怒りの葡萄」はピューリッツァー賞を取っているそうです。面白い作品なのでおすすめです。

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