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クールな不思議の国で惑う 映画「ロスト・イン・トランスレーション」

先日、図書館で「 Lost In Trancelation (ロスト・イン・トランスレーション)」という映画のDVDを借りてきました。
 
2003年、アメリカ映画、監督・脚本ソフィア・コッポラ。第76回アカデミー賞、作品賞・監督賞・主演男優賞ノミネート、最優秀脚本賞受賞。ゴールデングローブ賞、作品賞・主演男優賞( ミュージカル・コメディ部門 ) ・脚本賞受賞、などなど、この年の色々な映画祭で賞を取りまくった作品です。
 
この作品でスカーレット・ヨハンソンが大ブレイクしたのではなかったかしら。
 
そして、この映画から、「日本の渋谷は世界一クール」と言われる様になったと記憶しています。
 
あらすじは実にシンプルで、ウィスキーのCM撮影の為に来日した映画スターと仕事で来日していたカメラマンの若き妻が東京という都市の中で、言葉も通じず、文化も違い、しだいに孤独にさいなまれ、不眠症になっていく中で、出会い、共に東京の街へ繰り出して行くというお話。
 
公開当時、コラムニストだったか誰だったかが、「日本人が見てもちっとも面白くない映画」と言っていたが、実際に見てみると、面白かった。街のバックに流れる日本語のアナウンスなども、私は日本人なので全て分かってしまうせいか、見慣れた風景の中でお話が進んでいくせいか、異邦人の孤独感は分からないのだが、外国人の目で見た日本がとても新鮮に切り取られていて興味深い。
 
孤独感にさいなまれ、不眠症に陥った二人は、初めのほうではパッとしない顔をして、どうにかこうにか異国に歩調を合わせている。シャーロットが故郷の友人に電話して、「とても変わっている所よ」と日本について語るシーンは、まさに不思議の国に迷い込んでしまったアリスといったところ。ボブもシャーロットも自分の意思で日本にやって来たわけではないので、慣れない状況に右往左往、精神的にもヘトヘトといった風なのだ。
 
しかし、「このホテルから脱出しよう。この国からも脱出しよう」と夜の街に繰り出していく二人は、日本人の友人たちや若者と触れ合い、一緒に飲んでしゃべって笑って踊って歌って、次第に日本に溶け込んでいく。こうなってくると気持ちも前向きになってくる。
 
「この国に来ることは2度とないわ。今回があまりに楽しすぎるから」とお互いに言い合うまでになっている。
 
ボブとシャーロットは不思議の国に迷い込み、一緒に冒険していく同士といったところか。この二人の間に流れる友人以上、恋人未満の関係性が、不安定な状況での出会いとマッチしていてとてもいい。この二人は、2度と会うことは無いのだろう。しかし、この日本で一緒に過ごした短い日々のことは、二人とも一生心の奥深くにしまって忘れることはないだろう。
 
ボブにビル・マーレイ、シャーロットにスカーレット・ヨハンソンというキャスティングも絶妙で、この作品を引き立てている。そして、もうひとつの主役は、ネオンサインに輝く東京の街。時に雑然と、時に妖しく、時に優しく人々を誘う街としての東京。
 
日本人が見ても十分に楽しめる作品。今、毎年多くの外国人が日本に詰め掛けている。「クール」な日本を、ぜひ日本人も確認したい。東京の街が好きになる1本。数年後、多くのお客様をオリンピックでお迎えする前に、外国人の目を通して見た東京を知っておくのもよいだろう。