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カラヴァッジョの天国と地獄を見る 「カラヴァッジョ展」

今日は東京上野の国立西洋美術館で開催中の「カラヴァッジョ展」に行って来ました。

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6月12日までの開催のせいか、チケット売り場で10分ほど並びました。中に入って、そこそこ混んでいましたが場所によってはじっくり見られ、そんなに酷い状態ではありませんでした。
 
今回の展示会では、日本におけるカラヴァッジョの展示では出展数が11点と今までで最大らしいです。11点のカラヴァッジョ作品の中で日本初公開のものが何点も含まれているそうです。さらに、2年ほど前に見つかった「法悦のマグダラのマリア」を世界初公開。と、まあ、カラヴァッジョの作品を色々見て行こう、カラヴァッジョに影響を受けた周辺の画家も一緒に紹介しよう、という展示会です。
 
作品数は51点で、うち11点がカラヴァッジョの作品、さらに資料が6点です。
 
構成は下記の通り。
 
Ⅰ 風俗画 : 占い、酒場、音楽
Ⅱ 風俗画 : 五感
Ⅲ 静物
Ⅳ 肖像
Ⅴ 光
Ⅵ 斬首
Ⅶ 聖母と聖人の新たな図像
資料
 
カラヴァッジョは「天才にして殺人者」というキャッチ・コピーが付いている様な画家です。ひとりの画風がそれまでの絵画の流れをガラッと変えてしまうほどの画力を持ち、「画家の中の画家」とまで言われる画家です。その一方、粗暴で頭に血が上りやすい性格、素行の悪い連中との付き合い、度重なる逮捕と暴力沙汰など、性格と生活面に問題がありすぎる人物です。得てして天才とはその才能が見合わないようなキャラクターの場合がありますが、そういったタイプです。
 
風俗画として描かれた絵は占いをするフリをして指輪を盗もうとする若い女や酒場、賭博、音楽といったものは、彼の普段の生活にありふれているよく知った場所や事だったのでしょう。今回は出ていませんが、カラヴァッジョの有名な作品で「聖マタイの召命」という作品がありますが、あれも舞台は酒場のように見えます。なんというか、酒場らしい場所の絵はとてもなじんでいると感じます。
 
今回の目玉は世界初公開の「法悦のマグダラのマリア」ですが、今回の展示で私がベストだと感じ、一番好きなのは「エマオの晩餐」です。エマオという町でキリストの弟子2人が夕食を取ろうとしていたところに現れた旅人に、一緒にどうぞと誘ったところ、その男は夕食に祈りを捧げ始めた。そこで弟子たちはキリストが復活して現れたのに気づいたが、その時にはすでにキリストの姿は無かったというお話です。作品では、キリストが食べ物に祈りを捧げているシーンです。
 
この絵は実はもう一枚あるそうで、そちらの方が人物たちの身振りが大きく派手な画面構成になっています。今回公開の作の方が年代が後で描かれたそうで、色味も落ち着いていて、人物の動きも大人し目です。光源がどこなのか、はたまたキリストが光源なのか、キリストを中心に光が当たっている暗い部屋。テーブルを挟んで手前に弟子が左右に、テーブルの向こうに弟子の間になるようにキリスト、その右上に宿の主人と妻なのか、キリストが祈るのを見ている男女。静かで地味な絵なんですが、その地味の中にしみじみとした明るさがある不思議な作品です。見ていると、涙が湧いてくるような、不思議な力があります。ずーっとそこで見ていたい絵です。
 
私はカラヴァッジョはあまり興味がありませんで、3月1日から開催しているこの展示会もぐずぐずしていて今になってしまったわけです。上手いしすごい画家なのは理解しているものの、イマイチ好きになれない画風の画家でした。何がイヤなのかな~と考えたところ、「果物籠を持つ少年」や「バッカス」などの顔が嫌いなんですね。なんか小太りで好きになれない。これは、カラヴァッジョ自身がモデルになっているのだそうです。モデル代が出せなかった為、鏡で自分を見て描いたのだとか。このどちらも果物やワインなど、静物はすごく上手なんです。でも人物が嫌い。今回、カラヴァッジョ嫌いの謎がとけました。
 
あと、私がお勧めするのは競作と言われる「エッケ・ホモ」です。同じ発注主がカラヴァッジョとチゴリに同じ画題で注文したそうです。この「エッケ・ホモ」のキリストの姿は諦観というか全てを受け入れている感じです。チゴリの方のキリストは悩ましい表情をしています。カラヴァッジョの方のユダヤ総督ピラトは黒い服に黒い帽子で渋めでどこか法律関係者のようです。感情を押し殺したような表情。片やチゴリの描くピラトはターバンを巻き、アラブ風のローブを着ています。色も鮮やかで、彼の表現も感情的に大きな身振りとなっています。どちらも良く出来ています。あとは好みの問題かと思います。どこに飾るかにもよりますね。
 
「エマオの晩餐」と「エッケ・ホモ」はお勧めです。
 
カラヴァッジョに影響を受けた画家たちのことを「カラヴァジェスキ」と呼ぶのですが、今回はカラヴァッジェスキの作品も沢山公開されました。「お肉を1に対して、お野菜は3食べましょう」と言われている感じで、メインに比べて付け合せが多い展示会になっています。
 
行くまではグズグズしていたものの、行ってみたら思いのほか良かったです。何と言ってもルネサンスの次に来るバロックという時代を開いた画家ですから、11点ながら、一度きちんと見ておいた方がいいと思います。あと2週間の会期ですが、多くの人に見てもらいたいと思います。