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「王の画家にして、画家の王」ルーベンス展

今日は上野の国立西洋美術館で10月16日から公開されている「ルーベンスバロックの誕生」を見に行ってきました。

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正直、公開直後に行けば良かったと感じました。勤労感謝の日でお休みだったせいか、混んでいました。落ち着いて見られないくらいに。人々はこんなにルーベンスが好きだったの!?と、ちょっと驚きました。

ルーベンス。「王の画家にして、画家の王。」とよく言われ、今回の展示会でもキャッチ・コピーに使われています。

私のルーベンスのイメージは、とにかく作品数が多い。成功した工房の為か、作品を量産しているせいか、ヨーロッパに旅すると、至る所でルーベンスの作品を見る気がします。作品のサイズがデカい。たまたまなのか、大きなサイズの絵を結構見たので、ルーベンスは大味の様な気がしています。画面いっぱいに繰り広げられる肉弾戦。男性も女性もボリュームいっぱいの肉体をこれでもかこれでもかと晒している感じです。女性のピンクで三段腹のヌードや、筋肉隆々の男性ヌードが続くとお腹いっぱいな気分になってしまいます。と、まあ、コッテリした肉料理が次々繰り出されるコース料理のイメージです。

今回の展覧会ではルーベンスが若い頃イタリアに滞在していたして時期があり、イタリアやルネッサンス、古代彫刻などに影響を受けた点を探っていくと言うものです。ルーベンス本人、工房作品、ルーベンスに帰属を含むルーベンス作品40点と、ルーベンスが影響を受けたと思われる古代彫刻やイタリアの画家作品、ルーベンスから影響を受けたであろう画家作品など計70点を公開。過去最大規模のルーベンス展だそうです。

展覧会の構成は以下の通り。
1 ルーベンスの世界
2 過去の伝統
3 英雄としての聖人たち 宗教画とバロック
4 神話の力 1 ヘラクレスと男性ヌード
5 神話の力 2 ヴィーナスと女性ヌード
6 絵筆の熱狂
7 寓意と寓意的説話

ルーベンスとイタリアの関連性を探っていくという展覧会、とてもいい着眼点で、楽しめました。

今回、大きな作品も何点か出ていて、「英雄としての聖人たち」のコーナーは大作ルームと化していました。

今回の展覧会では「聖アンデレの殉教」が、私は一番ぐっときました。描かれているのは大スペクタクルなのですが、テーマが殉教で、X十字に掛けられて天を仰いでいる聖アンデレの姿に神気迫るものを感じます。

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ヘラクレスが代表するムキムキの男性ヌードやヴィーナスが代表する豊満すぎる女性ヌードも、ミケランジェロの影響を考えれば、なるほど腑に落ちます。

「毛皮を着た若い女性像」はテイツィアーノがオリジナルで、そのルーベンス判です。テイツィアーノの方が、女性が愛想がないと言うか、ツンとしている感じです。ルーベンスになると?は赤らみ顔は丸みを帯びて、親しみやすく庶民的な風貌に。ルーベンスの描く女性は丸顔で親しみやすい様に感じます。女神や聖母ですらなんとなく庶民的な風貌。

自分の幼い娘を描いた「クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像」。これ、本当に可愛くて、ルーベンスの父としての愛を感じます。この作品は数年前にも来日しているので、お目にかかるのは2度目です。

「髭をはやした男の頭部」と「老人の頭部」は同じ人物が描かれているのですが、今にも話しかけられそうな表情を湛えています。地味ながら画家の力を感じさせます。

今回はルーベンスの素描も展示されていて、一言で言えば、「上手!」。ま、当たり前ですね。

宗教画が多いかと身構えていたのですが、それほどでも無く、70点、結構チョロっと見られました。肉料理のフルコースに行ったつもりでしたが、割とアッサリしていて、胃もたれしませんでした。

ルーベンスって、割合庶民的な作風なのかも。「画家の王」なんて言われているからどれだけ重量感があるのかと思って恐れていましたが、恐るるに足らずでした。「芸術の秋」を気取って、たまには美術展、という向きにも、行った感見た感があって良いのでは。

フランダースの犬」で、少年ネロが憧れ続けていた画家がルーベンスで、アントワープの聖堂にルーベンスの代表作があり、ネロと愛犬パトラッシュはその祭壇画の下で亡くなっていたという話なのですが、私も一度、その祭壇画を実際に見てみたいと思っています。今回見た「聖アンデレの殉教」から推察して、祭壇画はさぞかし素晴らしいものだろうと予測します。

今まで誤解していてごめんね、ルーベンス。そんな気持ちになった展覧会でした。

2019年1月20日まで開催されているので、是非多くの方に行ってもらいたい、楽しい展覧会です。