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「レオナルド・ダ・ヴィンチ 美の理想」展 レオナルド周辺を色々と

3月31日から渋谷の文化村にて開催中の「ダ・ヴィンチ 美の理想」展に行ってきました。
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今回、日本初公開のダ・ヴィンチ作品や弟子の作品も公開されるとのことで、楽しみに行ってきました。
 
まず、今回の目玉「ほつれ髪の女」、今回の展示会のポスターにも使われています。これは、本当に素晴らしい。ダ・ヴィンチ円熟期の作だそうです。タッチの軟らかさが、もう、ダ・ヴィンチです。サイズは20cm×20cmくらいの小さなサイズですが、その存在感といい輝きといい、ピカ一でしょう。ふわふわと風に舞うほつれ髪の表情といい、うつむいた女の控えめでやわらかな表情といい、もうなんともいいようのない良さです。ちょっと寂しそうな表情。
 
「衣紋の習作」が2点、「老人の頭部」とこれらもダ・ヴィンチです。タッチが本当に素晴らしく、ダ・ヴィンチの確かなデッサン力のあかしです。
 
それと、弟子との共作ですが、「少女の頭部」も素晴らしい出来です。
 
今回、ダ・ヴィンチと弟子やレオナルド派の作品も公開されています。愛弟子サライの油彩の下絵がダ・ヴィンチだったり、弟子と共作していたり、色々あります。私は今まで知らなかったのですが、「レオナルド派」というのもあるそうです。ダ・ヴィンチはミラノ時代に工房を主宰していて、お弟子さんを取っていたらしいのです。ダ・ヴィンチほどの画家なんですから、工房を構えていてもおかしくありません。でも、なぜか今まで思ってもみなかったのと、「レオナルド派」というのも初耳です。
 
ダ・ヴィンチとジャンピエトリーノの共作である「マグダラのマリア」(ルクレティア?) という油彩は、マグダラの表情が明るく、通常描かれるマグダラとはまったく違います。若くてはちきれそうな活き活きとした肢体、夢見るような何か問いかけたそうな表情。ジャンピエトリーノの作品がそのほかに3点続いて飾られていますが、ぜんぜん違うのです。これが一番出来がいいと思います。ダ・ヴィンチが手を入れているだけで、こうも違うのか、というのが一目瞭然です。
 
今までルーブル美術館とイギリスのナショナル・ギャラリーにある「岩窟の聖母」は2枚だと思っていたのですが、3枚目の「岩窟の聖母」が出展されています。個人蔵で日本初公開だそうです。ルーブル版とイギリス版の間に描かれたという説があるそうです。そして、これはダ・ヴィンチと弟子の作ということになっているようです。構図としてはルーブル版と近い感じです。ルーブル版はレオナルドの真筆とされています。イギリス版は弟子の作との説が一般的だということですので、その間にある第三の作品が、ダ・ヴィンチと弟子の共作というのはありそうな話です。ルーブル版と似て、右側に描かれた天使ウリエルの表情や人差し指で預言者ヨハネを指すポーズ、ヨハネとイエスの幼児ならではの肉体の柔らかさ、マリアの伏目がちな表情と、レオナルドらしさが残っています。ルーブル版では光輪は描かれていないものの、「苦情来ちゃったから、とりあえずマリアにだけ光輪を描いてみました」的にマリアにのみ光輪が描かれています。これを見てしまうと、ルーブル版とイギリス版も見てみたいですね。
 
今回、世界初公開という「アイルワースのモナリザ」も出展されています。ダ・ヴィンチによる未完成作との説があるのだとか。個人蔵の為、今回世界初公開らしいです。この「モナ・リザ」は、ルーブル美術館にある「モナ・リザ」より若い時期に描かれていて、知的で若々しく、活き活きとした女性像です。ルーブル版の方は、もっと人間が練れた感がある、落ち着いた女性像ですよね。若い「モナ・リザ」は結婚前の女性でしょうか、少女から脱したばかりとも見えるような若い女性特有の華やかさすらあります。暗い色のドレスを着て、暗い色の背景に収まっているにも関わらず。
 
色々な人の「モナ・リザ」が続きます。もう、これでもか、これでもか、というくらいに。それだけ「モナ・リザ」という作品が、ある種「永遠の女性像」の代表なのでしょう。見比べてみるのも一興です。
 
「もうひとつの『モナ・リザ』なのでは」という説もあるという「裸のモナ・リザ」というコーナーもありまして、色々な裸の「モナ・リザ」が展示されています。かなり肉付きがいい裸婦像です。
 
そして、この「裸のモナ・リザ」という構想の影響を受けたということで、フォンテンブロー派の画家の作品も展示されています。裸の女性二人が入浴しているような構図です。よく似た作品で、二人の裸の女性の上半身が描かれたもので、片方の女性がもう一人の女性の乳首をつまんでいる絵を見たことないでしょうか? あの作者と同じなのでは、と思います。描かれているモデルも同一人物なのでは。
 
レダと白鳥」という絵も有名ですが、ダ・ヴィンチ版は失われてしまっているということで、それを元に描いたと思われる色々な画家の「レダと白鳥」が並びます。すごくエロティックな題材ですよね。レオナルド周辺の画家の作とされる「レダと白鳥」は、以前、他の美術展で見たことがありますので、今回再会。ミケランジェロの「レダと白鳥」を元に別の画家が描いたという作品も展示されていますが、もっとエロティックな構図です。
 
さて、ダ・ヴィンチとその周辺の画家の作品以外に、同時代の画家の作品ということで、ラファエロとその工房の作品が2点出展されています。個人蔵の「ヒワの聖母」( ラファエロの「ヒワの聖母」はウフィッツィに所蔵 ) 、「カーネーションの聖母」です。さすがにラファエロの作品自体を持ってくるわけにもいかなかったのでしょう、工房の作品でもその時代の絵画の雰囲気は伝わります。
 
とにかく、ダ・ヴィンチ周りをあれこれ展示した感じです。色々あるものの、私はやはり「ほつれ髪の女」が一番ぐっときました。
 
ダ・ヴィンチは完成作がとにかく少ないので、他の国に貸し出すというのも難しいのかも知れませんね。とにかくいつも、日本で公開される際は、油彩一枚で大騒ぎですからね。結構、色々と美術展は行っているつもりですが、日本でダ・ヴィンチの油彩を間近で見たのは横浜美術館で「白貂を抱く貴婦人」を見たくらい。「受胎告知」はとても混んでいたので見に行かず、ウフィッツィでみたからよしとしました。日本で待っていても、きっとダ・ヴィンチは中々来てくれないのだろうなと思います。こういう形での色々展示であっても、そういう意味では嬉しい展示会でした。
 
「ほつれ髪の女」を見に行ってください。きっと、ぐっときますよ。