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「ジェームズ・アンソール 写実と幻想の系譜」展で色々見る

本日は、損保ジャパン東郷青児美術館で開催中の「ジェームズ・アンソール 写実と幻想の系譜」展へ行ってきました。
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この展示会はつい最近、公開しているのを知って行きました。しかも、なんと本日はファン感謝デーということで入場料無料の太っ腹なこと。20年ぶりくらいで東郷青児美術館へ行きました。
 
実はアンソールはやはり20年くらい前に個展が埼玉県立美術館だったかであって、その時かなりの数をまとめて見ています。その時初めてアンソールという画家を見たのですが、「仮面の画家」と言われる通り、仮面を付けた人々の絵が多く、なんとも衝撃的でした。絵で描かれている内容はかなりシニカルで、当時としては画期的だったのではないかと思われます。
 
さて、今回の展示会ではベルギーのアントワープ王立美術館所蔵のものを展示とのことです。アンソールの作品だけでなく、アンソールが影響を受けた画家の作品も展示されるという点が興味深く、見に行った次第です。
 
まず、当たり前と言えば当たり前なのですが、アンソールだって最初から仮面や骸骨の絵では無いわけです。時代背景や生まれ育った場所や環境、教育や世相というものがあるわけです。アンソールは父親がイギリス人、母親がベルギー人で、ベルギーで生まれ育った画家です。1860年生まれで、美術アカデミーに10代後半に行っていますで、美術アカデミーの教育は相変わらず旧態依然のものだったようです。その中でも、何を描いても批判しない講師との出会いがあり、若い頃からグループを結成して、新しい絵画を生み出そうとしています。
パリでは印象派が活躍し始めていたようです。
 
やはり、その影響があるのか、初期の作風は印象派風です。ただ、印象派は色合いが明るめですが、アンソールの場合は比較的暗い色を使っています。そして割とサイズが大きい作品が多いです。肖像画静物画も描いています。その時代の作品では、肖像画では「青いショールの老婦人」、静物画では「牡蠣」「花と果物」が私は好きです。肖像画のコーナーでは比較検討の対象というか、オランダ・フランドル地方の絵画の肖像画としてヨルダーンスの「女性の肖像」とヤコブ・アドリアーンス・バッカーの「老女」が並んでいますが、描かれた時代を感じます。「花と果物」は可愛らしい絵で、先にアンソールの行き着く作風を知っていると、ほのぼのとした気分になります。ただ、彼はかなり作風が変わっていくので、本人としては思い悩んでいたか実験段階だったかしていたのでしょうか。
 
風俗画といわれるものにあたると思うのですが、「近代生活のイメージ」のコーナーでは、「ブルジョワのサロン」が青ベースで好きです。本人は自信を持って展示会に出したのに酷評されたという「牡蠣を食べる女」は私としてはイマイチ。オランダ・フランドル地方の絵画では「牡蠣を食べる女」というモチーフは結構あるようなのですが、暗喩で色っぽいものであるらしいものの、アンソールのはただ牡蠣を食べているだけという感じで、出展当時批判されたのと逆の意味で私は面白くありません。「赤いパラソルを持つ女」はなんだかモネの「日傘を差す女」に影響を受けていそうです。
 
さてさて、一番のお楽しみの仮面や骸骨が出てくるグロテスクな絵ですが、ここがちょっと残念でした。出展数が少なく、「首吊り死体を奪い合う骸骨たち」「絵を描く骸骨」「陰謀」といったところでしょうか。もっとこのパートが見たいですよね。まとめて見ると結構きますよ、アンソール。グロテスクなのですが、色は明るくライトな仕上がりです。それでも、アンソールの画家としての歩みがよく判る展示にはなっていました。そして、思いの他、出展数が多く、満足感はありました。
 
アンソール以外の画家では、ルーベンスの油彩「ミネルヴァ」をはじめ、銅版画も展示されていました。その上、ルーベンスの作品のデッサンをアンソールがしたものも出ています。レンブラントドラクロワの作品をアンソールが模写したものもあります。影響を与えた作品として、ピーテル・ブリューゲル ( 子) の作品もいくつも出ています。本当はブリューゲル ( 父 ) の作品を展示したいところかもしれませんが、( 父 ) の作品は中々持ってこられないですからね。父の作品の模写を得意とした息子の作品で感じを味わってもらおうというところでしょうか。
 
日本、中国などの美術品が紹介されてシノワズリとして大流行をしていたこともあり、やはりアンソールも影響を受けています。日本の武者絵を模写したものまでありました。
 
さらに常設の目玉の作品が3枚並んで飾られているコーナーがあり、奇しくも後期印象派セザンヌゴッホゴーギャンの作品が見られます。
 
なんだかてんこ盛りの展示会ですが、色々見られて面白い展示会でした。個人的にはもっとアンソールのグロテスクな作風のものを見たかったです。
 
でも、お土産のポスト・カード、困りますよね。骸骨とか仮面の人々がヘラヘラ笑っていたりする絵なんですから。今回の目玉なんて、首を括っている人が画面の真ん中で左右の骸骨が死体を奪い合ってますからね。誰かに送るにしても送りづらいですよね。私は「花と果物」を購入しました。これなら物騒じゃありませんからね。因みにトートバッグのデザインは「アンソール」と書かれた棺おけを運んでいる人たちでした。