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ボストンのミレーを見れば

12月23日(火) 、「ボストン美術館 ミレー展 傑作の数々と画家の真実」を見に三菱一号館美術館へ行ってきました。
 

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この展示会はミレー生誕200年ということで、ボストン美術館所蔵のミレーとバルビゾン派の画家の作品、影響を受けた画家の作品を展示すると言うもののようです。64作品と三菱一号館美術館三菱地所からミレー1枚を含む5作品が展示され、計69作品が見られます。
 
構成は下記の通り。
 
Ⅰ 巨匠ミレー序論
Ⅱ フォンテーヌブローの森
Ⅲ バルビゾン村
Ⅳ 家庭の情景
Ⅴ ミレーの遺産
■ ミレー、日本とルドン
 
今回の目玉はボストン美術館の「3大ミレー」と言うことで、「種をまく人」「羊飼いの娘」「刈入れ人たちの休息」の3枚らしいのです。
 
「種をまく人」は今年、山梨県の美術館でもう1枚の方を見てきまして、どちらが先に描かれたバージョンなのか分からないのですが、展覧会に出すためにミレーが描いたものの、もう一枚同じ構図で描いたというもの。良く見ると、微妙に違いが有ります。山梨版の方が、環境が苛酷に見えるというか、農夫がまく種を狙った鳥が左手奥からワラワラと集まってくるのですが、その集まりっぷりがすごいように見えます。色も、山梨版は夕日なのか朝日なのかボウッとした黄色い光の中にいるのですが、ボストン版はもっと青く、やはり夕方なのか早朝なのか時間が分かりません。それでも、どたらの農夫もしっかりとした大きな足取りで、グワッとつかんだ種を今にもまこうとして腕を後ろに引いています。「種をまく人」という主題事体がとても意味深で、描かれているのは農作業中の農民の姿ですが、彼がまいている種とはいったい何だろうと考えさせる作品です。
 
あとの2枚は私的にはイマイチぐっときません。
 
今回出ている作品では、「馬鈴薯植え」が気に入りました。農民の夫婦が馬鈴薯を植えている絵なのですが、夫が耕し、妻が種芋をまいています。種芋は畝に置いて行くものかと思っていたのですが、この絵では結構な高さからボロッと落としています。当時の馬鈴薯のまき方なのか、フランスではそれが普通なのかは不明ですが、まるで餅つきのように夫婦で息が合っている感じが出ています。この絵はバックも明るい日差しの中、緑の風景、畑のすぐ後ろにはロバが繋がれ、赤ちゃんが入った籠が置かれています。若い農民夫婦の希望に満ちた労働風景に見え、とてもすがすがしい絵です。
 
「牛に水を飲ませる農婦」と「牛に水を飲ませる農婦、黄昏」は同じ構図ですが、「牛に水を飲ませる農婦」は黄昏時らしくバックは黄色い光にあふれています。その後描かれたサイズの大きな「牛に水を飲ませる農婦、黄昏」は色が青っぽく落ち着いていて、牛はズブズブと川の中に入っていく様子で躍動感があります。どちらが好きか、好みが分かれるところだと思います。この作品のように、同じ主題で10年後くらいに描かれているものがあり、見比べるのが楽しいです。
 
「ソバの収穫、夏」という作品は、今回初めてみましたが、そうか収穫しているのはソバなのか、と思うとなんだかしみじみした気分になってきます。確かにヨーロッパでもソバを作っている土地はありますが、なんだかソバというと日本のおそばをイメージしてしまうのは、私が日本人だからでしょう。この絵が描かれているのは、ガレットというソバ粉のクレープが有名な土地なのだそうです。村人総出で作業にいそしんでいるような絵で、今にも掛け声が聞こえてきそうです。
 
私は、ミレーの作品だと、屋外での作業風景のものが好きなのですが、結構室内での女性たちが日常的に行っていた仕事の様子も描かれています。母から娘に受け継がれる編み物や縫い物といった仕事の様子はほほえましく、サイズも小さいので、絵葉書を何枚か額に入れて飾ったら、ステキだろうなと思います。
 
ミレーの生涯も紹介されていて、ミレーは割りと恵まれていたのだなと思いました。子供時代から絵の道に進むあたりも恵まれているし、若い頃は売れなくてお金の苦労もあったようですが、バルビゾン村に引っ越してからは順風満帆の画家人生です。
 
ミレーの周辺の画家たちの作品も色々展示されていて、一部屋丸ごと森の絵だったり、農業の絵だったりします。風景画家として印象派前のモネも一枚展示されています。
 
ミレーは今年4つの展示会で見ましたが、他にどれくらいの作品があるのか興味深いところです。この「ボストン美術館 ミレー展」だけでは、ミレーの全容は描ききれていないので、ちょっと残念な展示会でした。展示数が少ないのも、残念な点です。どこかでまとめて見られるといいなと思います。
 
昔はバルビゾン派は日本でも人気だったと思うのですが、ここ20年くらい日本の美術展の何割かは印象派の展示会ばかりです。そろそろまた、ミレーやバルビゾン派の絵が見たい頃ではないでしょうか。私はもっとミレーが見たいと思っています。