現在、富士美術館では「江戸絵画の真髄」展を開催していまして、今回初公開の若冲・蕭白・応挙・呉春の作品が目玉となっています。そして、現在、江戸琳派の鈴木其一の「風神雷神図襖」が展示されているのです。私としては、まずこの襖をお目当てに遠路はるばる出かけました。
東京国立博物館の「栄西と建仁時展」で俵屋宗達の「風神雷神図屏風」を見、本館で尾形光琳の、出光美術館で酒井抱一のを見たら、期を同じくして展示されている鈴木其一の襖も見たくなってしまったのです。これは以前、東京国立博物館で開催された「大琳派展」で4つの「風神雷神図」が一同に介する形で展示されたことがあり、その時見ているのですが、先の3つを見たらやっぱり4つ目もきちんと見て決着をつけたい気分でした。
はるばる見に行った「風神雷神図襖」は、今回見て、あらっ思いのほか地味だわ~と思いました。まず襖に描かれているので、サイズが小さいように見えます。バックがキンキンキラキラの3つに対して、白というかグレーっぽい中に風神と雷神が描かれています。ベースが白っぽいので風神雷神に乗っている色も抑え目でくぐもった感じの色です。酒井抱一の鮮やかな色とは大違いです。全体的に渋いです。使っている絵の具も時代によって変わるのでしょうが、地味な発色です。ただ、風神雷神の体を描いた線が、尾形光琳や酒井抱一と違って、結構思い切った速度で描いたのか、足の指の表現に足の質感としての弾力を感じます。そして、なんといってもたらしこみで描き出した雲が良いです。黒い雲が勢いよく風神雷神の周りに集まってきています。雲に動きと勢いが出ています。尾形光琳の雲は厚くもくもくして、風神雷神の足下に集まっていますが、鈴木其一の雲は両神の体の周りに集まってきていて、その表現が美しいです。
同じものを描いても、人が違えば出来が変わり、時代が変われば作風も好みも変わるという良い例だと思います。それにしても、なんとも魅力的な画材です。私は、俵屋宗達の空間表現が一番いいかなと思いました。同じものを描いていても、どの位置に配するかでぜんぜん違ってきます。