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「生誕200年 ミレー展」@山梨県立美術館にてミレーの色々を見る

今年はミレーの生誕200年記念。あちこちでミレーの作品が見られそうです。
 
国内でミレーと言えば「種をまく人」を所蔵している山梨県立美術館かなと思っていたら、さすがにやってくれてます。甲府にある山梨県立美術館で8月31日まで「生誕200年 ミレー展  愛するものたちへのまなざし」を開催中なので、9日(土)に行ってきました。
 
構成は以下の通りです。
 
第1章 : プロローグ 形成期
第2章 : 自画像・肖像画
第3章 : 家庭・生活
第4章 : 大地・自然
 
第1章では、ミレーがいかにして私たちがイメージするミレーの絵を描く画家になっていったかを年代順に並べた作品で見られます。当たり前ですが、ミレーもミレーになる過程があり、そろそろな画家の影響を受けて、どんどん画風が変わっていくのですが、その過程が面白く見られます。
 
第2章では自画像と肖像画が紹介されていますが、今までミレーの自画像や肖像画を見たことが無いので、新鮮でした。ミレーは「農民画家」と呼ばれるようになる前は、肖像画を沢山描いていたようです。中には注文で描いた絵が、あまりにも本人に似ていない為、安く値切られたという作品もあります。「シェルブール市長 ポール・オノレ・ジャヴァン」という作品なのですが、本人がすでに亡くなっており、ミレーは理想の市長を描いたらしいのですが、まったく似ていなかったとか。作品としては悪くないですけど、注文主の主旨に合わなかったのでしょうね。
 
このコーナーでは自画像2点と最初の妻の肖像画3点があります。その中で、「部屋着姿のポーリーヌ・オノ」は「ノルマンディーのモナ・リザ」との異名があるそうです。ノルマンデーだったか別の知名だったか、忘れてしまいましたが、「○○のモナ・リザ」と呼ばれるなんて光栄ですよね。白い肌はちよっと青白く、病弱な人だったのだろうと思います。妻と言ってもとても若くて、未だ少女のようです。他の2点は普段のポーリーヌという感じですが、白い部屋着に赤っぽい布を頭に被っているので、肖像画用にちょっとおしゃれした感じです。何かを語りたそうな口の感じ、輝く瞳、若い病気の妻を見つめるミレーの視線が感じられる1枚です。
 
第3章は、ミレーらしさ満載です。働く農家の女たちを描いた作品は、とてもミレーらしい作風です。「子供たちに食事をあたえる女(ついばみ) 」は、まるで鳥の親が子供の鳥に餌を与えている姿にそっくりです。建物の入り口に並んで座った子供に反対側に座った母親がスプーンで食べ物を与えています。この建物の後ろ側には畑があり父親が耕し、鶏が駆け回る様子が描かれています。農家の家族の日常生活を描いたものなのでしょうが、とても愛情を感じさせる作品です。並んで座った子供も可愛い。
 
まるで家族ポートレートのような「農民の家族」。「桶の水を空ける女」「編み物のてほどき」など、農村生活の日常を描いた作品がやはり良いです。ミレーは油彩で描いているのにパステルかしらと思うような柔らかいタッチが好きで、農家の働く女性たちを描いた画題とタッチがすごくあっていると思っています。
 
第4章は「種をまく人む3連チャンです。ミレーはこの作品を5枚描いているんだそうです。ここで真っ先に展示されているのは1846年に描かれた、1枚目だそうで、作品としては27.3×22.0と小さいです。タッチもその後に描かれたものとだいぶ違い、暗い画面の中で種を蒔いています。その次はかなり大きくなって、種を蒔いている人のバックに草を食む牛が描かれています。その後に描かれて、1枚は山梨に、もう1枚はボストンにある「種をまく人」に比べるとタッチがもっと写実的とでも言いましょうか。画面はやはり暗いものの、蒔いている人はなんとなく優美です。3枚目に展示されているのはリトグラフです。こういう作品もあるのだなと、初めて見たので思いました。
 
この章では、羊飼いの少女や羊飼いと羊たち、鵞鳥番の少女、大地を耕す農夫など、自然、自然と共に生きる人たちが描かれています。同じテーマで描かれているものもほぼ一緒の作品で時間が違うものが2枚並んでいます。一つは夕暮れ、もう一つはもっと暗い画面ですが、こういうのも面白いです。彼の作品は薄明かりが射しているような暗い画面の中に描かれているものが多いように感じます。
 
「落穂拾い、夏」は、有名な「落穂拾い」とよく似た作品で、もっと落穂を拾う女性を大きくそこだけ切り取って描いた様な作品です。画面的には、黄色い藁の山がバックに描かれ、明るいものです。
 
この最後のほうでとても気に入った作品がありました。パステルで描かれた「ヴォージュ山中の牧場風景」という作品なのですが、緑の牧場が一面に広がり、牛がのんびりと草を食んでいます。広々として、のどかで空気が美味しそうな絵で気に入りました。
 
「ミレー展」のチケットで常設展のミレー作品5点とバルビゾン派の作品が見られるので、常設展の方へ回りました。以前に、「種をまく人」を見に来たことがあるので、何十年ぶりの訪問です。
 
入ってすぐの所に、「種をまく人」が展示されています。私たちが通常「種をまく人」と聞いてイメージするのは、ここに展示されている作品か、そっくりの双子のようなボストンにある作品だと思います。久々に見た「種をまく人」とは、こういう絵だったか、と思いました。企画展で見た作品に比べて、種を蒔いている人の動作が大きい。さぁ蒔きましょうと大きく広げた右手、足取りもしっかりとして大またです。種を狙った鳥の姿もありますが、そんなことお構いなし、自信を持って種を蒔いている農夫の姿です。画面は天気が悪いのか、どんよりとして暗いのです。環境が厳しいのかもしれません。農夫の表情は見えませんが、前を向いて確かな足取りで作業を行っている姿は分かります。日本人はこういうの好きかもしれませんね。逆境に負けないで邁進する姿にぐっとくるのかも。
 
ここに展示されている「ダフニスとクロエ」の大きいバージョンは上野の国立西洋美術館の常設展に確かあったはずです。山梨のはダフニスとクロエが釣りをしています。年に4回作品を架け替えるらしいのですが、現在は「種をまく人」「眠れるお針子」「ダフニスとクロエ」「無原罪の聖母」「古い塀」が見られます。あとは、バルビゾン派の作品が2部屋ぎっしり。常設展はこれ以外のパートもあって、そちらも回ったらかなりお腹一杯になりそうです。私は、今回はミレーを見ようという目的だったので、すっかり目的を果たしました。
 
展示室から階段でホールに降りた所にダンボールで作られたミレーの家があり、中に入れます。中には妻の肖像画が飾られていたり、今まで作業中だったらしい画家のバレットが置いてあったりと楽しく飾りつけがされています。家の前にはミレーが立ち、庭では「鶏に餌にやる女」が鶏に餌をやっています。
 
企画店のお土産コーナーでポストカードを購入。クリアファイルやミレーの絵の描かれた箱に入ったお菓子以外にも、色々関連グッズがあり、楽しいです。更に、1階にはお土産コーナーがあり、「種をまく人」Tシャツやミレーの絵の傘、トートバッグなどから、おしゃれなストールなどまで色々置いていました。ここの布製品、なかなかおしゃれなものがありました。
 
埼玉から行くので、山梨県甲府はちょっと遠いなぁ~と思っていましたが、行ったかいがありました。ミレーを堪能した1日でした。
 


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