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甘い生活を目指しています。

見所満載 「禅 心のかたち」展

今日は上野の東京国立博物館で18日から始まった「禅 心をかたちに」展へ行って来ました。常設展の酒井抱一の「夏秋草図屏風」が10月30日まで展示されているので、それも見たくて。博物館に着いたのが17:30で、本日は20:00までで、果たして両方見られるのか、ドキドキしながらまず「禅展」へ。

平成館の2階に上がると、いつものように左右に第一会場、第二会場です。

今回の構成は次の通り。

第1章 禅宗の成立
第2章 臨済禅の導入と展開
第3章 戦国武将と近世の高僧
第4章 禅の仏たち
第5章 禅文化の広がり
 
第1章と第2章は第一会場、それ以外は第二会場でした。第2章は禅宗の14宗派とそこから派生した黄檗宗の主要な寺について詳しく展示されていまして、誰が開山したか、その僧侶の肖像画や所蔵品、書などが公開。よくぞここので持っていたなと思うような品が並びます。京都五山鎌倉五山、静岡、富山とかに拠点のお寺があるようです。
 
更に、黄檗宗萬福寺の紹介。萬福寺隠元豆を日本にもたらした隠元和尚で有名ですが、全てが中国風の生活を行っていたというお寺では、まず隠元和尚の肖像画自体が他のお寺と違ったタッチで驚きます。他は全身像で、皆同じポーズです。ひとつ、右手で頭を掻いているような肖像画がありましたが、その高僧は贅沢は好まず、そういうかしこまったことが苦手だったのだとか。隠元和尚の肖像画は迫力の上半身正面です。衣の色も鮮やかで、何だか仏教というよりはキリスト教の司教画のような雰囲気です。隠元和尚が使っていたという洗面台は、組み立ててある脚が綺麗に彫刻されていまして、素晴らしいのです。椅子も座り心地がよさそうですし、大きな赤い琥珀の珠で出来た数珠の美しさ、びっくりの大きさ、さらに周りの方たちが贈ったとされるその数珠を入れるドーナツ型の入れ物の細工など、どれを取っても他の14のお寺と違います。もっとも、他の臨済宗14派の始まりに比べると、黄檗宗はずっと後から出てきたという点も関係しているかもしれません。
 
このコーナーでは、大徳寺にも繋がる一休宗純も紹介されていて、所用の品が紹介されています。その中で御小松天皇下賜と伝えられる青磁鉢もあり、このお坊さんがやんごとなきお家柄なのを思い出させます。
 
第一会場は、見た目はかなり地味な展覧会です。しかし、価値のある展示物たちではありまして、重要文化財がわんさか出ています。この会場では、ほとんどが書、高僧の肖像画「頂画(ちんが)」、その方の所用品、本(手書きらしい)とかです。禅宗とは何であるか、ということを知る手助けになるコーナーです。と、言っても、私自身良く分からないのですが。
 
第二会場の方は、もう単純に楽しめます。こちらのコーナーでは、禅宗と共に広がった喫茶の風習を紹介するために、茶道具が紹介されていて、有名なお道具が色々見られます。国宝の2つの天目茶碗は素晴らしいです。特に豹の様なガラの方が気に入りました。有楽斎の所持していた茶碗で「藤袴」筒茶碗というのがありまして、通常の茶の湯で使うようなお茶碗ではなく、すし屋の湯のみのような筒型をしているのも面白い。
 
茶は、建仁寺の開祖、栄西禅師が中国からその風習を持ち込んだとされていますが、禅寺とお茶は関係が深く、その後侘び茶の流れは堺の豪商、武野紹鴎(たけのじょうおう)、さらに弟子の千利休の登場と続いていくわけですが、その時代でも茶人は禅寺と縁が深かったのも興味深い点です。
 
そして、戦国時代に至っては、各武将のブレーンとして、禅僧たちが重用されていたのも注目に値する点です。戦国物の時代劇を見る都度、僧侶なのに軍師なのか ? とか、交渉役 ? と思うことが多く、いったいどうしてだろうと思っていたのですが、確かに彼らは学問も積んでいる当時の学者でもあるわけで、現代で言うところのコンサルタント的な役割としてはぴったりだったのでしょう。家康がイチャモンをつけた鐘の件にも、家康のブレーンであった僧侶が一枚かんでいたようです。
 
白隠さんと僊?看さんのゆる~い禅画もあり、このあたりは一般大衆の中で生き、布教活動をした二人の禅僧の姿が彷彿とされて、見ていて楽しいコーナーです。以前に、「白隠展」で大量に白隠さんは見ていたり、僊?看さんも他で見たりしているので、初めての作品は無いように感じましたが、とにかくこのお二方の絵は見ていて温かく楽しいのがいいです。ついついクスクス笑ってしまいます。でも、奥が深いのですが。
 
第4章では仏像が紹介されています。この中では「十大弟子立像」が、様々な姿勢をとっていて見ていて楽しいです。顔もそれぞれで、若いのもあれば、額にシワを寄せているのも。「十牛図巻」というのがありまして、これはしみじみしますね。色々な人が描いていますが、これは牛と人の関係を絵にすることで、自分と本当の自分の関係を表しているのだとか。禅の考え方としては基本的な題目のものらしいです。牛がいないことに気づき、探しに出かけ、牛の気配を感じ、居ることを認め、捕まえようと追いかけ、なんとか手なづけ、ついには牛と人が一体となり、牛を引いて家に戻り、安心したので牛のことは忘れ、自分も牛も無になり、それでも自然は動いていて、そのことに気づいたので巷に出て人と交わる、というのはすごく興味深いです。
 
最後のコーナーは私としては一番先に見たかったです。雪舟の「秋冬山水図」が突然出てきます。さらに障壁画がずらり。相阿弥の「大仙院方丈障壁画のうち瀟湘八景」は雄大な感じでいいですね。狩野元信の「大仙院方丈障壁画のうち四季花鳥図」、長谷川等伯の「天授庵方丈障壁画のうち祖師図」、等伯もこういうの描くんだなと、ちょっとほのぼの。猫が可愛いし、その猫を下げている高僧のどうだっていう表情がなんだかおかしい。海北友松の「建仁時本坊大方丈障壁画のうち竹林七賢人」、こんなにでかい七賢人、のびのびとしていてよろしい。狩野探幽の「南禅寺本坊小方丈障壁画のうち群虎図」、黄色い虎がこの時代のものにしてはよく描けている。伊藤若冲の「旧海宝寺障壁画のうち群鶏図」、やっぱり鶏です。池大雅の「萬福寺東方丈障壁画のうち五百羅漢図」、ゆるいのでほのぼの。障壁画なんだけど肩がこらなくて良いかも。これだけ沢山の障壁画が展示されていて、若冲の以外は全て重要文化財です。
 
「瓢鯰図」を期待して行ったのですが、会期後半に登場です。雪舟の「慧可断臂図」も後半です。これは、以前に見ているのですが、「瓢鯰図」は見たかったのです。
 
牧谿の作と伝わる「龍虎図」があって、とても驚きました。大徳寺にあるもので、等伯若冲も影響されたという作品で、迫力があります。
 
心配していた通り、時間がなくなってしまい、もう最後の方はどんどこ見て進みました。入り口で、係りの方に所要時間と込み具合を確認して入りました。係りの方が言うには、「禅展だけなら1時間、ゆっくり見ても2時間もあれば大丈夫です。この時間だと混雑していません」とのことでした。混雑していなかったのですぐに入れたし、よく見られて良かったです。後半になってくるとどうしても混雑するので、始まってすぐがねらい目です。でも、2時間では回りきるのは難しいです。もっと、早い時間に出かければよかったと後悔。これから行かれる方は、余裕を持って出かけられることをお勧めします。私は、お土産コーナーも駆け足でした。
 
第一会場では、地味な展示会だな~、こなくても良かったかも、と思ったものの、第二展示場では意見が変わりました。時間が無い方で、教義などには関心が無い方は、第二会場から見る事をお勧めします。こちらの方が万人受けすると思うし、単純に楽しいので。そして、素晴らしいラインナップの障壁画の数々やお茶道具は見ごたえがあります。じっくり見たいものです。禅宗に興味がある方や、この機会に学びたい方は第一会場から順に見たほうが分かりやすいと思います。
 
一見地味に感じられる展示会ですが、かなり充実していて見ごたえがあります。お勧めです。

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