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甘い生活を目指しています。

読書記録2016 2 (4月~6月)

【2016読書記録 4月~6月】

悪霊島(上) (角川文庫)悪霊島(上) (角川文庫)感想
事件は起きているものの、何と無くまだ起きていない様に感じられるゆっくりペース。「鵺の鳴く夜は恐ろしい」と言う、キャッチコピーが素晴らしいが、まだ事件の材料集めの様な前半。金田一耕助は今回、最初から出ずっぱり。後半、どう展開されて行くのか楽しみ。
読了日:04月10日 著者:横溝 正史


若冲若冲感想
短編連作集。全体で若冲の人生後半が描かれる。短編で、妹の視点の部分もあり、蛋白な出来。小説なので仕方ないが、あまり若冲を描いているように感じられない。設定にも無理があり、素人が突然数年で贋作が描ける程の絵師には成れない。作者の若冲作品の解釈から書かれているので、好き嫌いが別れそう。最終章は物語を回収したな、という感じだ。絵師はどうしていても描きたくて仕方の無い生き物だと思うのだが、絵を描く喜びが描かれていないのが残念だ。
読了日:04月10日 著者:澤田 瞳子


悪霊島(下) (角川文庫)悪霊島(下) (角川文庫)感想
期待を裏切らないドロドロっぷり!閉鎖的な島での殺人事件は、やはりこうでないと!祭りの最中の殺人事件、見つかる遺体は全て常軌を逸している。しかし、島での殺人事件の前の2件より遡る事件は、更に驚きの状態に。金田一耕助の活躍がひかる。相棒の磯川警部の哀しい過去も明るみに。とても面白く、映像版も見たくなる。
読了日:04月25日 著者:横溝 正史


女のいない男たち女のいない男たち感想
春樹節炸裂の短編集。さらさらと読めるが、その底には何とも言えない澱の様な物が溜まっている様で、心の何処かに引っかかる。不気味な展開の「木野」が好き。ここから長編に成ったりするのだろうか。
読了日:05月01日 著者:村上 春樹


その女アレックス (文春文庫)その女アレックス (文春文庫)感想
これは凄い!猛烈に面白い。最初は若い女性の誘拐事件の話としてスタートするのだが、それがそのうち全く違う相貌を見せてくる。一部・二部はアレックスと彼女を追う刑事カミーユの視点が交互に語られるので、一つの出来事をあちらとこちらで見ている感じだ。そして、第三部はこれまた全く違う別の事件物の顔をしながら、実は過去の因縁を暴く事で事件の真相を追求して行く。ジェットコースターに乗った様なスピード感溢れる展開も良い。ミステリ好きにはお勧めの作品。
読了日:05月09日 著者:ピエール ルメートル


フランダースの帽子フランダースの帽子感想
日常なのに僅かな不思議の世界に迷い込んでしまったような作風の短編集。よく似た姉妹兄弟や性別を超越した人たち。明るい陽射し、深い森の影、無関心の大人たち、密かな孤独と言った、ヴァロットンのボールを夏の日に追いかける少女の絵をイメージしてしまった。「ノヴァスコシアの雲」と「伊皿子の犬とパンと種」が好き。
読了日:05月12日 著者:長野 まゆみ


宝島 (光文社古典新訳文庫)宝島 (光文社古典新訳文庫)感想
冒険ものとしてはあまりにも有名な作品ながら、初めて読んだ。少年ジムが大活躍。割とサクサクと宝島に着き、どんどん話が進む。あっという間にお宝を手に。裏切りや心理戦にドキドキしたり、島の探索や一人での冒険や宝の地図にワクワクしたり。大人でも十分楽しめる。
読了日:05月25日 著者:スティーヴンスン


セプテンバー・ラプソディ (ハヤカワ・ミステリ文庫)セプテンバー・ラプソディ (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
久しぶりのヴィクは、相変わらず大疾走。とにかくこのシリーズは読むとこちらまで元気が出る。今回は核とコンピュータの巨大産業の話。ロティの幼馴染の女性化学者マルティナを中心に、そこから派生した出来事と悲劇が今日のアメリカの巨大コンピュータ会社や政府機関を揺るがす事件に発展。最初は人探しの筈だったのに、気付くととんでもない事に対峙する事になってしまったヴィクの奮闘が素晴らしい。科学は人類の生活を楽にする素晴らしい面もあるが、人類を脅かす暗黒面も持っていて、それを使う人間の素質が試される分野だと考えさせられる。
読了日:06月12日 著者:サラ パレツキー


ねじの回転 (光文社古典新訳文庫)ねじの回転 (光文社古典新訳文庫)感想
予備知識なく読んだのだが、これはスリラーか。幽霊ものなのか?本当に悪意を持った幽霊だか悪霊だかが出ているのか、神経衰弱ぎみの家庭教師の妄想なのか、どちらなのかが分からないうちにブツッと話が終わる。その盛り上げ方たるや、言葉だけなのに読者を煽る。読んでいてゾクゾクしてくる。短い作品ながら、その時代の閉鎖的な社会通念や、道徳に縛られている人間性セクシャリティーの問題を伺わせる。人間的美徳というねじをもう一回転食い込ませることでしか、不自然な存在や事態に対抗する術がないギリギリの精神状態が伝わってくる。
読了日:06月20日 著者:ヘンリー ジェイムズ


鹿の王 (上) ‐‐生き残った者‐‐鹿の王 (上) ‐‐生き残った者‐‐感想
昨年の本屋大賞受賞作だったので読んでみた。まだ前半。その世界観に慣れるまでに時間がかかって、初めのうちは読みづらく、中々進まなかった。黒い獣に噛まれながらも岩塩坑から逃げた男と、その獣によってもたらされた病を治癒する方法を追う医師と2人の主人公の物語が交互に語られる。後半で、2つの物語が一つになるのだろう。ここで描かれる医術は、現代と比べると随分昔の医術レベルだが、科学的にアプローチする医術と、呪術の延長線上にある医術が存在し、興味深い。部族のせめぎ合いの中で、懸命に生きる民衆の姿が切ない。
読了日:06月25日 著者:上橋 菜穂子


悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)感想
「その女アレックス」の前に来る話。「アレックス」を先に読んでいたのでイレーヌの末路が分かっていて、一体どこでそうなってしまうのかドキドキ。お見立て連続殺人の話だが、お国柄か、横溝作品の様な情緒はなく、ひたすら残虐。容疑者の取り調べ当たりから加速度が付いて、ラストまで疾走した感がある。テンポが速くて面白い。途中で、あらゆるもなのを背負い投げにしたような構成に、やられた。カミーユの班の刑事たちの描写もよく出来ていて、警察小説というか刑事物となっている。シリーズ化されるのだろうか?
読了日:06月27日 著者:ピエール・ルメートル