ama-ama Life

甘い生活を目指しています。

読書記録2016 3 (7月~9月)

【2016年読書記録 7月~9月】


眩感想
葛飾北斎の娘で、「江戸のレンブラント」と呼ばれる女絵師、應為(お栄)の半生が描かれる。父であり師匠である北斎の工房で働き、仕事でも衣食住でも父を助けて更に自身も絵師として腕を磨く日々。絵の出来が悪いと嘆く弟子に、北斎が言う「やっちまったもんをつべこべ悔いる暇があったら、次の仕事にとっとと掛かりやがれ」という台詞に胸がすく。プロとしての自信と意地を感じる。描いていれば幸せを感じていられるお栄の、突き抜けたお江戸職業婦人ライフは恋も家族うちの煩わしさも介護もあって、現代と同じ様だ。面白かった。
読了日:07月07日 著者:朝井 まかて


ポプラの秋 (新潮文庫)ポプラの秋 (新潮文庫)感想
優しいお話。何と言ってもポプラ荘のおばあさんの存在が傑出している。父の突然の死に、心が萎縮してしまった少女と、おばあさんを始め、周りの大人たちもまた、不器用で優しい人たちで、読んでいてホッとする。おばあさんのお葬式のシーンはいいなぁ。私も、おばあさんの様な年寄りになりたいと思った。
読了日:07月11日 著者:湯本 香樹実


デイジー・ミラー (新潮文庫)デイジー・ミラー (新潮文庫)感想
ヨーロッパとアメリカを新旧の文化として対比すると共に、母親や叔母たちの旧世代とデイジーの新世代の対比にもなっていると思う。大した出来事が起こらないが、当時としては十分にスキャンダラスな行いを平然と行うデイジーに、周りは冷たい。それは新たな価値観への恐れでもある。始終たんたんとしている話で、盛り上がりに欠け、私的にはイマイチ。
読了日:07月20日 著者:ヘンリー・ジェイムズ


死のドレスを花婿に (文春文庫)死のドレスを花婿に (文春文庫)感想
精神的に危うい女性が殺人事件を繰り返しながらの逃亡劇かと思ったら、さにあらず。人間って、そんなに自分の事に自信がないのかと思った。私たちが当然だと思っている日常生活なんて、悪意ある者の手にかかれば、あっという間に失ってしまうものだったのか。それにしても、この犯人の執拗さと周到さには恐れいる。この作者の作品に出てくる犯人は、皆、粘着質で職人気質だ。後半、ヒロインは逃げおおせるのかハラハラ。しかし、ラストは割とあっけないと感じた。立て続けに同作者を読んだが、この作品も期待を裏切らない面白さだ。
読了日:08月03日 著者:ピエール ルメートル


花競べ  向嶋なずな屋繁盛記 (講談社文庫)花競べ 向嶋なずな屋繁盛記 (講談社文庫)感想
江戸を舞台にした時代小説。主人公は植木屋ではなく、苗を育てる職人で、江戸時代のガーデニング事情も分かる職業ものにもなっている。新次とおりん夫婦や周りの登場人物の描写が活き活きとしていて素晴らしく、やり取りが楽しい。預けられた子供てある雀の愛らしさ、聡明さ。各話の展開が上手で、中には現代にも通じる様なエピソードもあり、作者の上手さに唸る。これがデビュー作とは。とにかく、読んで楽しく、しんみりしたり考えさせたり、何より植物を通して人間の事も描いている愛おしい作品。続編が無いのが、勿体無い。
読了日:08月16日 著者:朝井 まかて


火花火花感想
若者でないと出来ないバカで夢中な修行の話。自分が敬愛し、信じる人を乗り越えた所にあったものは、徳永が思っていたほどの事だったのか。神谷のキャラクターはいい。ポリシーがあり、ひたむきながら、どうしようもない程世間とズレている男。スパークの最後の漫才は面白かった。冒頭のあほんだらの漫才と繋がる。言いたい事、書きたい事が沢山ある人が小説の体裁で書いた作文を読んだ様な気がする。
読了日:09月04日 著者:又吉 直樹


すかたん (講談社文庫)すかたん (講談社文庫)感想
大阪弁のやり取りがテンポが良くて、この作品によくあっている。取り上げられている事件も、今の時代とリンクする様な内容で、いかに誠実に仕事と向き合うか、目先の利だけでなく、大きな視点に立って働かなければならないかなどを伝えてくる。時代もののお仕事小説。気が強いしっかり者の知里、「すかたん」ながら青物に対する愛にあふれる若旦那、筋金入りの大番頭、気位の高いお家さん、など、登場人物の人となりも良くわかり、物語が疾走して行く。江戸時代の商家は厳しいながらも優しさ企業体だったのだと、楽しく読了。面白かった。
読了日:09月28日 著者:朝井 まかて