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トム・フォード第一回監督作品「シングルマン」

イメージ 1ファッション・デザイナーのトム・フォード第一回監督作品「シングルマン」をやっと見てきました。
 
大学教授のジョージは16年連れ添った最愛のパートナーを突然の事故で失う。愛する人を失った後の人生に意義を見出せないジョージは自殺を試みようとするが・・・。愛する人の喪失と、残された者の再生のある一日の物語。
 
映像がとても美しくて、監督はさすがファッション・デザイナーだけはあるな、とまず思わされた。とにかく美しい。主人公のジョージの生活は静謐そのもの。生活感がないガラスの家に一人で住んでいる。亡くなっイメージ 2
たパートナーは建築家のジム。世間でゲイに対する偏見があった時代、なにも隠さずに二人の関係を肯定しているようなガラスの家。ジョージは生活から身だしなみまで、とにかく無駄がなくシンプルでピシッとしていて美しい。ゲイだからか、彼自身の性格か。ここまで見事に美しいのは監督のトム・フォード自身の美的センスとゲイならではのセンスの良さか。
 
いい映画。でも一番の驚きは、主演のコリン・ファースがこんなに美しい男だったか、ということ。この映画を撮影した頃、彼は50歳近かったと思うのだが、無駄な贅肉などない体をしていて、それを品のいいスーツに包んでいる。長身なのか、長い手足が美しい。スタイリッシュな映像に合わせて、体を絞り込んで臨んだのかもしれない。イギリスの俳優は脱ぎっぷりがいい、とよく言われるが、しっかり脱いでます。でも美しい体で、いやらしさがない。
 
ジュリアン・ムーア演じるチャーリーは元恋人で今は親友。この2人の関係も新鮮。かつて恋人だった2人だけに、お互いの痛みを受け止め慰めあえる関係というのがすごくいい。もっともチャーリーはジョージに未練がありそうだが。
 
ジョージの回想で、なくなる前日のジョージとジムがソファーで本を読んでいるシーンがあって、すごく好きなシーンだ。彼らにとっては日常的な平日の夜のすごし方なのだろう。ひとつのソファーに向かい合って横たわり、それぞれ読書にいそしむ。レコードでお気に入りの曲をかけながら。足元には愛犬。
ジムが言うのだ。「君のそばに横たわっていられれば幸せ」。もう、これはものすごい愛のあるセリフですよ。そのくらい彼らは愛し合っていたのだ。だから、その最愛の人を失ってしまったジョージの絶望感はひとしお。
 
でも、人は絶望のどん底でも、新たな光を見出せるのだ。また、生きてみよう、と思える生き物なのだ。
「愛する者を失った人生に、意味があるのか」というキャッチ・コピーは深く考えさせられる。しかし、愛する者を失ったとしても、人生に意味はある、と答えたい。人は新しい愛を見つける生き物だから。
 
この作品はてっきりトム・フォードのオリジナルかと思っていたら、原作はクリストファー・イシャーウッドというゲイの作家の同名の小説だそうだ。イシャーウッドの若い恋人の写真を見たが、心なしかこの映画でジョージの教え子ポッター役のニコラス・ホルトに似ているように思った。
 
美しい映画だった。それのみならず、今を生きるとは・・・、人を愛するとは、幸せな人生とは、という人生の根源的な幸福について考えさせてくれる映画だった。お勧めします。