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「地理学者」に会いに

フェルメールの「地理学者」に会いに、Bunkamuraへ行って来ました。イメージ 1
 
フェルメール『地理学者』とオランダ・フランドル絵画展」と銘打って、ドイツ、フランクフルトのシュテーデル美術館からの出展です。「大航海時代」をキーワードにした展示会とのこと。
 
作品は多岐に渡り、ルーベンスレンブラント、ヤン・ブリューゲル(父)(子)、フランス・ハルス、ヤン・ステーンなどなどなど・・・、もちろん静物画や風景画も盛り沢山。とにかく、出展されている画家の数が多い。
 
さて、お目当ての「地理学者」。その展示室には、「地理学者」の世界を彷彿とさせる地図・地球儀・窓・コンパスなどが展示されています。
 
そして、「地理学者」。フェルメールの作品のサイズはさほど大きくないようです。もっとも、全部見たわけではないので断言はできないのですが、少なくとも私が見た10点ばかりは、そんなに大きい絵ではありませんでした。
 
そして、やっぱりシンとした静けさが漂っていました。「地理学者」はどこか遠い目をして、宙を見つめています。空想にふけっているのか、新しいアイディアが沸いたのか、静けさの中で神経がピンとはられているような感じを受けます。
彼が仕事中であるのは、その部屋が多分彼の仕事部屋だろうと思われるものでいっぱいだから。地図と地球儀が置かれ、仕事道具の定規とコンパスが描かれています。コンパスは当時の最新の道具であったそうで、ちょっと自慢げに、彼はコンパスを手にしています。明るい窓から日差しが降り注ぎ、室内も明るく、彼は若く裕福な市民階級でしょうか。この絵からは、明るい未来が予想されます。
この絵が描かれたのは1669年、オランダはまさに大航海時代だったのでしょう。富がもたらされ、裕福な市民階級が台頭してきた頃でしょうか。
彼が身にまとっている着衣は当時裕福な市民階級の間で大流行した「ヤポンス・ロック(日本の着衣)」と呼ばれる物で、日本との交易でオランダにもたらされた日本の着物やその模造品だとか。しかも、当時の裕福な階層のステータス・シンボルだったそうです。こんなところで日本との交易の影響が見られるとは。世界は繋がっているのですね。
テーブルの手前に書かれたゴブラン織りの布や背後の椅子のゴブラン織りは高価なものだったとか。フェルメールの故郷のデルフト焼きの青い絵付けのイタルが、壁の幅木の代わりにはめ込まれています。
 
私がこの絵にたどり着いた時は、まだそんなに混んでいなかったので、「地理学者」をしばし独り占め。
思わず、「ようこそ、東京へ。よくいらっしゃいましたね」と語りかけてしまいました。だってすごいことではないですか。時空を超えて私に会いに来たんですから ! もちろん、その会場にいるひとりひとりである「私」にもですよ。
私は、美術展に行くとよくそう思います。「時空を超えて会いに来た」と。
現存するフェルメールが単身で描いている男性の絵は2枚のみで、もう一枚が「天文学者」です。そして、どちらもモデルは同一人物だそうです。モデルになった男性は実際、科学者だったそうです。どちらも同じ着衣です
ね。
 
明るい未来を見つめているような「地理学者」が気に入って、ポスターを買ってきました。私も明るい未来を夢見る力をおすそ分けしてもらおうと思います。
 
 
さて、ほかの作品の見所ですが、ルーベンスが描いた男性頭部の作品にヤン・ブックホルトという人が左と下に板を足して絵を描き加えた「竪琴を弾くダヴィデ王」は面白い作品です。頭部の描写がさすがルーベンスというタッチです。その隣ではレンブラントの「サウル王の前で竪琴を弾くダヴィデ」で、まだ若いダヴィデが竪琴を弾いています。サウル王の嫉妬心にあおられた憤怒の表情に注目です。
ヤン・ブリューゲル(父)のお得意の森の絵や、彼の工房の花の生物画。(子)の、父の模写や、さらに(子)の追随者の森の中の絵など、ヤン・ブリューゲル(父)(子)の作品が数枚。花の静物画というのはヤン・ブリューゲル(父)
が先駆者とのことです。あぁ、だから「花のブリューゲル」なのか。ほかの画家の花の静物画も展示されています。
肖像画ではフランス・ハルスの二枚が対になっている肖像画、とくに男性の肖像画が良いです。
あとは沢山の静物画、風景画、海の風景画・・・。
 
盛りだくさんの割りにどんどん見られる上、胃もたれしない展覧会です。風景画好きと静物画好きは必見かな。
 
あとはフェルメール・ファンは絶対行ったほうがいいですよ。今年はフェルメール・イヤーらしいですから楽しみですね。年末には他の作品も公開されることですし。日本にいながらにして、現存する全フェルメール作品が見られるかもしれませんね。