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「武士の家計簿」を観ました

5月27日(金)に、高田馬場早稲田松竹で、サムライムービー2本立てということで、昨日書いた「十三人の刺客」と併映で「武士の家計簿」を観ました。
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この映画は、実際に書かれた家計簿や手紙などを元に、物語を作成して映画化したものだそうです。「武士の家計簿」というタイトルから、もっと色々と節約の工夫などをするエピソードが出てくるのかと勝手に想像していました。
 
猪山家が、いかにして借金を返済したかは、とにかく家中の無駄と考えられる物を売る、借金の4割りを返済した段階で残りは無利子にしてもらうよう交渉する、生活は質素倹約へ、徹底的に無駄を省く、というものでした。武士であるというだけで、面子だの世間体だの、色々不要なものがまとわりついているのをばっさりと切り捨て、実を取るという生き方です。いっそ何も無いというのはすがすがしく、しかし現実はなかなかそういうわけにも行かないのが人の生活というものです。そして、算用者として、家に代々伝わった技を磨き、しっかりとお勤めして稼ぐ術を次代につなぐこと。
 
これは、もうすぐ明治維新になろうという頃、江戸末期のお話です。猪山家で行っていたことは、奇しくも意識改革だったわけです。生き残っていく為に、借金返済をする話、というよりは、いかにしてこの一族が、江戸末期から明治へと、次代の転換期に生き延びていったか、というお話なのです。そして、それは地味ながら、この一族にとっては正に戦いの日々です。
 
江戸時代、武士が借金をするのは当たり前、という風な風潮もあったようですが、まず借金まみれな自体から脱却をはかるべく、質素倹約にはげみます。家中のあれもこれもを売り払い、きものは一人3枚、弁当もおむすびとさつま芋、とものすごい転換です。当初は嘆いていた家族も、やがてその生活に慣れていきます。そうすると、いかにしてその状況を楽しもうか、という余裕すら生まれてきます。そうしたらしめたもの。借金返済も半分は成功したようんものです。
 
江戸時代の武士というのは、町人と違って、ひょいひょいと職業を替えるわけにも行かず、武道の家柄はひたすら武道に、事務方はひたすら事務に打ち込まざるをえないご時世だったようです。そんな中で生き残っていくには、自らの技を磨くこと。だから、5才の息子に厳しくそろばんや算術をしこむのは当然です。こんなに小さい頃から、と思うとちょっと可哀想ですが、この一族が生き残っていくには、そろばんの腕前が必須なわけで、ひいては大人になった時に大いに役立つものです。教え込む親にとっても、仕込まれる息子にとっても戦いです。
 
その中で、息子に日々の買い物の支出を帳面に付けさせて、報告させるという勉強法が出てきて、すでに実践をもって身に付けさせるとは、よい方法だと感心。また、失った金をどうやって穴埋めさせるのか、考えさせるシーンもなかなか。雨の中、失った銭を探す息子の姿は哀れであるものの、そうやってお金の厳しさを叩き込まれると、息子の中でもその役目の重要さが分かるというもの。もっとも、雨の中で銭を探したり、拾ったという銭を元の場所に返しに夜中に行かせたり、というシーンは厳しさが行き過ぎているシーンではありますが、そのくらい厳しくしないと生き残りをかけた戦いに勝てないということなのかもしれません。
 
この映画は派手な立ち回りも、派手なシーンもまったくありません。江戸時代のホーム・ドラマといったところでしょうか。しかし、地味ながら熱い戦いが静かに繰り広げられているのです。
併映で観た「十三人の刺客」も同じ時代の話です。今、テレビで放送中の「JIN-仁-」も昨年の大河ドラマ龍馬伝」も同じ頃の話です。江戸末期から明治維新と激動の時代を描いた作品は色々あり、切り口も色々。そんな中で「武士の家計簿」は武家のお台所事情を通して、激動の時代をいかに生き抜くかを描いているめずらしい時代劇です。この激動の時代は、現代にも通じ、この厳しい時代を生き抜くヒントにもなりそうです。どんな時代でも前向きに地道に日々の生活を大切に、家族仲良く生きていくことが、幸せの基本なのでしょう。観終わった後、ほんわかしたいい気分を残してくれる作品でした。