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ボッティチェリを鷲掴み 「ウフィツィ美術館展」

今日は、10月11日より東京都美術館で開催中の「ウフィツィ美術館展」に行ってきました。この美術館は金曜は20:00までなので、会社帰りの美術鑑賞と洒落込めるのですが、結構すいていて、とてもよく見られました。
 

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今回の目玉はルネサンスを代表する画家、ボッティチェリの「パラスとケンタウロス」とボッティチェリのいくつかの作品です。日本でウフィツィ美術館所蔵の作品が見られるとは考えてもみなかった上、ボッティチェリが見られるなんて驚きです。なんだか、日本では見られない作品だと勝手に決め付けていたので。
 
実は、ウフィツィ美術館には以前行ったことがあるのです。その旅の目的は、ウフィツィ美術館に行くこと、そしてルネサンスを代表する巨大な2枚の絵を見ることだったのです。それで、その時、ボッティチェリのあまりにも有名な「春」と「ヴィーナスの誕生」をめでたく見たのです。ただ、今回来ている「パラスとケンタウロス」を見た記憶が無いのです。どこかに貸し出していたとか、作品の架け替えで丁度倉庫に入っていたのか、あるいは私の記憶違いかは不明です。でも、とにかくボッティチェリの本物が見られると、意気込んでいながら足取り軽く出かけたのでした。
 
展覧会の構成は下記の通りです。
 
第1章 大工房時代のフィレンツェ
第2章 激動のフィレンツェ、美術の黄金期の到来
第3章 「マニエラ・モデルナ ( 新時代様式 ) 」の誕生
 
ウフィツィ美術館展」と銘打っていますが、フィレンツェにある、そのほか7つの美術館からも出展されています。ルネサンスを語る時、どうしても他の美術館に所蔵の作品も関係してくるからでしょう。
 
そして、この展覧会はサブ・タイトルが「黄金のルネサンス ボッティチェリからブロンヅィーノまで」であるとおり、盛期ルネサンスの三巨匠 ( ダ・ヴィンチミケランジェロラファエロ ) についてはチラとも触れられていないのです。普通、ルネサンスと言うと、この3人は避けて通れないと思うのですが、思いっきりよくそこはカット ! あくまでもボッティチェリと、その周辺の画家だけを取り上げています。と、言うと、地味なのでは ? と思いがちですが、そこはボッティチェリの作品があるので、地味にはなっていないところがすごいです。
 
ボッティチェリの師匠だったフィリッポ・リッピの作品、フィリッポの息子のフィリピーノの作品も展示されています。個人的にはもっと沢山のフィリッポ・リッピの作品の紹介があってもいいように感じました。フィレンツェに行くと、フィリッポ・リッピの作品にはあらゆる所でお目にかかれるのですが、美人画のような美しい聖母像です。さすがに修道士なのに駆け落ちしたくらい女好きだったと言われるリッピだけあって、彼の描く聖母は美しいのです。
 
師匠のタッチをまるでコピーしたような、ボッティチェリの初期作品、師匠から優美な美しい聖母像を得たようで、ボッティチェリの描く女性もまた優美で美しいのです。彼の場合は、聖母や幼子キリストと共に描かれる天使たちも美青年・美少年ぞろいなんですが、とにかく見ていて気持ちが明るくなるような作風がボッティチェリです。
 
今回、展示されている「聖母子と洗礼者聖ヨハネ」、オールスター出演かという感があり、ゴージャス感のある「聖母子、洗礼者聖ヨハネ、大天使ミカエルとガブリエル」、後年の修復時の加筆が多く、ボッティチェリの当初のタッチが損なわれてしまったと言われる「ロッジャの聖母」は、その顔の表情などは結構ボッティチェリらしいと思います。師匠がリッピからヴェロッキオに変わった頃に描かれた「聖母子 ( 海の聖母 ) 」は、他とはタッチが違うようです。小さいそっけない感じの作品ですが、これはこれで木綿のようなさらっとした画風で良いです。
 
ボッティチェリは華やかな画風の前半に比べて、サヴォナローラに影響された後の作品「東方三博士の礼拝」はタッチがまったく違い地味な作品です。私は初めて見たように思います。ボッティチェリの良さを全て封印したような印象を受けました。サヴォナローラの提唱で多くの美しい美術品が焼かれた際に、彼に心酔していたボッティチェリも自らの手でそれまでの宝石の様な美しい作品をいくつも火にくべて焼いてしまったのだそうです。もったいない話です。
 
そして、目玉の「パラスとケンタウロス」。これは圧巻です。サイズも大きく、そこにドンッと知恵と戦いの女神パラスがケンタウロスの髪をむんずと鷲掴みしているところが描かれています。パラスは「春」や「ヴィーナスの誕生」と同じモデルかと思わせる美しい女性で、困りきっているケンタウロスは困ったおっさんの様な顔をしています。そのコントラストが面白いし、インパクトがあります。パラスの表情はケンタウロスを見ていないようで、どこか冷めて無表情。「かんべんしてくれよ」と上目遣いのケンタウロス。重力なんて関係なくふわっと立っているパラス。ヘンな絵、不思議な絵ですが、美しいという意味では美しいのです、これが。正直ほれぼれ。まじまじと見入ってしまいました。絵の前にソファ、プリーズ !
 
ボッティチェリ数枚だけでもかなりの満足感がありました。あとは、プロンジィーノとかペルジーノとかギルランダイオとか、その時代を盛り上げた画家とその工房の活躍も紹介され、いかにフィレンツェが美術、文化の都市として盛り上がっていたかがしのばれます。
 
75点の展示ですが、印象派を見るよりは時間がかかります。それでも満足感はかなりあると思います。美術館のお土産コーナーの隅にボッティチェリの缶バッチのがちゃがちゃがあり、やっている人を見て、思わず私もやってみました。何種類か絵柄があるのですが、何が当たるかは分かりません。「パラスとケンタウロス」のパラスとか、「ヴィーナスの誕生」のヴィーナスとかでるといいな~と思っていたら、あらっ、これは ? どの絵の誰なのか分からない女性の横顔が。ボッティチェリとリッピはイラストみたいだなと思っていたのですが、こうして缶バッヂにしたりするとまさにイラスト ! って感じです。でも、いいんです。美しければ !
 
今回の展覧会に行って、フィレンツェに行きたくなってしまいました。前回行きそびれた所はもちろん、前回行った所もまた訪ねてみたいものです。

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