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インパクトの薄い「ベルギー 奇想の系譜」展

昨日、7月24日(月) に、渋谷の文化村で15日から始まった「ベルギー 奇想の系譜」展へ行きました。サブタイトルに「ボスからマグリットヤン・ファーブルまで」とあるように、500年に渡る奇想の系譜を総勢30名の作家によってたどるというものです。

構成は以下のとおりです。

Ⅰ 15-17世紀のフランドル美術
Ⅱ 19世紀末から20世紀初頭のベルギー象徴派、表現主義
Ⅲ 20世紀のシュルレアリスムから現代まで

何と言ったらいいのでしょう ? ベルギー、フランドルで「奇想」と言ったら、ヒエロニムス・ボスとピーテル・ブリューゲル(父)ははずせませんよね。ピーテル・ブリューゲル(父) は「七つの大罪」シリーズ7点、゜七つの徳目」シリーズ4点、その他が5点(有名な「聖アントニウスの誘惑」「大きな魚は小さな魚を食う」など) の版画が出ています。油彩はめったに貸してくれないものね。さらに、息子のヤンの「冥界のアエネアスとシエラ」が出ていました。どうして、長男のピーテル・ブリューゲル(子) の作品を1点も出さなかったのかが謎です。だって、長男の方は「地獄のブリューゲル」と呼ばれるほど、怖い絵をたくさん描いていたのに、ですよ。う~ん。

ボスに至っては1点もありません。ポスターやチラシに使われている「トゥヌダルスの幻視」はボスの工房の作。「聖クリストフォロス」はボス派。せめて版画でもいいので1枚くらい、ボス本人の作品を展示してほしかった。

Ⅰ部のフランドル美術はほとんどが版画です。ブリューゲルの版画、ボスの模倣者や追随者の版画、そしてルーベンス原画の版画が7点、その他の版画です。ルーベンスを「奇想」のくくりに入れるのはちょっと強引というか無理があるのでは? そりゃ、ルーベンスだって天使や魔物の絵も描くでしょうけど、あくまで聖書の物語に登場してくるから描いたと思われます。墜天使とかサタンとか、それとボスやブリューゲルの奇妙な生物は別物だと思うのですが。天使を「奇想」の生き物と定義してしまうと、宗教画はすべて「奇想」となってしまいます。

Ⅱ部のアンソール、Ⅲ部のデルヴォー、マグリッドと、確かにベルギーは「奇想」の地なのかもしれません。ただ、アンソールにしろデルヴォーにしろ、展示する作品が違うのではと言う感じは否めません。「奇想」と言うからには、アンソールだったら骸骨や仮面が描かれている作品の方が、今回展示された作品よりはるかにアンソール風で「奇想」というテーマに合うでしょう。デルヴォーだって、もっと幻想的な作品はいくらでもあるはずなのに、イマイチぱっとしません。

最後の方に展示されていたブロンズ彫刻の「生き残るには脳が足らない」は異常に肥大した頭部を支えられず首が折れ、頭が落ちている作品で、これは面白い作品だと思いました。

なんだか、とりあえず感のある、お茶を濁したような、総体的にインパクトが薄い展示会でした。

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