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甘い生活を目指しています。

【2017年読書記録 10~12月】

【2017年読書記録 10~12月】


八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)感想
民放とNHKと、どちらもいいドラマでついに原作を手に取った。本当にいい話。人情にほっこりとする。ひたむきでやさしくて働き者の澪が、料理に関しては愛染明王の形相で打ち込む姿は印象的。澪や芳、種市の身の上は決して順風満帆ではないが、そこを知恵と心意気と、それを助けてくれる人々とでなんとか生き抜いていく姿に江戸時代の市井の人々の生活力の強さを感じる。澪が次々に売り出していく料理が楽しく、とても美味しそうだ。巻末にレシピが付いているのも嬉しい。小さなつる家が今後どうなっていくか、次が読みたい。
読了日:10月08日 著者:高田 郁

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)LIFE SHIFT(ライフ・シフト)感想
人生100年の長寿がもたらすものを予測することで、これからの時代の生き方を模索し提言する本。今までの教育、労働、引退の3ステージから新たな時代を予測。ステージとエイジが連動しなくなるこれからの時代に必要な資産として無形の資産に目を向けるよう言及。万人に向けているので大企業である程度長く働くアッパークラス向けのパターンの言及となっているのが残念。長い人生だとそこまで順風満帆ではなく、失業や病気などでキャリアを断念する人もいる。キャリアダウンしても自身が納得できるような例が欲しい。長生きしそうな人は必読。
読了日:10月11日 著者:リンダ グラットン,アンドリュー スコット

グールド魚類画帖グールド魚類画帖感想
グールドは魚の絵を生きる為に描くのか描く為に生きるのか?禁止されている島の記録を命がけで綴るのか?創造のみが精神の自由さということだろうか。司令官、書記官、外科医などそれぞれが地の果ての流刑地で欧州の夢をつむぐ。英語版のマジックリアリズムとでも言おうか、現実と妄想の境が分からない。幻想的でちょっと哀しい入れ子状の物語。残酷でグロテスクな世界観だが、人間は何かを生み出したい生き物で、創造することで自分の存在を確立しているのかもしれない。各章の魚の絵がその章の登場人物と結びついている。めまいを覚える読書体験。
読了日:10月13日 著者:リチャード・フラナガン

花散らしの雨 みをつくし料理帖花散らしの雨 みをつくし料理帖感想
ありえねぇ!こんなに泣かせてくれる話はそうそうありえねぇ ! 「みおつくし」の2冊目、楽しく読了。今回は産業スパイもの、幼馴染の親友との友情、おりょう親子の病気騒動、皆片思いのほのかな恋心の話まで盛り沢山でした。その間に登場人物たちそれぞれの過去が語られ今が語られ、次々と登場する江戸っ子たちを沸かせる美味しい料理。店が移転してお武家様のお客も来るようになり、武士が胡瓜や鮗(このしろ)を食べない理由など、町人との違いに驚く。時代小説は町人文化が活き活きと描かれるのが良い。忍び瓜、作ってみます。
読了日:10月23日 著者:高田 郁

恋歌 (講談社文庫)恋歌 (講談社文庫)感想
桜田門外の変以外、尊王攘夷派の水戸藩は一体どうしていたのか。江戸の裕福な商家の娘として育った登世の目を通して幕末の水戸藩の内情が語られる。男たちが志の為に戦った時代、女たちはただその志士の妻や子であっただけで投獄され死罪とされた無残。「恋歌」とは、3年程の夫婦であった夫への恋心を歌った歌だけではなく、幕末を生き死んでいった者達の今生への執着や愛着、自身の信じるものへの気持ちを歌ったもののことでもあるだろう。大きな時代のうねりの中で多くは名も無くただ生きて戦って死んでいった。その無念こそが、まさに恋歌だ。
読了日:10月24日 著者:朝井 まかて

想い雲―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)想い雲―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)感想
三作目。今回もウルウルさせられっ放し。吉原の遊女たちの狐の行列での再会は幻想的で美しくとてもいいシーンだ。今回はあらぬ濡れ衣を着せられて店が評判を落としたり、それを打開する作戦に出たり、心配事で味が決まらない澪に本当の仕事人とは何であるかを考えさせたり、試練の連続だったが、それでも澪を取り巻く人々は温かく人情に泣かされる。人の温かさを知っているから澪の作る料理はとろとろほっこりと美味しいのだろう。女の料理人というだけで信用されない時代、腕一本で相手を黙らせた澪に喝采。早く次が読みたい。またウルウルしたい。
読了日:10月28日 著者:高田 郁

今朝の春―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-4 時代小説文庫)今朝の春―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-4 時代小説文庫)感想
今回も優しくて暖かい人情話ながら、なんだかとても切ない一冊。江戸時代ながらの身分違いの恋も切ないが、おりょう伊佐三夫婦、芳の息子を思う気持ち、種市の娘を思う気持ちもまた切ない。料理の力で親友のピンチを救った澪の天晴れさったらない。料理番付で勝つことよりも意義がある。仕事をするとはどういうことなのか、優しいが心に響く一節があり、澪の料理人として、一人の人間としての成長が楽しみになる。この作品は小松原や源斉、伊佐三や又次、種市など括弧いい男たちが出てきて楽しい。戯作者清右衛門や坂村堂もいい味を出している。
読了日:11月07日 著者:高田 郁

光圀伝光圀伝感想
「義」に生きた熱い男の一生を描いた小説。兄から世子の座を奪った不義に苦しみつつ、兄との競争心でいっぱいの幼年期。戦いから遠く離れた時代を生きるべく歌で一世風靡しようと思い立ち、歌のために教養を磨こうと学問の大海に漂う青年期。二代目藩主になってからの治世を正していく中年期からは国造りのエピソードも多くなる。水戸藩を支えていたのが学問であった事も興味深い。登場人物も宮本武蔵や沢庵和尚を初め徳川家の面々、助さん格さんも登場し興味が尽きない。750ページ越えだが疾走感があり、とても面白かった。
読了日:11月19日 著者:冲方 丁

ミカドの淑女(おんな) (新潮文庫)ミカドの淑女(おんな) (新潮文庫)感想
当時の「日本一の女」と言われた下田歌子のゴシップ記事に、彼女を個人的に知っている様々な人々が歌子の事を推察し、あるいは救おうとあるいはさらに突き落とそうと思考を展開する。本人の視点での物語りはないが、周りの人々がそれぞれ思い描く歌子によって、下田歌子という存在を明らかにしていく構成は見事。一緒に見えてくるのが、「明治」という武張った時代で、帝は時代に乗って存在を変容させるが、後に残された女たちから聞こえるのは恨みつらみの声ばかり。女であるとはとても損な役回りと訴えているようで現代的な問題だ。面白かった。
読了日:11月20日 著者:林 真理子

小夜しぐれ (みをつくし料理帖)小夜しぐれ (みをつくし料理帖)感想
優しく穏やかな店主種市と娘おつるの過去が明かされる「迷い蟹」には号泣。禍の元になった人間を成敗してめでたしめでたしとならないのが現実だし、だから余計に辛い。今回アクション多目、澪の出張多目ながら、いつもとは違う華やいだ料理を依頼されて作る澪の料理人としての腕は素晴らしい。食材が時代によって高価なものだったりあまり食べられないものだったりも面白い。「嘉祥」はなんと小松原様が主役のお話。「夢宵桜」の菜の花つくし、「小夜しぐれ」の寿ぎ善もよいが、「迷い蟹」の浅蜊の御神酒蒸しが私は食べたい。今回も良かった。
読了日:11月21日 著者:高田 郁

ロスト・シンボル 上ロスト・シンボル 上感想
ラングドン教授ものの3作目。前作はローマ、フランスを舞台にキリスト教のドロドロを疾走。今回はアメリカかぁ~、アメリカに謎をよぶ様な歴史や何かあるのかと大して期待していなかったのだが、なんと ! 読み始めたら3度のジェットコースター体験中。面白くて他の事をやりたくない。新しい国だと思っていたアメリカにも十分過ぎる歴史と謎があったのでした。犯人のおどろおどろしさ、フリーメーソンの隠された謎、ワシントンの歴史的建築物、地下通路の逃走劇、敵か味方か不明のCIAと、冒険ものの要素満載で下巻が楽しみ。
読了日:11月25日 著者:ダン・ブラウン

ロスト・シンボル 下ロスト・シンボル 下感想
面白くてあっという間に読了。フリーメイソンは存在自体が謎が多い組織だが、多くの著名人が過去・現在加盟している組織という意味では、秘儀や加入者をばらされると国家転覆もありうる事態だ。ピラミッドの暗号解読が鍵なのだが、このピラミッド、これでもかこれでもかと一つ解けると次の暗号を繰り出してくる。次々に危機に曝されながらの暗号解読、犯人、CIAからの逃走と下巻もスピーディな展開。犯人の正体と犯行理由については、「!」だった。フリーメイソンアメリカの歴史、科学、聖書と薀蓄満載でとても楽しめた。CIAサトウがいい。
読了日:11月29日 著者:ダン・ブラウン

心星ひとつ みをつくし料理帖 (角川春樹事務所 時代小説文庫)心星ひとつ みをつくし料理帖 (角川春樹事務所 時代小説文庫)感想
今まで料理一筋に精進してきた澪に、今回は公私共に転機がやって来た。種市も芳も澪の事を一番に考えてくれているから、店をどうするかでみんなで悩む。縁談も、澪の幸せを思えばこそ、周りの心優しい人々がどんどん外堀を埋めていく。でも、澪はいったいどうしたいのか、一つを選べばほかをあきらめなくてはならない事態。お店移転の件ではりうさんの、縁談では源斉先生の言葉が心に響く。「心星」ってそういう事だったのかと納得。その人のアイデンティティの核になる事。澪にとっての料理のような。澪の決断はいかに。次作が気になる。
読了日:11月30日 著者:高田 郁

夏天の虹―みをつくし料理帖 (角川春樹事務所 (時代小説文庫))夏天の虹―みをつくし料理帖 (角川春樹事務所 (時代小説文庫))感想
大号泣のシリーズ7冊目。今回は特につらかった。次から次へと澪に降りかかる悲しい出来事。自分の道を全うすることがこんなにも困難を極めるとは。小松原様の男気に、なんていい男だろうとほれぼれ。料理人としての又次の手腕と氷解してきた態度に期待したのもつかの間、急転する物語 ! それはないよ~と思わず言ってしまうほど。今作は今までにない程の辛さを味わったつる家の人々が、前を向こうとしている姿勢に市井に生きる人々の強さを感じる。失ったものが大きすぎたが、澪は、つる家の面々は、この後いったいどうなっていくのだろう。
読了日:12月04日 著者:高田 郁

インフェルノ (上)  (海外文学)インフェルノ (上) (海外文学)感想
ラングドン教授もの4作目。今回はフィレンツェでダンテの「神曲」にからんだ謎を解く。最初から事件に巻き込まれて、病院からの逃走劇。しかも院内着。フィレンツェの旧市内はコンパクトな中にぎゅっと歴史的建造物が詰まっている街並みやボーボリ庭園での追跡は観光名所巡りとしても見所満載で楽しい。今のところ今回の暗号が割りと地味で、いったいどこへたどり着くのか分からないが、人口爆発の解消法としての疫病流行を臭わせる天才化学者の存在、囚われの銀髪の女、パンク風の女殺し屋、私営の軍隊と読み始めたら止まらない面白さ。
読了日:12月07日 著者:ダン・ブラウン

インフェルノ (下) (海外文学)インフェルノ (下) (海外文学)感想
物語はフィレンツェからヴェネッツィア、イスタンブールへ。どの都市も歴史的建造物、観光名所がいっぱい。そんな中を物語りは疾走して行く。ものすごいどんでん返しが ! 今回、謎解き、暗号はちょっと地味ながら、人口爆発の解決策の問題提起が重い。悪役のはずのゾブリストって、本当に悪役か?むしろそのアイディアは天才的なのでは。今回「ダンテ交響曲」なるリストの曲があることを知り、物語を面白く読んだだけで随分と知識がついた。大機構の正体は割りと良心的ながら、最後の扱いはちょっと気の毒。映画も見てみたい。
読了日:12月11日 著者:ダン・ブラウン

金米糖の降るところ (小学館文庫)金米糖の降るところ (小学館文庫)感想
軽いものが読みたくて、すごく久々にこの著者の作品を読んだ。相変わらずウジウジしたヒロイン、登場人物の誰にも共感できないすごい話だった。佐和子とミカエラが取り合う達哉ってそんなにいい男だろうか?私はこういう男は大っ嫌い。田淵もいい人そうにしているが、捨てられた妻子はどうなる。この著者の作品は恋愛至上主義なのだろうが、あまりにもヒロインが身勝手で、現実感がまるでない話だ。読む人を選ぶ作品かもしれない。
読了日:12月11日 著者:江國 香織

残月 みをつくし料理帖 (ハルキ文庫)残月 みをつくし料理帖 (ハルキ文庫)感想
悲しみの中から少しずつ光が差してきたような今作。肩にかかっていた重石が少し取れて、身軽になれた澪がどう動くか。又次の思いを澪もふきも受け継いだような回。毎回、澪と野江の場面は美しい。乾物で作る面影膳がしみじみとして良い。このシリーズは料理人の料理への愛や食べる人への温かい心だけでなく、乾物を商う大阪屋さんや味醂の相模屋さんの商品への誇りと愛も感じられる。だから余計に出てくる料理が美味しそうに感じられるのだろう。料理人としての澪にとって、またしても岐路に立たされているが、澪はどういう料理を作る道を選ぶのか。
読了日:12月18日 著者:高田 郁

珠玉の短編珠玉の短編感想
抱腹絶倒の珠玉の短編集でした。山田詠美さんは好きで、ほとんど小説は読んでいるのだが、今回のようなスッパリシャッキリした文体で、ブラックユーモア満載のものは初めて読んだ。いや~、面白かった。短編なのでオチがお見事。結構ディープな性癖のお話もあるものの、下品にならないのが詠美さんの素晴らしさ。「珠玉の短編」の珠玉に取り付かれた為に文章がガラッと変わってしまうあたり、あまりに上手で笑った。カラッとした作風なので、いやらしくならない。新しい山田詠美を発見したような気分を満喫した。
読了日:12月19日 著者:山田 詠美

美雪晴れ―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)美雪晴れ―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)感想
「食は人の天なり」を胸に料理の道を突き進む澪。澪は料理人としての才能だけでなく、いかにして売るかという商売人としての才覚も素晴らしい。初めは失敗しても、そこから考えて素晴らしいアイディアをひねり出し実行していく姿は頼もしい。今回はおめでたい席での料理として考案した「宝尽くし」が特にいい。つる家のみんなが集ったような賑わいとおいしさが家族のように寄り添ったご寮さんのおめでたい席にぴったり。各登場人物にとっての新たな門出のような回。新たに料理人も入り、つる家はどんどんすごい店になって行きそう。さあ、最終巻へ。
読了日:12月21日 著者:高田 郁

天の梯 みをつくし料理帖 (ハルキ文庫)天の梯 みをつくし料理帖 (ハルキ文庫)感想
ついに最終巻。三方よしどころか八方丸く収まった感が。この物語の発端、天満一兆庵の不幸の発端がここに来て明かされた。最終巻でも大事件が起きてやきもき。それでもすばらしい落とし所を得た。付録の料理番付にもニヤリ。この物語の11年後がこの1枚に語られている。なんとも心憎い演出。澪をはじめ、己の心星を信じて突き進んだ人たちの篤い物語だった。最初から最後まで楽しませてくれた作品。今巻では「親父泣かせ」が食べてみたい。登場人物に血が通っているので、いくらでもスピンオフ作品が書けそう。つる家のその後をぜひ書いてほしい。
読了日:12月27日 著者:高田 郁

シェイクスピア・シークレット 上シェイクスピア・シークレット 上感想
ダ・ヴィンチ・コード」の類書らしい。こちらは若き女性研究者。シェイクスピアの失われた戯曲を追うことに。それにしても出てくる人物が皆怪しい。謎の追跡者とFBI、イギリスの警察に追われながらの捜索は、しょっぱなからスリリングな展開だ。シェイクスピアには謎が多すぎる上、その研究者にも色々な派閥があるらしく、失われた戯曲どころか、シェイクスピアっていったい誰だったのかすら分からない。謎が大きすぎる。意味深に時々挿入される幕間が、現代で展開されている追跡にどのように関わってくるのか、後半の展開が楽しみ。
読了日:12月27日 著者:ジェニファー・リー・キャレル