ama-ama Life

甘い生活を目指しています。

昭和時代のビルの取り壊し

今日の帰宅時、なにげなく車窓を眺めていて、おやっと思う光景に出会いました。
それは上野を通り過ぎた時でした。
 
ビルが取り壊されている途中。その中身が半分覗けるようです。
 
そのビルの取り壊しが発表されたのは、もう何年も前だったと記憶しています。でも、いつそこを通っても、閉められているながらビル自体はそこにあったので、まだあるんだな、くらいに思っていたのでした。
 
そのビルの中に、現代では一風変わったレストランがありました。漫画家で料理エッセイの東海林さだおさんの「シュージくんのまるかじりシリーズ」で紹介されていて、一度飛んでいったことがありました。
 
その店は「レストランじゅらく」と言う名だったと思います。入り口を入ると靴を脱いで、お風呂屋さんの履物入れの様な木製の下駄箱があって、靴を入れて木製の鍵をかけたように記憶しています。お座敷というか、板の間に上がってお席に着きます。靴を履いたままのテーブル席も窓際に並んでいました。でも、この店では、せっかく来たので板の間にあがりました。メニューは和洋折衷なんでもあり、お値段もお手ごろで、とても昭和っぽいレトロ感にあふれているお店でした。
 
昔、私も妹も通った幼稚園は年長組みも年少組みも、春の遠足は上野動物園と決まっていました。朝9時だか10時だかに西郷さんの像の前に集合して、階段に並んで集合写真を撮ってもらうと解散です。つまり、写真を撮る為だけに上野まで親子そろって出かけるわけです。たいていの家族は、そのまま素直に上野動物園に行き、動物園を堪能し、持参したお弁当を食べて、夕方には上野を後にします。中には、土地勘がある人たちは動物園には行かないで、他へ行く家族もあります。でも、田舎の家族ですから、あまりそういう幼稚園が意図した場所以外には行きません。
 
それで、夕方、我が家では「レストランじゅらく」に寄る事になっていました。とても混んでいて、窓際のテーブル席になります。当時 ( 私や妹が幼稚園に行っていた○十年前 ) はお座敷の方が人気があったようです。そこでシュウマイ定食を食べた記憶があります。子供だったので、シュウマイ定食を注文して、それを食べるのがものすごく嬉しかったのを覚えています。シュウマイ定食がとてもおしゃれな食べ物だと思っている、田舎の子供でした。だって、田舎でそんなのを見たことも食べたこともなかったし、あまり外食をする習慣が無かったので、外食は大イベントだったんですね。
大きなガラス貼りの窓から上野駅が見え、街の灯りが見え、都会に来ているんだという思いに、キラキラチカチカとしたきらびやかな光が舞っていました。
 
そんなで、その古めかしいレストランは私にとっては子供の頃の幸せな思い出のヒトコマだったので、大人になって訪ねてみると、なにやら魔法がとけてしまったような感じがしました。でも、逆にレトロな趣が面白くもあり、年を経て同じところに行ってみると、また違った喜びがあるんだなと思います。
シュウマイ定食を注文しようと思っていたのですが、その当時 ( 今から10年くらい前でしょうか ) は、既にシュウマイ定食はメニューになく、何やら別のものとビールを注文しました。
お客さんも年配の方が多かったようです。私は比較的どこへでも平気で一人で出かけるので、時として浮いていることがありますが、まぁどうでもよいので、どこへ行っても比較的いつも楽しいのです。楽しんだ者勝ちです。
 
そのレストランが入っているビルが、ついに取り壊されています。たしか、ビルの老朽化で取り壊しが決定したはずです。
 
昭和が、また一つ消えていきますね。しかも、高度成長期に栄えたであろう、日本のよい時代を見守ってきたようなビルです。日本人皆が、前向きで向上心を抱いていた時代を知っているであろうビルです。
 
時代が変わったのは確かです。でも、今の日本ではあまり景気のいい話はもう聞かれませんね。昭和ははるかかなたです。でも、昭和の頃に多くの日本人が抱いていたような、前向きな気持ちだけは、今も持ち続けたいですね。たとえそれが、根拠の無い希望であったとしても。そして、むしろ、世知辛い今の時代だからこそ、こころに少しの昭和的明るさを持つのも大切なのでは、と思います。
 
さよなら、私の思い出のビル。さよなら、昭和のレストラン。