ama-ama Life

甘い生活を目指しています。

Bruegel ×5

ブリューゲルは「百姓ブリューゲル」と呼ばれることもあります。
農民の生活をよく描いたからとか、農村出身だったからとか、諸説あるようです。
下記2枚は、そんなブリューゲルの農民を描いた絵の代表作と言えそうです。
 
 
●The Peasant Wedding ( 農民の婚宴 )
 
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この絵には謎があるのです。
農民の結婚式の宴会を描いた絵です。中央に座っているのが花嫁なのは判るのですが、花婿が誰なのか、判らないのです。
花嫁の右隣が花嫁の両親かな、と思うのですが、さて花婿はいずこ ?
この人物が花婿なのでは、という諸説があるので、見る人が推理を楽しめる絵です。
この絵は、それまで描かれなかった飲食を描いた絵とも言われているようで、給仕が料理を運んでいる姿が一番目立ちます。左下では、ジョッキらしい入れ物にワインなのかビールなのか、酒を注いでいる男の姿が描かれています。当時はガラスではなくて、陶器の壺のような形のものがグラスのようです。
給仕が運んでいる皿の料理を食べる人、酒を飲む人、パンを抱えて指をしゃぶる子供、テーブルの下の犬もお相伴に預かっています。
しかしテーブルに並んでいる料理は、はっきりとは見えないまでも、結構質素のような・・・。パンとチーズらしきものは見受けられます。何か判らないけれど肉料理らしいもの、とりの丸焼きでしょうか ? バグパイプ吹きの右側に見えます。これから色々運ばれてくるのでしょうか ? 各自の前にあるのか、小さなまな板の上にナイフとパンなのか、置かれているのが見えます。
バグパイプ吹きが、いいなぁとばかりに給仕が運ぶ料理を見ています。その給仕の一人の帽子には、スプーンらしきものが付けられています。
 
この結婚式の宴会が行われているのは納屋なんだそうです。そう言われれば、壁かと思っていた花嫁の背後は積み上げた藁に見えます。この当時、結婚するには税金がかかったそうで、右端に居て僧侶と話しているのは領主なのだとか。
そして納屋は農民の豊かさの象徴でもあるそうです。つまり税金が払える甲斐性のある農夫だから、結婚するということでしょうか。しかし、後ろに積み上げた農作物全てが農民の物ではなくて、そこから税として納めなくてはならない分がかなりあったようです。
収入が安定しないから結婚できない現代の日本の男性と相通じる話ではありませんか。
 
 
●The Peasant Dance ( 農民の踊り )
 
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「農民の婚宴」とほぼ同サイズの絵で、同シリーズとして描かれたのでは、とのこと。
村の祭りのようです。
あっダンス始まっちゃってるよ、とばかりにダンスの輪に飛び込もうとして走っているカップル。夫婦なのか、そうではないのか。
既に二組のカップルが踊っています。
踊っている人々の後ろには教会が見え、ダンスの見物に出てきた村人が多々います。
左手の居酒屋らしき家の戸口では、さぁ踊りに行きましょうとばかりに青年が女性を誘っています。
左手手前では、「農民の婚宴」にも登場していたと思われるバグパイプ吹きが演奏し、その側で男がなにやら言っているようです。その奥のテーブルでは酒を飲んで議論しているのか、言い合っているのか、あるいは賭博をしているのか男たちの姿が見られます。さらにその奥では男女が抱擁しながらキスしています。でもお互い不機嫌そう。バグパイプ吹きの手前では、少女たちも演奏にうきうき、という感じ。
 
この絵には農民の、貪食・性的欲望・農民の怒りや楽しみが描かれているそうです。そして、教会的な制約から完全に解放されて、折角の祭りなんだから楽しまなくちゃ、というような気分があふれています。
踊る阿呆に見る阿呆、的に見える、農村の生活の様子。この時代の村の生活は、現代ほど楽しみも多くなかっただろうし、こういったお祭りや婚礼の宴などが、最大の楽しみだったのではないでしょうか。農業は労の多い大変な労働だったろうし、せっかくの収穫もかなりを税としてとられてしまう生活の中で、時々楽しむ機会だったのでしょう。
日本でも盆踊りの夜は村中の若い男女が暗闇で性的欲求を満たすので、その一年後くらいに子供が生まれる若い娘がいたそうな。リオのカーニバルも同様で、その後子供があちこちで生まれるそうです。洋の東西に関わらず、人間はあまり変わらないということでしょうか。
  
入り口には、村の人々がお祝いに、あるいは食事にあずかろうと押しかけています。宴はまさにたけなわ、飲めや歌えの盛り上がりようで、ワイワイしているにぎやかな様子が伝わってきます。それにしても、農民の生命力の強さのようなものが感じられませんか ?