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マハに会いに  「プラド美術館所蔵 ゴヤ 光と影」展

秋晴れの12日(土)、上野の国立西洋美術館にて開催中の「プラド美術館所蔵 ゴヤ 光と影」に行ってきました。
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今回の展示会では40年ぶりに日本で「着衣のマハ」が展示されるのが、目玉です。逆に40年前にも来日していたことに驚きました。今回は、全作品ゴヤ。油彩もデッサンも版画もとなんでもありです。
 
前売り券を買っていたものの、混んじゃっていたら嫌だな、と土曜のお昼頃到着。あら、まだ混んでいませんでした。
お目当ての「着衣のマハ」の前は流石に人だかりができていて、あまりじっくり見られるという感じではありませんでした。もっと早い時間に行くべきでした。
 
「着衣のマハ」は有名なので、どういう絵なのかは誰でも知っていると思います。実際に実物を見て、「あっ、『着衣のマハ』だ」とすぐにわかる絵です。マハとは当時の着飾った市井の若い女性のことを言ったそうで、日本で言うところの「モガ」とか、そういう感じのようです。てっきり名前だと思っていました。
 
ゴヤの作品は今までも随分見ているものの、あまり興味がなかったように思います。今回、「着衣のマハ」はもちろん、それ以外の油彩に描かれた子供や若い女性など、ゴヤの描く女性や子供は可愛い顔をしているのを発見。宮廷画家だったゴヤが描いた王室の人々の肖像がでも、子供が可愛いこと。「無原罪の祈り」のマリアの清楚で可愛いこと。ゴヤのタッチって、割と太い筆遣いという感じなのに、ここまで可愛く表情を捉えることが出来るのかとつくづく感心。肖像画も素晴らしく、なんだか今までゴヤの作品を見ても、まったく見えていなかったような気がしてきました。もっとも、随分前に見たゴヤ展では大きなサイズの絵ばかり沢山見た記憶があり、太い筆遣いでゴォーと描く人なんだな、くらいに思っていたものです。
 
そして、今回、これでもかこれでもかという量の素描とデッサン。版画集なのか本の挿絵なのか、シリーズものが何作もあって、サイズは小さいながら、迫力があり、魅せてくれる作品です。戦争の悲惨さを訴えるような一連の作品の悲惨さ、闘牛を題材にしたもの、悪夢がテーマのものなど、色々。牡牛が描かれた作品を見ると、なにやらスペインらしさを感じます。スペインといえば牛、かしら。
 
ゴヤの生きた時代は西欧社会の一大変革期だったそうで、ゴヤの人生の前半は宮廷画家として画家としての野心を燃やし、後半はナポレオンの侵略戦争によってスペイン自体が戦禍の中にあり、晩年はパリに移住し、フランスで亡くなったそうです。画家としての地位の頂点を極めていた頃、聴覚を失っているようで、そういった外的内的な出来事が、ゴヤの画家としての熟成に力を貸しているようです。ゴヤは長生きで、最晩年でもまだ何かを吸収しようとしていたそうです。会場前の映像でそれを知り、なんだか人間のすごさを見せられた気がしました。長く髭を生やし、両手に杖をついた老人の絵に、それは多分ゴヤ自身の姿と思われますが、「私はまだ学ぶぞ」という一文が添えられているのです。
 
の展示会は大作は「着衣のマハ」のみ。ゴヤの作品からすると、「マハ」はそんなにサイズの大きい方ではないかもしれません。しかし、小品の一つ一つが人間存在の姿をさらし訴えかけてくるものがあります。ゴヤが見つめた時代と人間を眺めるのがこの展示会の本当の目的なのでは、とすら思います。
 
強い光は強い影を生む。スペインという光の国の影の面。宮廷画家という光の面と、世間に向ける批判精神という影の面、その両方を描き出したゴヤの画家としての生涯をたっぷり楽しめるはずです。