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「100%セザンヌ」の「セザンヌ パリとプロヴァンス展」

本日、やっと国立新美術館で開催中の「セザンヌ パリとプロヴァンス」展に行ってきました。
 
セザンヌのみの作品の展示で「100%セザンヌ」というキャッチ・コピーです。構成は下記の通りです。
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      第1章 初期
    第2章 風景
    第3章 身体
    第4章 肖像
    第5章 静物
    第6章 晩年
 
第2章・第5章・第6章が良かったです。
 
私の中でセザンヌという画家は、今回この展覧会を見るまで、いまいちぱっとした印象がなく、「印象派だっけ?」くらいの認識でした。小学生の頃、ユニセフの絵葉書を学校を通じて買ったことがあり、そのなかの一枚にセザンヌのりんごが描かれた静物画があり、「なんだかもっさりとした田舎臭い絵だな」と思っていました。もっと頻繁に絵を見るようになっても、水色ベースの水浴図ばイメージ 2
かり何故か見る機会があり、「水色の絵ね」くらいでした。セザンヌという画家が、絵画史のどのよいな位置にいるのか、いまいち分からなかったのです。しかし、今回の展示会は、「あぁ、なるほど」と納得のいくものでした。
 
実は、昨日ブリヂストン美術館で自画像とかなり晩年の頃の「サント・ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」、初期の「鉢と牛乳入れ」を見まして、「サント・ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」の出来の素晴らしさに、本日、とても期待していました。
 
子どもの頃や20代の頃には、きっとこんなにセザンヌの山の絵が気に入ることは無かったと思います。今見ると、しみじみと実にいい。この展示会では「サント・ヴィクトール山」が3枚出展されていますが、1886年・1896年・
1902年に描かれたもので、いかにしてセザンヌが進化していくかが手に取るように分かります。1886年と1896年に描かれたものは隣合わせに展示されているので、見比べると面白いです。私は余白があるような1886年のものが好きです。1902年に描かれたものもぐっときます。さらに進化して、平たく太い線で描かれていて、なるほど、ここから先は抽象画か、という感じが伝わってきます。
 
風景のパートに「大きな松の木と赤い大地」という作品が2枚あって、1885年と1895年の作なのですが、「サンク・ヴィクトワール山」と同じく、1885年のものの方が、やはり余白が感じられる作風で、1895年に描かれたものの方は太く平たい線で、描かれていて緑が強い感じです。ここでも私は1885年に描かれたものの方が好みです。
 
で、思ったのは、私はどうも中途半端な感じがダメなのかなということです。もちろん、晩年の作風に至る途中の1995年頃の作品も良いのですが、あえてその前と後ろと比べると、それ以前と以後の方がなんだかしっくりとくるのです。
 
静物のパートも良くて、子どもの頃「田舎臭い」と思っていたりんごがテーブルに置かれた静物も、今見ると面白い。何だか違和感を感じていた静物画が、複数の視点で描かれているということを知って、違和感の原因が判ってすっきりしたせいか、安心して見られる。それにしても、複数の視点で描くなんて、それまで誰も考えもしなかったのでは ? 「サンク・ヴィクトワール山」の風景も、そのような方法で描かれているそうですから、セザンヌってめんどくさい人ですね。
 
晩年のパートは素晴らしくて、不思議と画面の透明感が増しています。セザンヌの中期以降の作品は油彩なのに水彩画のような透明感や質感を感じさせる点です。晩年のパートの3つの作品も透明感に満ちた美しい作風です。年をとるほどに魂が若返っているようです。
 
セザンヌのアトリエが再現されているのも嬉しい展示です。実際に静物で描かれているテーブルや花瓶や鉢がそのままそこにあるのが、不思議な感じです。よく、保存されていたなと関心します。そこにセザンヌがいるようなアトリエの空間が再現されています。写真では、セザンヌ愛用のコートや杖も見られますが、展示ではそういったものはありません。
 
約90点を通じて、セザンヌの成り立ちがよく判る有意義な展覧会でした。私は初期の頃の作品は、なんだか冗談のような気がして好きではありません。パリに出てきて、印象派の風に吹かれた結果、色が明るく、作風がずっと軽くなるのは面白いですね。ゴッホもパリに出てきてガラッと作風が変わったのですが、それだけ当時のパリには最新のものが集っており、また印象派の影響も強かったのでしょう。こうやって、初期から晩年まで並べてもらえると、ものすごくわかりやすく、いろいろと合点がいきます。充実した展覧会になっていたと思います。「100%セザンヌ」というキャッチ・コピーに偽り無しです。
 
ちなみに、お土産コーナーでりんごや洋梨をモチーフにしたアクセサリーを売っていましたが、結構いい値なのにおばさまたちの間で人気があるようで、随分売れていたようです。私は「りんごとオレンジ」のチケット・ホルダーを購入いたしました。
 
もし、6月11日までに東京に来る予定があって、「どこか一つ美術展に行こうかな」という方がいたら、迷わずセザンヌ展に行かれることをお勧めいたします。約1時間で回れて、しかも胃もたれせず、「近代絵画の父」の足跡をたどれますよ。