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映画「天地明察」 いつもと違う時代劇

現在公開中の映画「天地明察」を3日(水)に見てきました。
 
あらすじは各映画紹介サイト、公式サイトをご参照ください。
 
さて、映画ですが、う~ん、私は原作の方がはるかにいいなと思いました。なにせつい先日読み終わったばかりなので、記憶も確かだし。監督は「おくりびと」の滝田洋二郎監督。映画の出来としては、「おくりびと」の方がずっといいと思います。
 
まず、「天地明察」という話は、すごく長い話で、22年くらいかけて改暦をする話なので、2時間くらいに納めるのは大変だったと思います。なので、登場人物などはかなり要領よく整理されていて、その辺りは分かりやすくなっているとは思います。それにしても、登場人物が多く、その関係性を描くだけで大変だろうな、とは思うのですが、よく判らないうちに死んでしまったりとか、かなり分かりづらい。原作を読まずに突然映画を見た人はきちんと分かったでしょうか ?
 
映画の前半はテンポ良く、なかなか良い感じです。もともとお話の前半に「北極出地」という天体観測の旅のエピソードがあって、この辺りはもうワクワクです。日本中で観測するので、その土地の風景も見られて、旅ものの映画のようです。そしてこの旅をとおして、主人公の安井算哲も成長していきます。旅に出た時は、ただの天文好き、算術好きの青年だったのですが、旅を共にする先輩である建部や伊藤の遺志を継ぐ立場であると自覚し、実際にその通りになっていくのです。
 
江戸時代の天文観測の道具や算術の道具を見るのも楽しい点です。なかなか見る機会もないですからね。
 
さて、算哲が失敗してしまい、一端観測所は解散、それから立ち直るまでの退屈なこと。眠いシーンが続きます。しかし、再度世に問う為に動き始める辺りから、また映画的に面白くなっていくのですが、それもシナリオ的にちょっと、ね。あまりお上手ではありませんね。
 
マイナス点としては、「おくりびと」の滝田監督なので、この作品も世界に向けて発信できるようにという視点で作られているのだと思うのですが、武士だからといって家の中でも帯刀しているとか、殿様(水戸光圀)が池の鯉にえさをやる時も帯刀しているのはおかしすぎる。算哲が後ろ盾の光圀に噛み付くシーンもありえないでしょう。江戸時代にそんなことしたら、その場でお手打ちですよ。最後の市井に出ての決戦のシーンでも、お公家さんが民衆と共にうろうろ歩いてくるというのも、どう考えてもありえないシーンです。世界の人に分かりやすくアレンジする前に、日本人が見たとききちんと納得して見られるように作ってもらいたいですね。
 
原作では北極出地から帰った算哲が色々工夫して渾天儀を作るというエピソードがあるのですが、そこを是非映像化して欲しかったな、と思います。北極出地の隊長であった建部が病に倒れ、「いつか天の川をこの腕に抱えて三途の川を渡りたい」と語るシーンは天文に命をかけている男のロマンを強く感じさせるシーンです。原作では改暦を目指している水戸光圀にも献上していて、そちらは時代を変えよう、日本を良くしようという国を運営している男のロマンを感じます。
 
主演の岡田准一さんは良かったし、特に若い頃がいいです。好奇心いっぱいで、夢中になりやすく、一心不乱に打ち込む姿や、こけそうになりながら走り回っている姿がとてもよくて、年上の先輩たちに可愛がられそうなキャラクターに仕上がっています。22年間の長きに渡る話なので、もっと年を重ねていくような感じを出してもよかったかな、と思います。
 
江戸時代にこんなに色々なことをやって改暦をしたという事実を基にしたドラマなので、時代劇として見ても面白いし、普通の時代劇では描かれない特殊な職業である碁打ちの世界や改暦までの色々、日本における算数の盛り上がりなど、見所は満載です。
 
でも、正直に言うと、映画よりNHK時代劇ということで5回くらいでやったほうが、面白くて完成度の高いものが出来そうです。ぜひ、NHKさんにこのドラマを制作してもらいたいものです。