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甘い生活を目指しています。

「白隠展」 禅画で和む

今日は、ずっと楽しみにしていた「白隠展」を見に、渋谷の文化村ザ・ミュージアムへ行って来ました。
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白隠慧鶴 ( はくいんえかく ) は、500人に1人の禅僧と讃えられた臨済宗中興の祖です。江戸時代中期に活躍した僧で、84年の生涯を民衆教化に捧げ、その手法として大量の書画を残しました。白隠さんは、誰に弟子入りしたということはなく、独学で絵を習ったそうです。
 
白隠さんの絵は、禅画というくくりらしいです。ま、何でもかまわないのですが、禅画って、私、好き なんと言うか、ほのぼの。ヘタウマと言うのでしょうか、なごみます。江戸時代の民衆にもっと禅宗を知ってもらおう、徳を積んで良い人生を送れるように禅宗の教えを知ってもらいたい、というような目的で描かれているので、あまりかしこまって堅苦しいものでは民衆に伝わりませんよね。民衆の中には字が読めない人も居たのでしょうし、だから絵なんでしょうし、だったら親しみやすいものがいいですよね。
 
今回の展示会ですごいな、と思ったのは、白隠さんの絵を持っているのは多くは禅寺で、40位のお寺から借りて集めたのだそうです。大変な手間ですよね。一大プロジェクトですね。ほとんどがお寺から借りてきているせいか、プンとお香の残り香がしたように感じる作品もありました。
 
会場は下記のように7つのコーナーに分けられています。
 
出山釈迦
観音
達磨
大燈国師
布袋
戯画
墨蹟
 
お釈迦様を描いた作品で、驚いたのは髪や体毛が渦を巻いているのがありまして、そういえば、お釈迦様ってインドの人だったのよね、と今更ながらに納得。
 
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観音様の絵も何枚もあります。白隠さん描くところの観音様は中年のふっくらした女性で、伏目がちでほんわかしています。色々な構図があって、面白いのは執務室で事務仕事中の観音様。あとは滝を見ていたり、蓮の池にくつろいだりしている図。私は「蓮池観音」が好きです。なんだかタイ辺りにバカンスで来たマダムがエステの合間に蓮の池を覗いているような雰囲気の絵なので、ちょっと気が抜けるというか、なごみます。
 
そして、達磨の絵のコーナー。7角に仕切られて、5つの壁に10枚の達磨の図です。40代の頃に描かれたという達磨は前歯が4本出て下唇を噛み、顔の向きとは反対を睨んでいます。なんとも卑屈な顔をしている達磨なんです。悩みが多いんだろな、とか、煩悩と闘っているのかな、とか、感じがにじみ出ています。達磨を描きながら、白隠さん自身を重ねて描いているようです。
 
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その次に並んでいる、萬壽寺所蔵の「半身達磨」太く勢いのある線で描かれた達磨は、強烈なインパクトを見るものに与えます。バックは黒塗りだし、衣は朱色だし、大きなギョロ目は空を睨み、口はぐっと閉じられています。迫力あります。サイズも大きい。こうなってくると、もう悟りも開いたし、どっしりと自分の行く道を歩んでいる人の自信がみなぎっているのを感じます。その隣の清見寺の「半身達磨」も同じ構図ですが、こちらは単色。それでも筆は太く勢いがあり、中々に見る者を惹き付けるものがあります。
 
「眼一つ達磨」という絵があって、達磨の目が一つしか描かれておらず、なんだか妖怪のような顔です。「ゲゲゲの鬼太郎」の目玉親父のようです。
 
それにしても、この七角形の小スペースの真ん中に座って、10枚の達磨さんに囲まれているというのは、なんとも心安らぐ体験です。ぐるりを達磨さんに見守られていると言いますか、もっとしっかりせい、と叱責されていると言いますか、なんだかありがたい感じすらしてきます。あの卑屈な感じの達磨さんですら、腰の落ち着かない私に突きつけられているようで、ちょっとしっかり考えないといけないな、という気にさせられます。見る人の数だけメッセージがある絵だと思います。
 
布袋さまのコーナーは色々なことになってしまイメージ 4
っている布袋さまが楽しめて、とても和みます。マンガのような可笑しさ、軽やかさがあって、可愛い。禅画って、面白いですね。肩肘張らずに見られるのがいいです。続いての戯画も、まるでマンガのようなのですが、白隠さんの皮肉が利いていたりしてフフッと頬がゆるんでしまいます。
 
「百寿福禄寿」という作品があるのですが、真ん中に福禄寿、その周りに「寿」という漢字の字体が100も書かれていて、グラフィック・デザインか、という絵です。私、あの「寿」って字体イメージ 5
が好きだな、とか、見ていてとにかく楽しいのです。
 
最後は書です。天衣無縫とでもいいましょうか、バランスなんて考えてないもんねーみたいな書もあり、微笑ましい。
 
途中、白隠さん愛用の品の展示コーナーがあり、太い筆や煙管、団扇などが展示されています。こういうのがあると伝説の人ではなくて、実際に生きてあちこち旅して説教して描いていた人なんだな、と不思議と作者との距離が縮まるものです。
 
禅画の展覧会ということもあり、年配の人が多いのかなと思っていましたが、年齢層は幅広く、男女の比率も五分五分といったところでした。日本画の展覧会だと、どうしても若い人はあまり興味が湧かないのかもしれませんが、見ておいて損はないな~と思います。日本と言う国の美というものが、いかに何でも受け入れてしまうものなのかよく判るし、その中でもやはり見るべき物は沢山あるものです。広く大衆に向けて描かれた禅画というのは、敷居が高くないので日本の絵画の入門にもいいかもしれません。とにかく、私は楽しめました。2月24日までなので、この機会に足を運ばれることをお勧めいたします。だって、こういう機会でもないと、それぞれのお寺に行かないと見られないんですから。
 
 
写真は上から、「白隠展」ポスター。「布袋吹於福」。
  「蓮池観音」。
  「半身達磨」。
  「すたすた坊主」。
  「百寿福禄寿」。