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「虚無への供物」を読む

6月30日( 火 ) 、ついに「日本三大奇書」の最後の一冊、「虚無への供物」を読み終わりました。
 
いやいやいや、面白かった~。「奇書」とは「へんな本」の事かと思って取り組んだが、むしろ「優れた本」とか「面白い本」という意味かと思いました。中国では「奇書」とは「優れた本」という意味だそうです。
 
「虚無への供物」 ( 1964 ) は「ドグラ・マグラ」( 1935 ) 「黒死館殺人事件」 ( 1934 ) に比べると、かなり後に出版されているので、ありがたいことに旧字ではなく、とても読みやすかった。旧字で「黒死館殺人事件」を読んだ後だけに、す~らすらです。
 
1964年出版された作品とは言え、あまり古さは感じない。当時の世間を騒がせた事件と絡めて事件が起こるという内容で、その事件に対して、素人探偵たちが推理合戦を繰り広げる。しかし、事件が解明される前に次の事件が起こり・・・。
 
それぞれに色彩の名前を持つ元宝石商の息子たち、植物学者の父、「虚無への供物」という名のバラ、シャンソン、ゲイバア、フランス帰りの従兄弟、家族殺人、老人ホームの火事、密室の謎、などなど、推理小説で出てきそうな仕掛けがてんこ盛り。でも、実は・・・。というところが、この小説の真骨頂だ。
 
作者の主張は後半、犯人が語る「御見物衆」を糾弾するあたりなのだが、正直言って、謎解きとか犯人が誰とか、事件の真相とかよりも、物語全体を貫いているムードが楽しく、サクサク読めるのも良いし、とにかく読んでいて楽しいのが良い。
 
どのくらい信憑性があるのか分からないが、「週刊文春」で「東西ミステリーベスト100」というのを1985年と2012年に実施していて、そのどちらでも日本編の第2位に選ばれているので、ずっととても気になっておりました。因みに1位は1985年・2012年共に横溝正史の「獄門島」です。
 
楽しい読書体験をお約束できる一冊です。