ama-ama Life

甘い生活を目指しています。

読書記録2016 4 (10月~12月)

 【2016年読書記録 10月~12月】


利休の闇利休の闇感想
この著者は初読み。文章が読みやすく、どんどん読める。利休と秀吉の関係を茶湯を通して展開していくが、ちょっと物足りない。利休の闇の部分にのみ焦点を当てた作品で、光の部分があまり描かれないので、この作品の利休は何とも魅力に乏しい。茶湯を茶道にまで昇格させた人間としての、美意識や矜恃が描かれておらず、常に時代と為政者に翻弄され、生き残る為に小狡くたち廻っている感がして、残念。戦国時代という異様な時代だったからこそ、立ち上がってくる美があるはずだが、その辺りが訴えてくる事がない。
読了日:10月03日 著者:加藤 廣


八つ花ごよみ (新潮文庫)八つ花ごよみ (新潮文庫)感想
老境に差し掛かった夫婦たちのお話。江戸の市井に生きる人々の姿が、温かい視点で描かれる短編集。この作者は初めて読む。短い作品の中に、要領良くディティールが語られ、人情も描かれる。「御船橋の紅花」が好き。本人に気づかれない様に、熟年の男女の間を取り持つ話だが、出てくる人が皆真っ直ぐで気持ちがいい。しみじみしたりほのぼのしたりできる、短編集だった。
読了日:10月06日 著者:山本 一力


Xの悲劇 (創元推理文庫)Xの悲劇 (創元推理文庫)感想
エラリー・クイーンは初読み。最初はただの人間関係のもつれによる殺人かと思われたが、なんと連続殺人事件に。しかも犯人は、とんでもない人物だった。元シェイクスピア俳優のドルリー・レーンが品良くたんたんと事件解決に迫る。レーンとタグを組む刑事のサム、検事のブルーノと好対照なのもお約束。20世紀中頃のアメリカらしさが溢れていて、いい雰囲気に物語を盛り上げる。
読了日:10月31日 著者:エラリー・クイーン


Yの悲劇 (創元推理文庫 104-2)Yの悲劇 (創元推理文庫 104-2)感想
名作の呼び名の高い作品。今読んでも古さは感じられず、とても面白い。今回の事件はアメリカ版のドロドロ御家騒動。資産家で、その家に君臨していた老女が殺される。目撃者は聾唖で盲目の長女で、他の兄弟とは父親違い。彼女の目撃証言を元に捜査は進められる。今回のレーンは前作に比べると、苦悩の色が濃い。化学者だった夫の実験室、奇矯な家族たち、その周りの人々、まさにミステリのお膳立てはバッチリ。流石にアメリカものだけあって、ドロドロしているのに、割とドライな口当たりだった。
読了日:12月01日 著者:エラリー・クイーン


無意識はいつも正しい無意識はいつも正しい感想
すぐに使える簡単なメソッドが紹介されていて、これなら出来るかもと思った。指を揉んだり耳を揉んだり。テレビを見ながらでも電車の中でも出来るのが良い。無意識は過保護な親もような物という見方にハッとさせられた。無意識は心配だからブレーキをかけているのだ。心のブレーキを外していこう。
読了日:12月04日 著者:クスド フトシ


がふいしんぢゆう―合意情死がふいしんぢゆう―合意情死感想
岡山ものも、ついに最後の一冊。短編集で読みやすい。この作者にしては、割と軽い口当たり。悪気は無いのによく無い方へ物事が転んで行ったり、といったお話。この著者に興味がありながら、余り暗かったりドロドロだったりが好きでは無い人には、この辺りから入るのが良いかも。
読了日:12月21日 著者:岩井 志麻子


Zの悲劇 (創元推理文庫)Zの悲劇 (創元推理文庫)感想
前の作品から10年の時が経った設定で、今回はサムの娘ペーシェンスが事件を語る。前半、前2作に比べて、読み辛く、イマイチ物語に入れなかったが、半分過ぎ当たりから本格的にレーン登場。ここからは俄然面白くなった。前2作に比べるとおとなし目だが、最後の処刑室での犯人当てはドキドキして盛り上がる。流石、舞台俳優であったレーンの演出と言ったところか。今作、レーンが老いており、それを補うように体を張る助手的ポジションがペーシェンス。途中まで面白くなるのか不安だったが、読み終わってみれば面白かった。
読了日:12月24日 著者:エラリー・クイーン