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BRUEGEL ! BRUEGEL !!

ブリューゲルを見に行ったので、ひたすらブリューゲルの話。
フリューゲルの作品は、割と聖書の場面を題材にしているものが多い。しかも、聖書で語られるその時代ではなく、衣装や風景がブリューゲルが生きた時代のフランドル地方の中で、聖書の場面が繰り広げられる。
 
 
イメージ 1BRUEGEL  聖書を題材にした絵
 
The Tower of Babel
 ブリューゲルの部屋で多分一番人気なのが、「The Tower of Babel」。
バベルの塔を描いた絵は2枚あって、ウィーンにある絵より、さらに工事が進んだバージョンがロッテルダムにある。しかも、その2枚よりさらに前に小さいサイズで描いていて、それは残念ながら現存していないそうです。
 
 
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この絵ってすごい !!
面白いですよね。工事中の塔はすでに今にも崩れそう。しかも、右側はすぐに海が迫っていて、港に船が何艘も停泊しています。塔の後ろ側はすぐそこまで町並みがうかがえるほどの距離で、この塔がなにやら現代の高層ビル建築と似ているようにすら思われます。塔のすごく近くに民家のような家が数件見えますが、立ち退き反対派でしょうか ?
この絵の左下には、塔の施工主であるニムロデ王の一団が描かれています。石工たちが王様の一団にひれ伏しています。ニムロデ王は「ノアの箱舟」のノアの子孫だそうで、自分の力を誇示する為に塔を建設し、神の怒りをかうというお話。驕り高まった心を戒める、というような内容のお話です。
 
このバベルの塔は、ローマのコロッセオを彷彿とさせるデザインです。ブリューゲルルネサンスの頃のイタリアを旅行していることもあり、やはりこれはコロッセオなのでは ? コロッセオでないにしても、ローマ時代の何かの建物がモデルだと思います。また、ローマは永遠の都だし、カソリック教会の総本山だし、そのへんのからみも感じられます。
でもそれだけではなくて、工事の場面は、ブリューゲルの時代の最新の建築技術が細部まで再現されているのだとか。とにかく細かく、工事の様子が描き込まれています。
 
 
 
●The Conversion of St Paul ( 聖パウロの改宗 )
 
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日本語で「聖パウロの改宗」とか「聖パウロの変換」と言われる絵。このエピソードを描いている画家は色々いますので、見比べてみるのも面白い。
このエピソードを簡単に説明すると、パウロは元々キリスト教を弾圧するパリサイ人だったが、ダマスカスへの行軍途中で復活したイエスの声を聞き、落馬。しばらく目が見えなくなる。その時のキリストの言葉どおり、改宗をする。
 
この絵は、パウロがキリストの声を聞いて、驚きのあまり落馬したところ。いったいどこにパウロが・・・と、いました、いました、調度絵の真ん中あたりに青い服を着て馬から落ちている人が。これがパウロさんです。
この絵を見ると真っ先に目に飛び込んでくるのは、手前の黄色いチュニック姿の馬上の男ではないでしょうか。でも、あくまで主役は小さく描かれたパウロです。黄色いチュニック男は、いわば目撃者ですか。えっ、なんだなんだ、って感じで見ている、この絵を見ている私たちと同じような立場にあるとも言えますよね。
 
ここでも着衣や武器はブリューゲル当時のものとなっています。それにしてもこの山道の険しいこと。かなり急な山道が続いていますね。比較的、遠景まで描かれるブリューゲルの絵にしては、景色の距離が近いように感じます。山の間から、荒い海がのぞいていますね。
なんでもパウロは改宗してからキリスト教信者として認められるまで、ものすごく苦労をするのだそうです。そりゃそうですよね。つい昨日までキリスト教を弾圧していたわけですから。でも努力が実り、使徒たちに受け入れられ、最後は聖人として列せられるそうです。パウロが認められたのは、布教活動をおこなったかららしいのですが、特に異教徒への伝道を行ったことが評価されたようです。
この絵の険しい山道、荒々しい海といった景色は、これから辿る事になるパウロの運命を予感させます。
 
 
 ●The Suicide of Saul ( サウルの自殺 )
 
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神に選ばれたイスラエル初代王サウルは次第に自分の力を誇り、神に不従順になっていく。この絵はイスラエル軍対ペリシテ軍の戦いの最中、ペリシテ軍への敗北に敵になぶりものにされたくないがために自殺するサウル王を描いている。
サウルは左側で突き立てた剣の上に身を伏せて自殺しており、その脇で従者が突き立てた剣でのどを突いて殉死している。
画面の真ん中から右側は戦う両軍。右端はかなり激しく戦っている姿が描かれている。鈍く光る甲冑と林立する長い槍。はためく白と赤の両軍の軍旗。真ん中の岩畳では、何騎もが倒れている。その向かうの遠景では、川を渡って敗走するイスラエル軍
 
この絵って、一大スペクタクルを描いていますよね。一枚の中に何時間も、あるいは戦いの一瞬がぎゅっと凝縮されているように見えます。かなり激しい戦いが展開されているのも、すごく小さく描かれているのにきちんと見て取れるし、岩畳では身分の高そうな武将だろうか、軍馬も倒れ、人も倒れているのが判る。
 
そして、びっくりしたのが自殺中のサウル王とその従者ですよ。なんか、とても不器用な自殺方法ではないですか。なんであんなに長い剣で首を切っているのだろう。狩人たちがもっているような大振りのナイフとか、なかったのだろうか。日本の武士だったら、切腹しているところです。あるいは脇差で喉を切るとか。自殺するのにぴったりの道具と方法というのが日本にはあるけれど、残念ながらこの時代のサウル王にはなかったのでしょうね。
だいたい、このエピソードは聖書にあるもので、キリスト教は自殺は禁止されてますし。
 
遠景の街の上には火の手が上がっているのか、光がさしているのか。全体的に緑色の絵。殺伐として怖い絵だな、と感じる。それと共に、細部まで描き込んだ画面構成には、さすがという感じ。ブリューゲルが生きていた時代のスペイン圧政下を暗示しているのだろうか。