ama-ama Life

甘い生活を目指しています。

服部まゆみ 著 『1888 切り裂きジャック』の世界に耽溺する

f:id:winewinewine2525:20210626160546j:image

ここ一週間、服部まゆみ 著 「1888 切り裂きジャック」という小説に夢中になっていました。本編が769ページもある重量感。ミステリですが、ヴィクトリア朝のイギリス、ロンドンの街並み、習慣、流行、庶民の生活、紳士達の様子、学問や学者、社会情勢についての描写が素晴らしく、あの時代のロンドンが正に世の中の中心であった事を感じさせます。

国費留学生の柏木、鷹原が当時世間を騒がせていた娼婦連続殺人事件を追います。

柏木と鷹原は東大医学部の同窓生で、柏木は数年前に家の都合で突然男爵になったものの貧乏学生、鷹原は華族出身、頭脳明晰だけでなくその美しい容貌が人々を引きつけ、社交範囲も広い。ロンドンには警察の視察に来ており、最新式の犯罪捜査の研究をしています。この2人は解剖学を納めており、ベルリンにいた柏木はその当時話題になっていた『エレファント・マン』に関心を持ち、研究する為ロンドンにやって来て、鷹原の下宿に部屋を得ます。

エレファント・マン』は当時、彼を見つけ学会に発表したトリーヴス医師の所属するロンドン病院に保護されていました。柏木はトリーヴス医師の元、『エレファント・マン』ジョーゼフ・ケアリー・メリックの元に通い、徐々に心を通わせます。

そんな折、ロンドン病院近くの貧民街で娼婦が無残に殺される事件が起きます。

続いて2人目の娼婦が殺され、ロンドン中が大騒ぎになる中、容疑者はとんでもない人数に膨れ上がるものの、捜査に進展がありません。

スコットランド・ヤードの刑事達と鷹原、柏木の捜査が続きます。

物語は殺人事件の捜査の間に、様々な鷹原の知人が登場。華麗な交友関係は王室とも繋がり、地位の高い人々とも会えるというのが鷹原の凄いところ。ロンドン社交界の華やかな交流も描き出し、読者を楽しませてくれます。

当時の最新の学問や犯罪捜査の方法の実験、文学や絵画、社会運動など、一つの作品にあれもこれも詰め込んで、柏木が文学に目覚めて自分の道を決めるまでの成長も描き出し、当時の大事件の真相も追うという、詰め込み放題の小説となっています。

こんな面白い小説を今まで読んでいなかったのが、我ながら不思議です。出版当時、すごく話題になったという記憶もないので、大ベストセラーだったというわけでもなさそうですが、とにかく面白い。小説を読むのが好きな人には一読をお勧めします。

著者の服部まゆみ さんは既にお亡くなりになっているのですが、他の作品も読んでみようと思っています。