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皆川博子 最新作 『インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー』を読む

皆川博子さんの最新作『インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー』をお盆前に読みました。『開かせていただき光栄です』『アルモニカ・ディアボリカ』のエドワード・ターナー3部作の最終巻。

今回は独立戦争中のアメリカが舞台。モホークとコロニストの間に生まれ2つの文化を生きるアシュリーの手記と殺人罪で投獄されているエドワード・ターナーへのインタヴューが交互に描かれる。エドワードはなぜアシュリーを殺したのか?が出発点だが、物語が進み真意が明らかにされて行く。

アメリカ独立戦争を元々その地に住んでいたモホークの視線から描いていて、略奪さら蹂躙された部族の人々の悲哀が悲しい。イギリスでの過去を背負い新大陸に渡ったエドワードの優しさ、苦しさ、自責の念、自罰的にしか生きられないところが、それに重なる。

エンタメ作品ながら「新大陸を開拓する」と称する白人たちの傲慢さ、ある日突然全てを奪われた原住民たち、白人視点でしかない「凶悪なインディアン」という刷り込みとイメージ戦略など、考えさせられる点が多い。全く異なる文化が出会った際の融合ではなく衝突がイギリスがアメリカ原住民に成したことだ。その点フランスはアプローチが違い、原住民と融和していたが、後から来たイギリス軍に負けてしまう。なんだかイギリスとフランスの文化の違いを見るようです。

ミステリなんだけれど、大きな陰謀や歴史的な背景が含まれており終始重い内容でした。偵察に出た先で、まるでキャンプの様なシーンがあり、その辺りはちょっとホッコリ。

『開かせていただき光栄です』で颯爽と登場した美青年エドワード・ターナーの決着はやはりそうでしたか、と。

大きな歴史の転換点、失う物も新たに始める者もあるけれど、このシリーズは最終巻に来て、随分と大きな嵐の中に放り込まれたと思います。

それにしても、著者の皆川博子さんは1929年12月8日生まれ。現在91歳、今年で92歳になられます。通常の90代とは違うんでしょう。センスが若いです。作家生活50年目、だそうです。凄い!皆川博子さんには、これからもまだまだ面白い作品を書いていただきたいです。

楽しい読書体験でした。3部作の前2作を再読しなくては、と思います。

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