ama-ama Life

甘い生活を目指しています。

Bruegel ×6

長々と見てきたけれどブリューゲルもあと2枚。
 
 
●The Peasant and the Birdnester ( 農民と鳥の巣盗り )
 
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鳥の巣を盗ろうとして木に登り、今にも落ちそうな男。帽子が滑り落ちている。
その男を指差して、鳥の巣泥棒の愚かさをこちらに示そうとしている若い農夫。彼も、今にも水に落ちそうだ。
これもブリューゲルお得意の寓意絵だそうだ。
 
聖書の中の大スペクタクルを描いた絵や、農民の生活場面を描いた絵を見てきて、なにやらこの絵の構図はほかとは大違い。だって、こんなに大きく人物が中央に描かれているんですから ! しかも2人しか描かれていないのですから !
今まで見てきた絵は登場人物はいったい何十人・何百人いるのだろう、というくらい沢山描かれている。それが突然2人とはちょっと拍子抜けしますね。
この絵の主役の若い農夫はその血色のいい顔から、健康で善良で働き者なのだろうと思われます。その彼が、鳥の巣泥棒を指差して非難している図。人を非難している本人もまた水に落ちそう、人のことを非難している場合ではないとでも言いたそうな絵ですね。
この絵には色々な寓意がこめられているそうで、そんなに大きい絵ではないのに奥が深いですね。
 
 
この絵で農夫がとっているポーズはダ・ヴィンチの「洗礼者ヨハネ」のバロディなんだそうです。確かに、そう言われれば、まったく同じポーズ。ダ・ヴィンチの「洗礼者ヨハネ」とちょうど逆方向に腕を上げていて、顔の方向もよく似ている。イタリア旅行の成果だそうです。誘う気まんまんのヨハネと善良を絵に描いたような農夫、というのも面白いとりあわせですよね。
 
 
●The Feast of St. Martin ( 聖マーティンの祭り )
 
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聖マーティンのお話。
聖マーティンは軍人で、ある冬の寒い日に寒さに凍える貧者と出会い、自分のマントを半分に切り裂いて、その貧者に与える。するとその夜の夢で、半分のマントをまとったキリストが現れ、その出来事をきっかけにキリスト教に改宗した。
その後、司祭になってほしいと人々に要望され、司祭になって高い地位を得るのが嫌でガチョウ小屋に隠れたところ、ガチョウが騒いで見つかってしまい、司祭になった。
聖マーティンの祭りでは、ガチョウを食べ新酒 ( ワイン ) を飲む習慣がある。
 
この絵を初めて見たときは新酒解禁のお祭りのことなのかと思っていました。だって描かれている人々がひたすらお酒を飲んでいるんです。もしかして邦題が「酒飲み天国」だったら笑えるな、なんて思っていました。
画面右側がマーティンらしいですね。ピンクのマントをかかえて馬に乗っていますね。いかにも貧しそうな人が手を差し出しています。
大騒ぎでお酒を飲んでいる人々は、穴のあいたズボンをはいていたりして皆あまり裕福ではなさそうです。そんな人々がズボンがずり落ちそうなのもお構いなく、お酒に熱中しています。「こっちこっち」「俺にもくれよ ! 」という声が聞こえそうです。
つらい現実を祭りで振舞われる酒で酔って、しばし忘れたいということでしょうか。いつもはお酒にまでお金がまわらないけれど、お祭りでお酒が振舞われるのでこの機会にお相伴にあずかろう、ということでしょうか。
いずれにしろ、右端の騎士マーティンは、左側で巻き起こっている騒ぎには無関心といった感じです。伝説のマントがピンク色で描かれているのも興味深い。マーティンの暖かい心を示しているようです。
 
この絵をブリューゲルの展示室で見て、最初なにやら違和感を感じました。というもの、ほかの絵はみな横長なのですが、この絵は縦長。しかも昨年プラド美術館ブリューゲルの作品が発見された旨を発表しましたが、その絵のタイトルが「聖マルティヌスのワイン」。絵自体もウィーンに展示してある絵の左奥まである構図で、もしかしたらウィーンにあるこの絵も左半分があったのかもしれません。それなら横長の構図に収まるし。ブリューゲルは同じ内容の絵を2枚描いていることがあるので、可能性はありそうです。
う~ん、さすが謎の画家ブリューゲルです。