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フェルメールの「真珠の首飾りの少女」初来日 ! ベルリン美術館展

フェルメールの「真珠の首飾りの少女」が初来日 ! 本日から国立西洋美術館にて開催の「ベルリン国立美術館展 学べるヨーロッパ美術の400年」を見に、早速行ってきました。
 
今回初めて知ったのですが、ベルリン市内には15もの美術館があり、美術館がいくつもまとまってある地域があるのだそうです。今までベルリンという都市にさしたる関心もなかったので、今回、開場に入る前の映像で知りました。その中からベルリン国立美術館彫刻コレクション、ベルリン国立絵画館、ベルリン国立素描版画館から選りすぐっての展示だそうです。映像で、ベルリン美術館側のキューレターでしょうか、「日本に紹介するには良いものをと選りすぐりました」と語っていました。
 
この展示会の構成は以下の通りです。イメージ 1
 
Ⅰ部 絵画/彫刻
    第一章 15世紀 : 宗教と日常生活
    第二章 15-16世紀 : 魅惑の肖像画
    第三章 16世紀 : マニエリスムの身体
    第四章 17世紀 : 絵画の黄金時代
    第五章 18世紀 : 啓蒙の近代へ
Ⅱ部 第六章 魅惑のイタリア・ルネッサンス素描
 
これ以外に、個人蔵 ( 国立西洋美術館寄託 ) の素描4点。うち1点はヴァン・ダイク。
 
彫刻・絵画・素描でヨーロッパ400年の美術が学べるような構成になっています。
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もちろん、今回の目玉はフェルメールの「真珠の首飾りの少女」です。第四章に登場です。しかも、その展示室の順路で、部屋に入ると暗い色調のレンブラントの「ミネルヴァ」、かつてはレンブラントの作品とされていたものの現在ではレンブラント工房の作品なのではと言われる「黄金の兜の男」が並んでいます。「ミネルヴァ」は色調が暗すぎて、メデューサの頭が彫られているらしい楯が見えません。レンブラントの「ミネルヴァ」は昨年の「レンブラント展」で見た「書斎のミネルヴァ」の方が好き。今回のは色が暗すぎてよく見えないのがネックです。制作された頃は違ったのかもしれません。「黄金の兜の男」は黄金に輝く兜の表現が素晴らしく、その下にあるいささかくすんだ感じの顔とのコントラストでとても兜が引き立っています。これは素晴らしい。
 
そして、続いてフェルメールの「真珠の首飾りの少女」です。初日の昼頃行ったので、比較的すいていたのですが、ここだけは黒山の人だかりです。フェルメールの絵はサイズが割りと小さいので余計人だかりになると見辛いのです。中には、意外にサイズが小さいのに驚いて、つい隣の人に話し掛けていた年配のご婦人もいました。
 
国立西洋美術館さん、やってくれますね。レンブラントの暗い色調の次に見ると、「真珠の首飾りの少女」の白さが余計に目立ちます。フェルメールは少女を描いているけれど、本当に表現しているのは光なんだそうです。この絵、かなり変わった構図です。右側に横を向いた少女。左側が小さな鏡や鉄の飾りがついた明るい窓。左手前にはテーブルがあり左から布、その右の画面中央に中国陶器の入れ物、テーブルの後ろの壁は真っ白でテーブルの後ろにタイルでしょうか、フェルメールの絵によく描かれているような模様のものが立てかけてあるようです。真ん中、真っ白の壁。この真っ白の壁のウェイトの大きいこと !! この白い壁に光が描き込まれているわけです。フェルメールの絵の壁は真っ白なんですが、大抵は地図がかけられていたり、家具が置かれていたりしていて、ここまで何もないのも初めて見たように思います。大抵左側が窓で光が入っている構図です。この少女、以前に見た中で、手紙を書いていたような。本当に、普通の人の日常をパッと切り取ったようです。「この首飾り、どうかしら ? 似合っているかしら ? 」とかなり真剣な面持ち。でも口元は嬉しそう。よく見ると、首飾りとイアリングの真珠に当たっている光を受けて真珠がきらめいています。そのきらめき方がテーブルに置かれた陶器のきらめきと違うところがおみごとです。ソフトな黄色のカーテン、ソフトな黄色のガウン、柔らかな窓辺の光。見ていてこちらもうっとりしてしまう絵です。
 
東京都立美術館のリニューアル・オープンで展示されるフェルメールの「真珠の耳飾の少女」に先立って、「真珠の首飾りの少女」を早速見られたのはとても嬉しいことです。フェルメールは東京に居ながらにして、全て見られるかもしれませんね。
 
この展示会では、驚くほど沢山の彫刻が来ていて、こんなに色々見る機会も無いので面白かったです。ドナテッロの工房の作品もあれば、ロッビアの作品もあります。レオナルドもボッティチェッリもお世話になったヴェロッキオ工房の「コジモ・デ・メディチの肖像」も来ていて、これは素晴らしいできです。
 
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龍退治で有名な聖ゲオルギウスの彫刻も何点も出展されていて、人気のある題材なんだということを感じさせてくれます。宗教改革当時のカソリックプロテスタントの対立を描いているらしいです。その中ではティルマン・リーメンシュナイダーの「龍を退治する馬上の聖ゲオルギウス」の出来が面白くて好きです。総体的にヘンなところが、いいのです。馬に踏みつけられている龍は龍というより地獄から出でた下っ端悪魔みたいで、その姿や表情を見ていると笑えます。なのに馬上の聖ゲオルギウスはなにやら憂鬱そうな表情。馬は龍を踏みつけて「フン !!」と言っているような表情なのです。他の同テーマの彫刻も、龍はそんな感じで、あまり怖くないですね。ガーゴイルとか、ロマネスク建築の柱などにくっついているヘンな生き物みたいで、その影響ってあるのでしょうか。
 
この彫刻のコーナーで驚いたのは、ヨーロッパの彫刻というのは、通常大理石やブロンズで出来ているものが大半だと思っていたのです。今回、小さいサイズの木製の像を沢山見ました。今まで木製の像というのは、ヨーロッパ美術の展覧会であまり見たことがありません。ミケランジェロの木製のキリスイメージ 3
ト像というのを見た記憶くらいでしょうか。小さいサイズの像でキリスト教の場
面を描いたものは、センスとしては日本の仏様や観音様の木造と似たようなものなのでしょうか。日本では単一の人を彫りますが、ヨーロッパのは場面になっています。更に、鹿狩りであったり猪狩りであったりというシーンを彫ったものもあり、細かい造作が見事です。
 
肖像画ではクラーナハ ( 父 ) の工房の「マルティン・ルターの肖像」やデューラーの「ヤーコプ・ムッフェルの肖像」があります。クラーナハの「マルティン・ルターの肖像」は昨年、放送大学の授業で勉強したので興味深いものです。今回は工房の作品ということですが、「妖しい絵ばかり」と思っていたクラーナハでも、こういう福福しい肖像も描くのかと驚くほど、なんだかタッチが違って、妖しいどころかルターはいい人にすら見えます。クラーナハ ( 父 ) の作品は次の「マニエリスムの身体」というコーナーに出展されています。「ルクレティア」なんですが、そうか、クラーナハの女性はなんだかバランスがヘンだと感じ
るのはマニエリスムの影響を受けているからだったのか、と今更ながらに気づイメージ 4
きました。体型がヘンですよね。そのヘンさが妖しい魅力と申しましょうか、ドイ
ツ流エロティシズムに通じているのでしょう。
 
「絵の黄金時代」のコーナーではベラスケスの「3人の音楽家」と並んで、ジョルダーノの「エウクレイデス」と「アルキメデス」の大きな絵があります。太い筆のタッチで描かれているのですが、禿頭の表現など、お見事です。
ルーベンスの「難破する聖パウロのいる風景」という風景画もあります。ルーベンスというとピンクがかった豊満な肉体の女性たちがわんさか描かれた作品をイメージしてしまいます。風景画は数が少なくて40点くらいしかないそうです。嵐で難破したシーンなので、画面が総体的に暗いのですが、左半分は荒れ狂う海、右半分は晴れてきて虹がかかっています。その前面に難破した船から命からがら逃げた人たちが描かれ、さらに右の前面には焚き火をする人たちが描かれています。この中の一人が聖パウロらしいのですが、画面が暗すぎてよく見えません。ヤン・ステーンの「喧嘩するカードプレーヤー」は一般の人々の生活を沢山描いているステーンの寓意画のようで、裕福な層と貧しい農民の対立を描いているようです。その側
にはヤン・ダヴィッドゾーン・デ・ヘームの「果実・花・ワイングラスのある静物」でイメージ 5
す。オランダ絵画の展覧会では欠かせない静物画ですね。
 
Ⅱ部の素描の目玉はミケランジェロの「聖家族のための習作」でしょうか。ミケランジェロの素描ですよ。あまりお目にかからないですよね。ミケランジェロの絵画といえば、綺麗色が乗っているイメージですが、素描って見たことなかったかもしれません。当たり前といえば当たり前なのでしょうが、なにやら絵画の習作というより、大理石彫っちゃいそうな気がします。ギルランダイオやシニョレッリの素描もあります。
 
さらにボッティチェッリのダンテ「神曲」の挿絵素描が2点あり、これが私はとっても気に入りました。なんだか萩尾望都、なんです。不思議なんですが、見た瞬間、「あぁ~、萩尾望都みたい~! 」と思ってしまいました。なぜだろう ? 描かれている世界観? 絵の感じ ? そんななので、このコーナーでの私のお気に入りはボッティチェッリの2点です。 
 
ちなみにラファエッロの素描は九州会場だけらしいです。
 
ヨーロッパ美術の400年をさくさく回れば1時間強で見て回れます。私は途中ゆっくり座って休憩したので、もっと滞在時間が長くなりました。「学べる」とついているけれど、ある程度絵を見ている人でないと、流れをつかむのが難しいと思います。でも、短時間で彫刻も絵画も素描も見られるのは面白い構成で、「見た感」120%です。
 
どうぞ、フェルメールの「真珠の首飾りの少女」に会いに行ってください。それと萩尾望都風のボッティチェッリの「神曲」の素描もお忘れなく。 
 
 
   レンブラント派「黄金の兜の男」
  ティルマン・リーメンシュナイダー「龍を退治する聖ゲオルギウス」
  デューラー「ヤーコプ・ムッフェルの肖像」
  クラーナハ (父) の工房「マルティン・ルターの肖像」
  クラーナハ (父) 「ルクレティア」