ama-ama Life

甘い生活を目指しています。

「西巷説百物語」で涼む

今年の夏は、怪談をあれこれ愉しんで、省エネの暑い夏を乗り切ろうかな、なんて考えています。
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手ごろなところで、まず小説なんてどうかしら。怪談と言えば京極夏彦だよね・・・と、図書館の「き」の書架へ。あっ、見つけちゃいました ! まだ読んでいない作品で、しかも大好きな「巷説百物語」の最新刊、と言っても2年前に出ていた「西巷説百物語」です。いつの間にか出ているのよね、と思いながらほくほくで早速借りてきて、読んでみました。
 
あぁ、本当に面白かった。7つの作品で7つの「怪」を通して人間の業があぶりだされる短編集です。
 
今回の舞台は大阪で、主人公は又市の義兄弟である林蔵。全体を大阪弁でしゃべっており、大阪の空気感にあふれています。作品の登場人物の中には、悪党ではないが過去のいきさつにおびえている者が出てきたりもします。又市を主役に据えた今までのシリーズでは、とんでもない悪党が出てくるケースが多かったものの、西では扱う案件がもっと小ぢんまりしている感があります。
 
林蔵の話術と仲間の演出で、被害者が加害者に立ち位置を転換させる手
法の見事さ、人間の業の浅ましさ、悲しさ、虚しさを描き出す様はさすがです。
 
大阪弁でのしゃべりで、賑やかさがあるように思うものの、作風自体は割りと寂寥感を感じます。そして、東に比べてドライというか合理的というか、何だか大阪風。それも土地柄に合わせたということでしょうか。大阪が舞台なので商家の話が多いのも特徴かもしれません。お侍やお役人といった武士階級の話がありません。よく出来た落語のような趣の作品もあって、語り言葉の魅力が感じられます。
 
林蔵は又市と同じように口八丁で渡世を渡っているわけですが、大分又市とはキャラクターが違い、そこもよく出来ていて私には好感触です。西のお仲間もいいキャラだし、こっちはこっちで面白い。シリーズ化されるのでしょうか ? 最終話には、又市と戯作者の山岡百介がゲスト出演の趣で登場して、仕掛けの一端を担っています。又市がどうして大阪から逃げたのかも語られます。
 
怪談を求めて読んだわけですが、怖いかというと前の作品のような怖さはありませんでした。怖いのは「怪異」ではなく「人間」だと言うことでしょうか。
 
一遍ずつが短いので、普段あまり本を読まない人でも簡単に読めると思います。大阪弁の心地よさに身を浸してください。「巷説百物語」のシリーズを読み返したいな、と思います。