本日は東京国立博物館で開催中の「桃山 天下人の100年」展に行きました。
と、いうのもいつのまにか開催されていた展示会でして、前期・後期の架け替えがあるのですが、前期は本日まで。そして前期には狩野永徳の「洛中洛外図屏風」通称「上杉本」が出ているのです。
今まで「上杉本」には縁がなく、見てみたいと思っても中々東京にやって来ない作品だなと感じていました。それが今回来ている。しかも今日までは東京国立博物館で見られるのです。
はっきり言って新型コロナウィルスの影響で完全予約制でチケットをとらなくてはならず、かなり面倒くさい。しかもなんとなく最近美術展のチケット代が高騰していて、今回の「桃山展」は2400円です。高いな〜。
でも、ここを逃すと後悔するかも、と思い、行ってきました。
今回の展示会は30年間の安土桃山時代の作品、約230件を展示するものです。
とは言うものの、展示の前期後期で架け替えがあるでしょうから、この日私が見たのはその半数くらいかと思われます。この30年間は日本美術史上、もっとも豪壮で華麗な時代なのだとか。そう言われれば、やけに金ピカの作品が多い時代とも言えそうです。
構成は以下の通り。
A. 桃山の精髄 天下人の造形
B. 変革期の100年 室町から江戸へ
C. 桃山前夜 戦国の美
D. 茶の湯の大成 利休から織部へ
E. 桃山の成熟 豪壮から瀟洒へ
F. 武将の装い 刀剣と甲冑
G. 泰平の世へ 再編される権力の美
会場を入ると、もうすぐに「上杉本」です。手前に1展「洛中洛外図屏風」があり、続いてすぐに「上杉本」。これを見に来たので、ちょっと拍子抜けしました。
では、早速拝見いたします。「洛中洛外図屏風」で現存しているものは、確か165点前後だったかと記憶しています。その中の2トップが狩野永徳の「上杉本」と岩佐又兵衛の「船木本」で、どちらも国宝です。
「上杉本」は、私が想定していたより金色の雲の割合が高くて、殆どが雲といっても良い様な。描かれているのは有名な寺社や有力御家人の屋敷、将軍の屋敷、その周りで暮らす人々です。祇園祭の逆鉾巡航の様子もあり、一体何人描き込まれているのか、人物たちが生き生きと京の都を闊歩しています。思いのほか人物や建物が小さく描かれています。庶民の住む家の屋根には石が乗せられています。登場人物たちの息遣いまでも聞こえそう。じっくり、一人一人を見てみたい。拡大鏡があればもっとよく見えるのに。展示会では時々、双眼鏡らしき物を持参している方がいますが、双眼鏡や拡大鏡、必要ですね。私も一つ購入しようかしら。
とにかく「見たぞ」と言う感じがあります。
「洛中洛外図屏風」を見終えて一息つく暇もなく、その部屋のどん詰まりの壁一面に狩野永徳の「檜図屏風」、長谷川等伯の「松林図屏風」「楓図壁貼付」が並びます。わ〜っ!豪華!豪華すぎ!!
この3点はいずれも国宝です。私も、この3点は過去に見た事がありますが、3点同時に、しかも並べて見たのは初めてです。「楓図壁貼付」や「檜図屏風」を見て感じるのは、もしかして経年劣化で描かれた当時と色が違うのではないかと言うことです。その可能性はないのでしょうか?描かれた当時はもっときんきらしていたのかもしれません。現在は色が落ち着いているかもと思うのです。とはいえ、どちらもドドーンと大木が画面を占めています。「檜図」はまるで動き出しそうな檜がうねうねとのたうっています。「楓図」は大木の足元に様々な花を咲かせていて華麗です。真ん中に置かれた「松林図屏風」が墨一色で描かれているので、むしろ「これでもか」の華麗合戦の中で画面を引き締めています。墨一色と言っても、その濃淡で色は1色とは言えず、白黒だけの画面が一番鮮やかですらあります。
あ〜、豪華だなぁ。このコーナー、圧巻です。
色々面白い物を拝見して周り、第2会場のEのコーナーでまたしてもビックリ!
なんと、もう1枚の「洛中洛外図屏風」の2トップである「舟木本」が登場です。なんとなんと!
岩佐又兵衛による「舟木本」は、先に見た「上杉本」に比べると、建物や人物が大きく描かれているようです。雲の割合も少ないし。こちらも沢山の登場人物たちが画面狭しと動き回っています。こちらは寺社よりも将軍の住まいや細川氏の屋敷や、三好、松永と言った有力御家人の屋敷、近衛邸などが描き込まれていて、その位置関係も規模も興味深いところです。
豪華絢爛、華麗と言えば「上杉本」ですが、市井の人々の息吹きをより感じられると思うのは「舟木本」かと感じました。私は雲の割合が少ない「舟木本」の方が好きかな。
そのコーナーは京都・大覚寺に沢山作品がある狩野山楽の「紅梅図襖」「牡丹図襖」、京都・天球院に沢山作品がある狩野山雪の「籬(まがき) に草花図襖」「竹林虎図襖」、狩野長信「花下遊楽図屏風」(国宝) が所狭しと並んで展示されています。山楽の「牡丹図」の豪華さ、山雪の「籬に草花図屏風」の斬新さ、「花下遊楽図屏風」の伸び伸びとした美しさ。どれをとっても見ていて楽しい。
他に海北友松や狩野探幽の作品もありました。狩野山楽の「松鷹図襖・壁貼付」は二条城のものらしく、なんだかこれが私の狩野派のイメージです。
本阿弥光悦と俵屋宗達のコラボも見られます。
更に、日本の美術にとって欠かせない茶の湯との関係から、名品茶碗から茶道具、戦国時代という時代背景の為、刀剣や甲冑の展示もあり、広くその時代の日本の美術を見る事が出来ます。
とにかくすごい展示です。明日休んで11月3日から後期の展示となりますが、行って損はない展示会です。
日本の美術に圧倒されに行ってください。
📷 コピーによる複製が休憩室に展示されています。