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プライス・コレクション「若冲が来てくれました」@仙台

4月17日 (木) に、やっと仙台市博物館で現在公開中の「特別展 東日本大震災復興支援 若冲が来てくれました」を見に行ってきました。
 
この展覧会は、仙台・岩手・福島を巡回して行きます。9月23日に福島県立美術館で最終日を迎えます。3館で開催されるのでどこで見ようかなと考えていたのですが、ズルズルと先延ばしにしていると結局見そびれそうで、とにかく行ってみようということで、仙台に行きました。
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展示内容は以下の通りです。
第1章 ようこそプライスワールドへ
    ⅰ)   目がものをいう
   ⅱ)   数がものをいう
   ⅲ)  ○と△
第2章 はる・なつ・あき・ふゆ
第3章 プライス動物園
第4章 美人大好き
第5章 お話きかせて
第6章 若冲の広場
第7章 生命のパラダイス
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プライス・コレクションとして持ってきてくれているのは100点のようなのですが、日本美術の展示会の場合、会期の前後で作品の入れ替えがあるので、実際はもう少し見られる点数は少ないです。それと、「国内賛助出品作品」というのがありまして、これは国内の他の美術館からお借りしている作品が数点あります。
 
さて、今回の展示会のコンセプトで、子供たちにも見てもらいたい、子供たちを元気付けたいというプライス夫妻の思いもあって、子供が見ても分かるような工夫がされています。日本美術の作品名は大人でも分かりづらいものが結構あるのですが、子供用に簡単なタイトルがついています。もちろん、本当のタイトルも分かるようになっているので、ご安心を。解説も子供でも分かるような簡単な表現を用いています。章立て自体、子供を意識したものになっていると思われます。そして、持ってきてくれている作品の数々も、動物のものが多いです。ユーモラスなものも多いようです。
 
まず、順路に従って最初に入った部屋の初っ端から、長沢芦雪の「白象黒牛図屏風」がドド~ンとお出迎え。白黒濃淡で描かれた右隻の象と左隻の牛の対比が面白く、白象の背には2羽の真っ黒いカラスが停まっています。黒牛の手前にはちょこんとした白い子犬がこちらを見て笑っています。どちらも屏風からはみ出しそうな迫力で、より大きさを感じさせます。こんなのを置けるお部屋があったら素敵ですよ。
 
NHKの「日曜美術館」では鈴木其一の「群鶴図屏風」が紹介されていましたが、残念ながら前期のみの展示で見られませんでした。鶴では若冲の「群鶴図」というのがあって、これはいったい何羽いるのかしら、と思うような体と足の構図で、トリックアートっぽくて面白い作品です。もちろん鶴の絵自体の完成度は素晴らしく、見ていて楽しい作品です。屏風では森徹山の「松に鶴図屏風」という作品があるのですが、なんと未完成なんです。あらっ、と思って作品を右から左へ見ていくと、まだ描き終わっていない飛ぶ鶴の群れの姿が。この作品を描いている間に亡くなってしまったらしいです。それでも、なかなか見ていて素敵で、こんなにたくさんの鶴が描かれた絵を見たのも初めてです。未完成でも展示されちゃうなんて、ダ・ヴィンチみたいですね。
 
ユーモラスな作品ですと、河鍋暁斎の「妓楼酒宴図」「達磨図」の2枚、雅熙の「百福図」が面白いです。どちらもおめでたい絵柄なのだと思います。 作者は分からないのですが、「栗樹猿猴図屏風」は猿の姿が愛らしく、見ていて楽しい屏風です。屏風というと、キンキンキラキラ、松に鷹、というイメージですが、それを見事に裏切ってくれていて、こういう楽しいのが和めていいです。
 
第2章の「はる・なつ・あき・ふゆ」では、鈴木其一、酒井抱一が大活躍という感じです。曽我蕭白の「富士三保清見寺図」も見られます。
 
第3章の「プライス動物園」では、とにかく虎が幅を利かせています。円山応挙長沢芦雪、などなど、お好みの虎をどうぞってな感じです。因みに、「若冲の広場」には若冲の足をなるめ虎を描いた「虎図」もありますので、色々見比べてみるのが面白いです。虎は描かれた当時、日本ではなかなか見ることが出来ない生き物だったそうで、結構絵師の想像に頼っているようです。なんだか大きな猫みたいだなぁ、とか思うような虎もあれば、眼光鋭く龍も描かれそうな虎もあり、精悍なのから可愛いのまで色々です。毛の質感も色々で、胸元がふわふわしていそうな虎から全身剛毛といった虎まで、夢で黄色と黒のシマシマを見てしまいそうなほど。若冲の足をなめる虎は、なんだか猫っぽいです。
 
このコーナーで、円山応挙長沢芦雪の「牡丹孔雀図」があって、見比べられるのですが、応挙の作品の模写が芦雪の作品らしいです。そっくりです。孔雀の口の開き方が微妙に違う気がします。芦雪の方が口が大きく開いているような。この図は私は応挙の方が好きです。ま、ほとんどそっくりなのですが。
 
第4章の「美人大好き」は美人が描かれている絵が大集合です。美人画というと、私は浮世絵をイメージしてしまいますが、浮世絵は1枚もありません。浮世絵でない美人が描かれた作品を今まであまり見てきていないので、こういうのもあるんだなと、日本絵画の幅広さを知りました。
 
第5章の「お話きかせて」のコーナーでは「源氏物語図帖」「酒呑童子図屏風」「義経記図屏風」があり、各主要場面が1枚に描かれているのですが、お行儀良く順を追って描かれていないので、解説を読んでから見ないと、どの場面がどういうシーンなのかが分からないのです。「源氏物語」や「義経記」はお話を知っているものの、「酒呑童子」の話は知らないので、解説頼みでした。しかし、お話とどこを見ていくかを把握して見てみれば、マンガのようで楽しく見られました。日本の文化というのは、つくづくマンガに通じているのだなと思います。
 
さて、第6章はいよいよ「若冲の広場」です。仙台会場の会期の第四期にあたるこの時期、このコーナーに15点、次の「生命のパラダイス」に1点、「ようこそプライスワールドへ」に1点、計17点の若冲が見られます。もっとも、あと1点「鶴図屏風」というのが会期の早い時期だけあって、最後の期間にはそれは展示されていないものの、「花鳥人物図屏風」が展示されています。
 
若冲ですよ、若冲 !! これを見に来たのですよ ! 今回見た若冲の作品の中では、「鷲図」の迫力や「雪芦鴛鴦図」の溶けかかった雪の表現と水中の鴛鴦の顔、やっぱりいい鶏の画「旭日雄鶏図」「紫陽花双鶏図」、ゆるキャラかと思わせるような「伏見人形図」、葉の表面をつたう水滴と芭蕉の葉の質感の素晴らしい「芭蕉図」、墨一色なのにその質感や量感さえも表現している「葡萄図」、美しい鶴の姿の「群鶴図」、そして第7章の「鳥獣花木図屏風」と見所満載です。正直言って、もっと広いスペースでゆっくり見たかったです。若冲の作品は、何かしら発見があって見ていて楽しいのです。圧倒的な技術の上に様々な工夫を毎回凝らしているというか、とにかく画を描くのが好きで好きで色々試してみました、見る人を楽しませてやろう、驚かせてやろうという心持とでもいいましょうか、そんな絵師の情熱が感じられます。
 
今回の展示会の発端になったという第7章の「生命のパラダイス」というコーナーに展示されている「鳥獣花木図屏風」はかなり大きい屏風です。細かい升目に色が乗せられ、右隻の真ん中に正面を向く白い象、その周りに色々なな動物、左隻は色々な鳥が描かれています。どちらにも現実には存在しない生き物が描かれているのも面白い点ですが、その手法には見る者をあっと言わせるものがあります。いったいどうして、小さな升目を埋めていくような事をして、この絵を描いたのか ? だって途方もなく面倒な作業だと思われます。小さい升目一つ一つに色を塗るだけでも面倒なのに、その中にさらに模様を描いたり、升目の中を4つに分けて色を入れたりと、まぁ、どうしちゃったのかしら・・・という細かさなのです。で、見ていてフと思ったのですが、お風呂場のタイルでこれと同じようなのを作ったら素敵だろうな、と。なんだか升目のせいか、タイルに見えてくるのです。実は、プライスさんはすでにそのアイディアを実行したらしく、家のお風呂の壁は「鳥獣花木図屏風」と同じ図柄になっているようです。この絵は、じっくり見れば見るほど発見があるようです。でも、ぱっと見た瞬間、楽しい絵だなと思わせてくれる作品です。まさか、これが屏風だとはね。ホント、日本美術の世界は奥が深いです。
 
大体1時間くらいで見て回れますが、初めて行った会場ということもあって、先に見た会場に戻ってみたり出来るのかも分からず、順路に沿ってぱぁ~と見ただけ、という感は拭えません。私は、最初にパッパと見て、気に入った絵はもう一度戻ってじっくり見たい方なので、ちょっと欲求不満に陥ってしまいました。
 
それでも、総体的には、面白く拝見できました。やはり、子供にも見てほしいというコンセプトが良かったのでしょうか。子供の頃から、日本美術に親しめるなんて、ちょっと羨ましい経験ですよね。知れば好きになるし、好きになればもっと知りたくなります。
 
会場を出たところで、ちょっとお話をする機会があったおば様は、北海道から見に来たと言っていました。翌日、ランチに訪れたお店の店員さんも、「この美術展を見に来たというお客様が前にもいましたよ」と言っていました。日本全国から見に行っているのかもしれませんね。もしそうだったら、いいですね。この展示会のコンセプト通り、東北の方たちも来場して、絵を見て楽しんでいただくことで元気を出していただけるでしょうし、他の地域から見に行く人が多ければ、旅行という形で東北支援にもなりますから、多くの人に見に行ってもらいたいです。
 
こんな素敵な展示会を開催してくださったプライス夫妻に感謝します。