ama-ama Life

甘い生活を目指しています。

映画「あん」 甘いだけではない、手間暇かかるのが人生

映画「あん」を観ました。河瀬直美監督作品、昨年亡くなった樹木希林さんの主演です。

 

最初、河瀬直美監督の作品か〜、と思うと、ちょっと気が引けました。以前、この監督の作品の何だったかを観て、途方もなくつまらなかったので、私好みではないなと思っていました。更に、その後の作品の情報を見る度に、好きじゃないと感じ、監督の人と成りがわかる様な番組を見聞きしても、この人ダメだわ〜、と思うのでした。

で、その監督の作品。

 

この作品、良かったです。良い出来でした。ちょっと河瀬直美監督を見直しました。

 

物語は、街の片隅にある小さなどら焼き屋を一人の男性が切り盛りしています。桜の満開のある人、アルバイト募集の貼り紙に76歳の女性が応募してきます。お断りしたところ、女性は自分で作った餡を持参して現れます。それを一口食べた男性は、この老女を餡作りに雇います。こうして、女性から男性に餡作りを伝授していき、いつの間にかこの店は行列が出来るまでの店になります。しかし、季節が秋に変わる頃、良くない噂と共に客足が遠のき、老女は店を去ります。彼女には辛い過去と秘密がありました。男性にも辛い過去と現実が、この店の常連客の女学生もまた鬱屈した毎日に向き合っていました。老女を訪ねた2人は、そこで老女の過去や思いを知るのでした。

 

こんな感じの話です。

主演の樹木希林さんはもちろん、どら焼き屋の店長の長瀬正敏も、友人の市原悦子さんもいい。どら焼き屋に現れた老女、徳江さんはただ外で働いてみたかったのだと思います。塀に囲まれて制限された環境から飛び出して、自分の好きな事を仕事にして、世間の人々と関わる、ただそれだけの事が徳江さんや施設の人々にとっては尊い事だったのでしょう。

働くとは、人間の尊厳に関わる問題です。

ストーリィは深く考えさせられるものですが、画像の美しさも見所。特に餡を煮る作業や、どら焼きの皮を焼くシーンの美しさと美味しそうな映像は素晴らしい。餡の材料である小豆に話しかけながら、小豆の話に耳を傾けながら餡を作る徳江さんの姿も微笑ましい。

人生は餡作りに似ているかもしれません。手間も暇もかかります。上手に煮えたと思っても、最後の甘みを加える段階で焦がしてしまったり、味付けを間違えたりすると、今までの苦労は水の泡。丁寧に丁寧に扱うことで、美味しい餡が出来上がります。お砂糖の甘みだけでなく、隠し味に塩を入れることも、甘味を際立たせる為に必要です。

今、塩味を感じていたとしても、やがて感じる甘味を更に味わい深いものにするでしょう。

 

良い作品を観ました。ありがとうございます。

樹木希林さんは特異な女優だなと感じました。年を取れば取るほど良くなる。まるで良いワインの様です。