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「メトロポリタン美術館展」 ゴッホの「糸杉」を見に行ってミレーに癒される

昨日、やっと楽しみにしていた「メトロポリタン美術館展」へ行ってきました。東京都美術館リニューアル記念、ということで力が入っているような展覧会と、とても楽しみにしていました。事前に前売り券も忘れずに購入。行った後で、公式サイトを見たら、もっとお得なキティーちゃんとコラボしたチケットが出ていました。知っていればそれにしたかったな。ま、取り合えず行ってまいりました。
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今回の展覧会のテーマは「自然」だとか・・・。古代から現代に至るまで、様々なジャンルの作品をたどりながら「自然とは何か」に迫る、とのことです。
 
そう謳っているだけあって、ホント、様々な分野からのアプローチで、これでもかこれでもかと色々なものにお目にかかれます。でもな、言ったら悪いけど、メトロポリタン美術館の膨大な収蔵品の中から、一つの展覧会をするために「メトロポリタン美術館ってこんな美術館です」という紹介をしたいな、じゃテーマを強引に「自然」ということにして、色々持っていってみようか、みたいな感じがしてしまうんですよ。第一「自然」って、けっこうざっくりしたテーマですよね。何でもあり、というか。得てして大美術館の展覧会にありがちな、広く浅く、といった感じがしました。
 
章立ては7章もあり
   第1章  理想化された自然
   第2章  自然の中の人々
   第3章  動物たち
   第4章  草花と庭
   第5章  カメラがとらえた自然
   第6章  大地と空
   第7章  水の世界 
 
それでも、それぞれで見た場合、なかなか興味深いコレクションではあるのです。強引に「自然」でくくらないで、もっと別の提示方法をしたら、もっとすんなりと楽しめたのでは、と思います。
 
今回の展覧会では、結構イスラム圏のものも出ていて、中々お目にかかったことがないので、とても興味深く拝観いたしました。いかに普段の生活で、イスラム圏というのがなじみが無いかがよく判ります。古い時代のものではエジプトのものが何点もあり、こちらも興味深かったです。通常の美術展では、まずお目にかかりそうも無いものたちです。むしろ博物館で、見かけるかも。
 
かつて2度ほどメトロポリタン美術館は訪れていますが、とにかく広くて収蔵数も多く、2度行ってもまだ全ての部屋を回りきれていない始末です。私はヨーロッパ絵画が好きなので、ついついそちらから回っていると、いつも時間切れになってしまい、エジプトのコレクションなどは駆け足で回ることになり、何だかよく判らないままに帰ってきます。つまり、今まで見落としていた、あるいは見ていなかった分野の収蔵品ということです。メトロポリタン美術館は、美術館と謳っている割に、博物館的なコレクションもあるように感じました。
 
第3章の「動物たち」では、メソポタミアやエジプトの装飾や実際に使っていた動物型の容器等が展示されていて面白い。ライオンの水差しなんて、ちょっと可愛いしレプリカがあったら欲しいかも。15世紀のイタリアのものでライオンの頭の兜というのがありまして、キンキンキラキラしているライオンの頭をかたどったものが兜になっているのですが、日本でも戦国武将の兜に色々派手な装飾をしていますが、きっと似たような目的とセンスなんだと思います。結構人間というのは時代が変わっても場所が違っても、同じような発想をするものなのかもしれません。
 
タペストリーや刺繍の作品も何点も展示されており、こういうのが出ていると、「あぁ、ヨーロッパの古い時代の展覧会なのね」と感じるのですが、それに混じって「花のアップリケのキルト」というのが展示されていて、「いや、まぁ、アメリカの美術館ですからね」と言う気分になりました。何だか不思議な気もしますが、これだけ長い年月と広い分野を網羅しようという主旨ですから、アップリケのキルトもありと言えばありですね。因みに、タペストリーや刺繍は古めかしいヨーロッパ的なデザインで、中々に素敵です。
 
さて、今回の目玉であるゴッホの「糸杉」ですが、93.4×74cmとサイズはあまり大きくありません。しかし、すごい迫力で見ていると胸が苦しくなってきます。印刷されたものの方が見やすいな、と思いました。実物は、絵の具が厚く波打っているくらいに塗られていて、糸杉もその根元を覆う草むらも燃え上がるように上に向かって伸びているのです。バックの空や雲でさえゴーっと音がしそうなほど止まっているのに動いている感じがします。実際の風景が動いているというよりは、描いているゴッホの胸の中に動きがあるのか、絵として描かれているのは糸杉なのですが、別のものが見えてしまうようで苦しくなってしまいます。いったいゴッホに何があったのか ? 晩年の作品ということですから、色々あった後だか最中だかなのかも知れません。イメージ 2
 
ゴッホはもう1枚出ていて、「歩きはじめ、ミレーに拠る」という作品です。こちらはゴッホが亡くなった1890年の作品、「糸杉」は前年の1889年の作品なのですが、まったく色彩も違って、むしろほのぼのとした感さえ漂っています。全体的に水色っぱく春先なのか明るい日差しの中、歩き始めた子供に「こっちこっち」とかがんで両腕を広げて受け止めようとする農夫と、子供を後ろから支える妻の姿が描かれています。ゴッホはミレーが好きで、ミレーの作品を元に描いたものですが、それでも十分に自分のものにしていて、見た瞬間ゴッホです。ゴッホは畑と花の咲いた木まで描き加えていて、幸せな家族の風景といった感じです。ものすごい情念のようなものを感じさせる「糸杉」とほのぼのタッチの「歩きはじめ、ミレーに拠る」と同じ人の作品でも大違いです。イメージ 3
 さて、今回私は「糸杉」をお目当てに行ったのですが、「歩きはじめ、ミレーに拠る」の隣に、ミレーの「麦穂の山:秋」という作品が展示されています。全体的に黄色っぽい絵なのですが、タイトルにもあるように秋の収穫を描いた絵です。ミレーの作品は割かし暗い絵が多いのですが、この絵はミレーにしては明るい感じです。大きな麦穂の山の手前で沢山の羊たちが草をはんでいます。麦穂の山の後ろは暗雲が立ち込めているのですが、奥行きのある構図といい、大きな麦穂の黄色い山と手前の羊たちという構図といい、とっても癒されました。この絵が黄色い秋を描いているのに対して、お隣は水色の春です。2枚を一緒に見ると対になっているようで、一興です。
 
今回、ターナーの風景画も出ていて、これはぐっと来ました。私はまったくターナーに対して興味がないのですが、それでもこれは面白い作品です。見イメージ 4た瞬間、ヴェネッツィアを描いたのね、と判るのです。
光がピカピカしていて、人々のざわめきすら聞こえてきそう。ちょっとターナーを見直したかも。
 
いつもは山ばっかり描いているセザンヌの描く海の絵「レスタックからマルセイユ湾を望む」やモネの「マヌポルタ」という海の絵もあります。
 
個人的には面白い作品を見つけました。それはピーテル・ブリューゲル(父)の孫のヤン・ブリューゲル ( 「花のブリューゲル」と呼ばれる次男のヤンの息子 ) の作品が出ていました。「冥界のアエネアスとシビュラ」という小さい作品ですが、ピーテル・ブリューゲル (父) の作品の流れを汲んで、魑魅魍魎が出ているような作品です。私、ピーテル・ブリューゲル ( 父 ) の孫のヤンの作品って、見るのは初めてかも・・・。もっとも、メトロポリタン美術館ピーテル・ブリューゲル ( 父) の
「刈り入れ」を持っているのですから、今回貸してくれても良か
ったのにね・・・なんて勝手なことを思ったりします。
 
さっと見て回ると1時間で十分ですが、じっくりソファーに座ってミレーを眺めたり、ゴッホを眺めたりしていると2時間近くは必要でした。
 
そして、グッズ・コーナーが良くて、展示品に関するもの以外にニューヨークらしい品々が色々出ていて、そちらも楽しめます。
 
せっかくの機会なので、メトロポリタン美術館の世界を楽しみにお出かけください。広く浅くではあっても、なんとなくメットの世界観が分かると思います。そして気に入ったら、実際にニューヨークに行って、メトロポリタン美術館を訪ねてください。一生に一度は行ったほうがいい場所だと思います。