ama-ama Life

甘い生活を目指しています。

「奇跡のクラーク・コレクション」 今まで見たことがないルノワール

ずっと行こうと思っていた「奇跡のクラーク・コレクション」を見に三菱一号館美術館に行ってきました。
 イメージ 1
ところで、「奇跡の・・・」とはいったいどういうことかしら ? と、サイトを調べてみたところ、3つの奇跡ということで、
1. 極めて貴重なコレクションが日本に来る奇跡
2.  クラーク夫妻が貴重な作品を収集できた奇跡
3.  日本人が眼にしていない奇跡
ということだそうです。
 
今回ルノワールだけで22枚、あとは印象派を中心に、その前とその後に続いた画家たちの作品が紹介されています。計73点。
 
今回の見所はルノワールで、特にポスターにも使われている「劇場の桟敷席」、「鳥と少女」「金髪の浴女」が主催者側が一押しの作品のようです。
 
しかし、私は「テレーズ・ベラール」という13歳の少女の肖像画にぐっと来ました。深い青というより紫がかった暗いバックから、白く滑らかな肌、ピンクの頬、ブルネットの長い髪、白いレースと深いブルーの服、節目がちでいながら凛とした感じの少女の姿が立ち上がります。美しい肖像画です。少女の表情の深さと容貌の美しさに目が釘付けになります。
 
目玉の「劇場の桟敷席」は、いかにもルノワールらしい表情の女性がこちらを見ています。その妹である少女は背中を向けて横顔が見えます。そして、最初は描かれていた人物がバックに塗りこめられた後もよく分かるのです。それでも、社交の場で華やぐ女性の表情や衣装には当時のその場所の歓声が聞こえてきそうです。
 
ルノワールが展示されている部屋は2つありまして、それ以外にも風景画のところにルノワールの作品も展示されています。最初のルノワールのお部屋は入ってすぐのところに「自画像」、これはかなりタッチが違います。左回りに「フルネーズ親父」「自画像」「若い娘の肖像」「うちわを持つ少女」「かぎ針編みをする少女」「劇場の桟敷席」「テレーズ・ベラール」「モネ夫人の肖像」「タマネギ」「皿のリンゴ」と11点が部屋をぐるつと飾ります。ものすごく豪華です。真ん中のベンチに座って、ルノワールの作品の中に身を置くというのは、なんとも贅沢です。
 イメージ 2
もうひとつは最後の部屋がルノワールで、そちらには「鳥と少女」「金髪の浴女」があります。「鳥と少女」は「アルジェリアの民族衣装をつけたフルーリー嬢」という別名があるとおり、異国情緒漂う衣装を着けて、なんだか嬉しそうな自慢そうな少女の姿が愛らしく、その笑顔はさすがにルノワールだけあってほわ~んとしていて、見ていて嬉しくなってしまう絵です。ルノワールの作品は、見ていて幸せな気分になれるのがすごいと思います。
 
今回、「タマネギ」や「シャクヤク」といった静物画もあり、私は「タマネギ」がとても気に入ってしまいました。ルノワール静物画というのは、私初めて見たかもしれません。通常、ルノワールは人物画で見るものだと思っていたので、新鮮でした。風景画もあって、「シャトゥーの橋」が好きです。風景画を描いても、色がルノワールの色で、明るく美しく気分がぱっと晴れるようです。ああいう美しく明るい風景画を居間にかけられたら素敵です。もっともかける居間を先に確保しなくてはならないのですが。
 
とにかく、ルノワール22点は見物です。本当に初めて目にするものばかりです。
 
印象派のほかの画家の作品では、ピサロの作品が沢山来ていました。ピサロのお部屋でじっくり見られます。点描で描かれた「エラニー、サン=シャルル」は美しい ! それまでのピサロのタッチと違います。「道、雨の効果」もしっとりしていてよい出来です。丁度部屋の反対側に同じ道を描いたらしい作品があって、首をキョロキョロして見比べるのも楽しいです。
 
シスレーの風景画「モレのロワン川と粉挽き場、雪の効果」はクリスマス・カードにいいような風景画だし、「ビ付近のセーヌ川堤」では緑の木立の中をグレイの服を着た少女 ( ? ) がこちらに向かって歩いてきます。それがまるでアン・シャーリーを彷彿とさせます。静物画の「籠のりんごと葡萄」はなかなか良いです。
 
モネの風景画が何枚も来ています。しかも1枚も睡蓮はなし。モネと言えば睡蓮の池をイメージしてしまいますが、睡蓮以外のモネというのもかなり色々ありました。「エトルタの断崖」は、別バージョンだと思うのですが、同じ場所を描いたと思われる作品を以前見たことがあって、その時も、モネってこういうのも描くんだ、と思ったのを記憶しています。「小川のガチョウ」の光が集まってきらきらぴかぴかしている風景のかわいらしさ。ガチョウが手前の小川に入ってくるところです。
 
印象派の前の時代としてバルビゾン派のコローやミレーの作品も展示されています。コローやミレーを先に見て、印象派に突入していくと、実際には展示している部屋が変わるのですが、やはりかなり印象派の出現というのはショックですね。色の鮮やかさが全く違って、なんだか突然白黒画面から天然カラーになったような感じを受けます。ミレー、いいですよね。でも、なんだかとても地味に見えてしまいます。
 
ミレーの作品で「編み物の稽古」「羊飼いの少女、バルビゾンの平原」という作品があって、どちらも編み物をしているのです。「羊飼いの少女」なんて、羊の群れを連れていて、犬が働いている間に立ったまま靴下を編んでいます。ルノワールの「かぎ針編みをする少女」は室内で服がずれ落ちるのもそのままに一心不乱に編んでいますが、ミレーの方は屋外で労働中に編んでいます。時代が変わってルノワールの頃は、都市生活者が力を付け始めた時代なのでしょうか。着ているもののお洒落さも違うし、とにかくミレーの頃の農村は必死に働いています、という時代だったのでしょう。そんな中でも時間を惜しんで編み物をする、というのがなんだか意地らしいです。
 
印象派以後では、ロートレックの油彩が2枚出ていて、これも中々見ものです。「待つ」という女性の後姿を描いた作品は、後姿が語っています。ロートレックはポスターの版画のイメージが強いので、油彩を見ると新鮮です。
 
それにしても、確かに今回初めて見る作品ばかりだったと思います。印象派は日本で人気が高いので、展覧会も多く、結構色々見ているはずなのですが、そういう意味では確かに奇跡です。
 
このコレクションの持ち主であるクラーク夫妻がコレクションする時のコツを語っているボードがあるのですが、「自分がいいと思ったものを買いなさい。他人の評価は気にしてはいけない」というようなことを言っていました。自分の気に入ったものを集めていった結果がクラーク・コレクションなんだそうです。同じ話をプライス・コレクションのプライスさんも言っていました。「自分が気に入ったものだけ集めました」と。
 
クラーク・コレクションの持ち主であるクラーク美術館はニューヨーク・ボストンから車で3時間行った米国マサチューセッツ州ウィリアムズタウンにあるそうです。そこまで行くのは大変なので、こうしてあちらから来てくれている間に見に行くことをお勧めいたします。印象派が好きな方は必見の展覧会です。普段あまり絵を見ないという方も、この機会にルノワールの幸せ感漂う柔らかな光線を浴びに出かけることをお勧めいたします。満足感が高いですよ。
 
印象派以前