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心に白い馬が駆ける「東山魁夷展」

今日は仕事がお休みだったので、仕事の相談に行った後、六本木まで足を延ばして、12月3日まで国立新美術館で開催中の「東山魁夷展」に行きました。

実は、私は全く東山魁夷と言う画家に興味がありませんでした。今年、生誕110年記念で大々的に回顧展があるのは知っていたのですが、当初行く予定がありませんでした。先日、たまたま見ていたテレビ番組で、この展覧会の紹介があり、唐招提寺の障壁画が展示されると告げていました。東山魁夷って水墨画も描くの?東山魁夷水墨画を見てみたい気持ちでいっぱいになり、走って行ってきました。

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私の中の東山魁夷のイメージって、なんともあやふやなものでした。別の展覧会に行った際に、東山魁夷の作品が飾られていたのですが、それを見た年配の女性が「この人の絵って、いつもこんな感じよね。メルヘンっぽいって言うか」と、連れの女性に言ったのです。そうか、東山魁夷ってメルヘンっぽいのか?思いもやらない意見に、驚きました。

東山魁夷って?という疑問がいっぱいで、今回色々見られるといいなとの期待もありました。

今回の展覧会の構成は以下の通り。

自然と形象 雪の谷間
自然と形象 秋の山
自然と形象 早春の麦畑
1章 国民的風景画家
2章 北欧を描く
3章 古都を描く・京都
4章 古都を描く・ドイツ、オーストリア
5章 唐招提寺御影堂障壁画 間奏 白い馬の見える風景
6章 心を写す風景画

今回の展覧会で、まず東山魁夷の作品のサイズの大きさに驚きました。その画法も水彩なのか油彩なのかも分からず、だいたいにおいて日本画なのかも分からないのです。ただ、今回の展覧会の1章として「国民的風景画家」とあって、あっ、風景画家なのかとヘンに落ち着きました。そういえばどれも描かれているのは風景でした。あー、東山魁夷って風景画家だったのね~、と今更ながらに知ったのでした。

今回は東山魁夷の代表作とも言える「道」「残照」「緑響く」も出ています。

東山魁夷が風景画家だと今回初めて認識したわけですが、何故今までそう受け取らなかったのかと言うと、風景の切り取り方が普通と違うからだと気がつきました。

「道」なんて、真ん中にドドーンと一本道が描かれているのです。こういう絵って、ありそうで無いのでは。ついつい周りに並木を描いたり花を描いたりしちゃいそうなのに、ただ道とその周りは草っ原です。

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「秋翳」なんて、紅葉で赤く染まった山の上の方だけドンっと描かれています。「花明り」は手前真ん中に満開の桜、バックに月に照らされて浮かぶ木々、「冬華」は雪で白くなった木がドンっと1本真ん中に描かれています。

主張の強い描き方ながら美しくもあります。それが風景画だとは気づかなかったくらい、木や山の存在感があります。

「2章 北欧を描く」の「映像」の水に映る木の姿は暗い色合いながら、北欧の寒さが硬質な美しさに繋がっています。この辺りから水に映った風景画が増えてくる予感を感じさせます。全体的に白い「冬華」も美しい。

お待ちかねの唐招提寺の障壁画は素晴らしい出来です。「濤声」の襖全体が海の波の水色というのも画期的。

私が一番好きなは「山雲」で、まるでそこに裏山が迫っているのを見ているようです。雲がたなびく姿の美しさ。墨で描かれているのか、緑が入っているのか、色味がよく分からないのですが、「紙本着色」とあるので水墨画では無いようです。

唐招提寺の障壁画は2期に分けて納められたそうなのですが、2期目の方が墨画のようです。鑑真和尚の故郷なのかと思われる中国の風景が描かれています。置かれているのがお寺という場所柄か、墨画はしっかりと馴染み、その前に身を置くと落ち着きます。

こんな障壁画のある部屋で座っていたい。唐招提寺に行くとそれが叶うのでしょうか?唐招提寺は修復に入るので、これから7年ほど、唐招提寺での展示はないのだとか。東山魁夷画伯、良い仕事をしているなとつくづく思いました。

東山魁夷唐招提寺の障壁画の依頼を受けてから、仏教周りの事を色々調べたそうです。昭和47年に描かれた作品のみ白い馬が描かれているのだとか。「緑響く」にも描き込まれている白い馬。この白い馬は、祈りの象徴だそうです。
白い馬が描かれている「春を呼ぶ丘」の左側が緑色、右側が茶色の大地の絵も美しく、春の空気感が漂います。

最後の「6章 心を写す風景画」まで見てきて、東山魁夷の描く風景画は実際の風景というより、心象風景なのかもしれないと思えてきました。だから普通の風景画と切り取る部分が違うのだろうと。

行くまでは全く知らなかった東山魁夷と言う画家が、展覧会の後では身近な存在になりました。

美しいものをいっぺんに沢山見た気がします。

東山魁夷の絵を見る人の心にも白い馬が駆けるのかもしれません。

あと僅かで終わりです。平日なのに猛烈に混んでいますが、見て損はない展覧会です。見に行く事をお勧め致します。