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土方歳三を描いた『ヒトごろし』

昨日までの夏日はどこへやら、今日は雨降りの上、2月の陽気に逆戻り。突然10℃も気温が下がると身体がついていけません。

 

京極夏彦の『ヒトごろし』という小説を読みました。上下巻1500ページくらいの長編。幕末に咲いた徒花、新撰組の来し方行く末を「鬼の副長」と呼ばれた土方歳三歳三の目を通して描いた新撰組始末記。

とにかく歳三が冷徹で論理的、組織を作る才能に秀で、人を動かし、裏工作の手腕の見事な事。この小説の土方歳三は「誠」だの「忠義」だの、そういったお題目はどうでもよく、特に武士になりたいわけでもなく、ただ人を斬り殺したいが為に、殺人を犯しても罰せられないシステムとして新撰組を作る。頭が良く、剣の腕も立ち、人を纏める力もあり、と中々の才能に溢れているのに、それを人殺しにだけ使おうとしているというキャラクター。

新撰組を語る上で避けては通れないエピソードも、歳三の視点から描かれているので裏工作のあれこれが描かれ興味深い。土方歳三をヒトを殺したいという暗い欲望を持つニヒリストとして描く事で、幕末の動乱期の異常性が際立つ。作者はヒトごろしの歳三を描きながら、更なる規模のヒトごろしである戦争の馬鹿らしさを、これでもか、これでもかと糾弾する。

通常イメージされている新撰組の物語とはかなり違うものの、これは力作。幕末もの、新撰組ものを読む際にぜひ加えたい一冊です。

 

色々書きましたが、とにかく面白いのでおススメです。読書の満足感が味わえます。

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