ama-ama Life

甘い生活を目指しています。

宮部みゆき「おそろし」で涼む

暑い夏に対抗すべく、先日から「怪談で涼もう」という私的キャンペーン期間中なのですが、今度は宮部みゆきの「おそろし 三島屋変調百物語事始」を読んでみました。
 
結構本は読んでいる方だと思うのですが、なんと宮部みゆきさんの作品は今回初めて。ドラマや映画になっている作品が多いので、なんとなく読みそびれていたのですね。
 
さて、「百物語」とついているのですから、怖いんでしょう、怪談でしょう、ということで読みました。
 
●簡単にあらすじ●
江戸の神田の袋物屋三島屋では主の伊兵衛の趣向で百物語を聞き集めている。一回につき一人のお客が訪れ、わが身に起こった怪異のお話をする。その聞き手は、伊兵衛のめいのおちかだが、おちかにも人に言えないような暗い忌まわしい過去があり、自宅を離れ三島屋に身を寄せていた。おちかに話を聞いてもらった人たちは、皆何かを吹っ切れたように元気になって帰っていく。
やがて、百物語を介して知り合ったこの世の人とあの世の人たちが、おちかに助けを求めてきた。人の魂を力にしているお屋敷がおちかを呼んでいるのを感じ、またそこに囚われている亡者たちを解放すべく、おちかは屋敷にいどんでいく。
 
 
一言で言って面白かった。最初、まず宮部みゆき初心者の為、文章が読みづらくて、なかなか進まなかったのですが、第一章を読み終わってからは、ガンガン読めました。怖い、というより切ないお話ですね。思わず亡者になってしまった者、自責の念から命を絶ったもの、巻き込まれてしまって亡くなった者・・・など、あの世にきちんと行ききれず、あの世とこの世の境を漂っているような者たちのお話。
 
おちかの身の上話を含む4つのお話の総まとめのように最終話がありまして、上手い構成になっています。出てくる幽霊が、いい人ばかりで、怖いというより死して尚現世に生きる人の心配をしていたり、自分のせいで苦労した弟にわびていたり、と泣けてきます。事件は仕方のなかったこともあろうと思えるのに、幽霊たちは自責の念にかられて詫びてばかり・・・。
 
結局怖いのは怪異ではなく恨んだり妬んだりする人の心ということでしょうか。このお話に出てくるおちかの周りの人たちは皆優しいいい人ばかり。その点はほっとします。
 
 
このお話で一番怖いなと思ったのは、ただ出る幽霊ではなく、人の身体を乗っ取って憑く怪異です。「凶宅」「魔鏡」の魔に魅入られた人がどんどん変わっていく様は恐ろしいですね。
 
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作者が女性だからなのか、主人公が17歳の女性だからなのか、曼珠沙華の赤い花やあでやかな着物や帯、翠豊かな武家屋敷のお庭など、色鮮やかな描写が多く、薄灯りの中に漂っているような亡者とのコントラストが効いていて、勝手に想像してみるのも楽しかったです。
 
この小説には続編があるので、そちらも読んでみるつもりです。