9月7日(土) に、ブリヂストン美術館で開催中の「色を見る、色を楽しむ。」という展覧会に行ってきました。
今回の展覧会では、「色」をキーワードに、ブリヂストン美術館の約170点を展示。印象派から抽象絵画までをカバー。しかも、今回の目玉はアンリ・マティスの挿絵本「ジャズ」の原画20点と、新しくコレクションに加えたルドンのリトグラフ集「夢想」もお披露目とのこと。
「印象派以前」ということで、まずレンブラント。このコーナーではアングルやコロー、クールベ、ミレーが並び、色的にはどよんと暗い色使い。次の「印象派」は、たまたま展示されている作品があまりカラフルではないものの、本来「印象派」はもっと色彩が溢れているものをイメージするのでは。
「印象派とポスト印象派」では、全体的にはカラフルになってきてはいるものの、コレクションの色味がおとなしい作品が集まっている感じ。でも、その中で、セザンヌの「サント・ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」(1904-06) は昨年もこの美術館で見ているが、何度見てもいい感じ。モネの風景画が並ぶ中、部屋の一番隅にかけられている「睡蓮の池」は近くで見ていると何を見ているか分からないが、「サント・ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」の前に置かれた椅子に座ってみると、ホントに良いです。うっとり。この部屋にあるモネの作品の中では一番好き。夕暮れを写したピンクの蓮池の美しさ。ぜひとも至近距離で見るのではなく、少し離れて見て頂きたい作品です。
次は、今回の目玉の一つ、ルドンのコーナー。ルドンのリトグラフ作品は白黒で、カラーと言っても逆に色を廃した作品。作品自体小さいものの、その夢想的世界は訴えるものがあり、もつと点数を見てみたいと思いました。
「ピカソと20世紀美術」のコーナーでは、かなり地味目でシックなピカソの作品を見ました。デザインとしてはお洒落だなと思わせる「カップとスプーン」「ブルゴーニュのマール瓶、グラス、新聞紙」。今まで見たことも無いタッチの「生木と枯れ木のある風景」には、目をひきつけられました。マルク・シャガールの「ヴァンスの新月」という作品も展示されているのですが、シャガールの作品としては、これは私はあまり好きではないです。
そして、いよいよ「マティス」のコーナーです。このコーナーは今回の目玉である「ジャズ」の原画20点と、それ以外の作品が一部屋に展示されています。まず、「ジャズ」以外の作品は、マティスがいかにして「ジャズ」に辿り着いたか分かるような、年代別の作品の展示で、マティスの作風の変換が見て取れます。そして反対側の壁にはひときわ目に鮮やかな「ジャズ」の作品がずらっと並べられています。正直言って、「ブリヂストン美術館はこんなのも持っていたのか ! 」という嬉しい驚きがありました。なんということでしょう ! ものすごく新鮮 !! 「ジャズ」のシリーズの中でも今回の展示会のチラシやポスターにも使われている「イカロス」のなんとお洒落で洗練されていてぐっとくることか !! この色使い、形態、無駄の無い表現、現代的な作品だと思います。これを見に来たのです。これを見るだけでも、来た価値があろうというものです。そして、この展覧会のタイトルはまさにこの作品集のためにあるようなものです。
当初、約170点もの作品を見るのに、1つ1分でも約3時間必要だなと思い、休日に気合を入れて出かけたのですが、実質的には1時間くらいで見終わってしまいました。それと言うのも、以前にも見ている作品が多々あるからで、1つに1分もかからないからでした。もっと気楽に出かけてもよかったなと思いました。
ブリヂストン美術館は、都会の中にある美術館なのですから、会社帰りやお買い物のついでにフラッと寄って、美術品を眺めるという使い方が似合うのかもしれません。次回も、「こんなの持っていたのか ! 」と思わせてくれる展示会をお願いしたいです。
今回の展示会は、タイトルは「色を見る、色を楽しむ。」というものでしたが、総体的に色が溢れているというわけではなく、むしろ色は控えめだった印象を受けます。他のコーナーの色を抑えることで、マティスの「ジャズ」がより鮮やかに感じられると言う演出だったのでしょうか、たまたまコレクションが比較的おとなし目な色彩のものばかりだったのでしょうか。
とにかく、今回は、マティスに満足でした。