ama-ama Life

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今までとは違うミュシャ 「ミュシャ展」

今日が最終日なので、やっとのこと国立新美術館で開催中の「ミュシャ展」に行ってきました。

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なぜ、こんなにグズグズしていたかというと、混雑状況が尋常でなく、はたして本当に行くべきかと悩んでいたからです。

実は、私は今までミュシャって、イマイチ興味が無かったと言うか、アマアマできれいでかわいい絵だけれど、どこかイラストっぽくて、いちいち美術展で見なくてもいいかな位の関心しかありませんでした。ミュシャの絵の付いているクッキーの缶とかもらったら、そりゃ嬉しい、位の関心。

今回、日本とチェコの国交回復60周年記念のイベントの一環としてミュシャの「スラブ叙事詩」全20作のチャコ国外初公開として、この展示会なわけです。こんなにいっぺんにまとめて見られるのは今回限りかも、と思い出かけました。

混んでいるとは覚悟をして行きましたがチケットを持っている人の入場の列が「70分待ち」とのこと。10:15に最後尾に並びまして、もうそこは建物の外に蛇行していました。会場に入れたのが10:25だつたので、やはり70分待ちでした。時間が経つにつれ、待ち時間は長くなったようです。

さて、会場に入ると、もうすぐにドド~ンと「スラブ叙事詩」の1枚目が目に飛び込んできます。「スラブ叙事詩」はチェコスラブ民族の伝承・神話・歴史を描いた全20作で、どれも巨大です。今回の展示では、出展目録が気が利いていて、会場マップと「スラブ叙事詩」の各作品の画像とサイズ、タイトルがついています。更に、「スラブ叙事詩」以外のコーナーとして、おなじみの画風の展示が4部屋、映像コーナーでは13分くらいのミュシャが「スラブ叙事詩」を描くに至ったミュシャの人生を紹介。「スラブ叙事詩」の一部のコーナーでは写真撮影もできます。

行って良かった。正直言って、ここまでミュシャが良いとは思っていませんでした。私たちが一般的に「ミュシャ」と言われてイメージする優美なアールデコ風ポスターのような作風とはまったく違ったミュシャがそこにはありました。こんなのも描けるのだ、とちょっと驚き。

総体的に色が淡いような作風ですが、そこには戦争の悲惨さや民族自決の誇り、宗教戦争の不毛などが描かれています。戦争は勝っても負けてもなんともやりきれない事態で、民衆の怒りや悲しみ、恐れなどが描かれています。こちらをきつい目でにらみつける女、子供を抱いて途方にくれる若い母親、敵方であるドイツ兵の白いマントに横たわる遺体、倒れた馬、散乱する家財道具・・・。戦争の悲惨さは見ているこちらの心をえぐります。宗教によって改心した娼婦たちや、熱心に指導者の説教に聞き入る人たちなど、チェコという国がこんなにも宗教戦争に翻弄された国だったとは知りませんでした。民族自決の戦いには躍動感が、支配下に入るように迫られ怒りのあまり椅子を倒して立ち上がる王の姿などは、臨場感があります。背中を向けている人が多い作品では、見ている私たちもその場に一緒に参加しているようだし、こちらに顔を向けている人はなにやら訴えかけています。そんなあれこれが20作もあり、とにかく圧倒されました。

どの作品もドラマチックで、見ていてちょっと辛いストーリーが感じられるのですが、もちろんチェコスラブ民族にとってよかった事も描かれています。その中で「イヴェンチツェの兄弟団学校」という作品は、右側で聖書の印刷を行っている様子が描かれています。左側の目の不自由な老人に聖書を読んでいる青年は若き日のミュシャがモチーフなつているそうです。

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「イヴァンチツェの兄弟団学校」部分

神話や伝承を扱った作品では、コラージュの様な手法で、それはそれで面白く、「神話だしね」「伝承だしね」と見る方にも伝わってきます。作品全体を通して、一大スペクタクルが繰り広げられている感があります。

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「ロシアの農奴制廃止」部分

「スラブ叙事詩」のパートだけで、20作品を見るのに約1時間。「ミュシャアール・ヌーボー」「世紀末の祝祭」「独立のための闘い」「習作と出版物」の4コーナーと映像を見て、お土産コーナーをチェックして、トータルで2時間ちょっとかかりました。

最終日でしたが、行って良かった。新しいミュシャを発見した展示会でした。