山種美術館は初めてで、規模も判らないし、場所も不案内なので、ちょっと多めに時間をとって出かけました。
さて、「ボストン美術館 浮世絵 名品展」です。あの~、一言で言って、人が多すぎる !! とにかく大混雑です。平日の午後だと言うのにこの混みっぷりは、いったいどうしたことでしょう。年配の方が多いです。
そして狭い ! 狭すぎる !! 日本の美術館って、狭い所が多い。そこにごちゃごちゃと人・人・人。四角い絵が四角い状態で見られないのです。
あとは、あのイヤホン・ガイドですか ? あれって、きっと日本人の性格にすごくあっていると思う。でも、あれをつけている人って、一つ一つの絵の前に陣取って、案内が終わるまで動かないから、そこで人がたまってしまいます。どうしてそんなに解説が必要かな~ ? 見て、好きっとかいいなとか、自分で感じられれば良いのではないの ? そんな専門家の解説ばかり当てにしなくても。
あっ、文句ばかりになってしまいました。
展覧会の内容は第一会場と第二会場があって、第5章から構成されています。第一会場の第1章は鳥居清長、第2章は喜多川歌麿、第3章は東洲斎写楽、第4章は「黄金期の三大絵師をとりまく大家たち」と称して、三人と関係の深かった後進たちや他の絵師の紹介、第二会場は第5章で版本と肉筆画が展示されています。
浮世絵は好きで、ボストン美術館展は以前にも行ったことがあるのですが、今回も保存状態の良い作品の里帰り展示会です。解説によると、今回の作品は、ボストン美術館に収蔵されてから初めての里帰りになるものがほとんどだとか。今展覧会以後はボストン美術館でも5年間は展示されないそうです。
明治初期の動乱期に異人さんに連れられてアメリカへ行ったものの、「まぁきれい」とか言われて大切にされながら、お屋敷の奥深くでの生活を余儀なくされ、客の前にも姿を現すことも無い、日本美人の嫁みたいではありませんか。その嫁が、年もとったし、里帰りを許されて、はるばるやってきたと言うことですね。
鳥居清長は今まであまり興味が無かったものの、今回じっくりと鑑賞。はぁ、美しいですね。本当、美人画という感じです。華がある。当時のファッション・カタログらしいものもあって、興味深いです。花魁の打ちかけって、すごいデザインですね。孔雀の刺繍らしきものでは羽が着物地からフサフサと突き出ている様が描かれているし、葡萄の柄では、葉っぱが立体で縫い付けてあるらしい。美人画の他に、歌舞伎役者が演目を演じているところ、とか、子供の遊びのシリーズもあって、楽しめます。
歌麿は今までも沢山見てきたので、安心して見られるという感じです。でもでも、発見が !! 歌麿って、すごいテクニックです。きものの柄とか、煙の表現とか。黒い着物だと思ってみていたら、下から見上げるようにして見ると
柄が浮き上がって見える作品があって、もうびっくり ! 歌麿、恐るべし !
当時のブロマイドのような美人画だけでなく、煤掃きや台所仕事など、江戸時代の生活の様子を描いたものもあり、コミカルな作品もありました。庶民の美女が夕涼みをする姿など、遊里や御茶屋さんなどの美人画だけでないところも、題材にしています。
そして、絵の一枚一枚に絵師と版元の名前が入っているのです。「おや、あのマークは・・・」とまず気づいたのは、昨年見た蔦谷重三郎のマークです。で、よく見ると、各版元の名前なりマークなりが入っていて、歌麿がいかに売れっ子だったかが伺えます。版元の印を確かめるのも楽しいですよ。
そして写楽。
「これは好きか嫌いかはっきり分かれるよね~」と大声でのたまっていた男性がいました。
このコーナーでも昨年の「蔦谷重三郎展」と同じ作品が何点か展示されていました。不思議と、帰宅してからチェックしてみると、奈良県立美術館収蔵のものとボストン美術館収蔵のものが同じようです。因みに清長の子供を描いたシリーズ「子宝五節遊」の5枚は同じものがサントリー美術館に収蔵されています。
歌川豊国の「六玉川 調布の玉川」という作品が面白かったです。美人が6人描かれているのですが、3つのシーンに2人づつ。布を洗っているのか、それぞれのシーンを川の流れがつないでいます。
第二会場では肉筆画が展示されていますが、とにかく狭い部屋に人がひしめき合っているので、ゆっくりとかじっくりとかは見られません。でも、美しい掛け軸になっていたり、当時の本だったりしますので、是非見たいコーナーです。
楽しいけれど、くたびれました。次回、山種美術館に行く時は、1Fのカフェも利用したいと思います。
「ボストン美術館展」の前のポスター。