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「真珠の耳飾の少女」に会いにリニューアルした東京都美術館へ

オランダのマウリッツハイス美術館フェルメールの「真珠の耳飾の少女」は「girl」と呼ばれているそうです。現在改装中のこの美術館のサイトに行ってみると、「girl went to Japan」とあります。「あの娘は日本に行ったよ」という感じでしょうか。「girl」はマウリッツハイス美術館では一番人気らしく、言わば美術館の看板娘とでもいう存在でしょう。
 
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待望のフェルメールの「真珠の耳飾の少女」を含むマウリッツハイス美術館展が6月30日より、リニューアル・オープンされた東京都美術館にて開催中です。本日は月曜日ですが特別に開室するとのことで、早速行ってきました。
 
昼頃に到着。見終わる頃にはかなり混んできていました。まだ3日目なのに。
 
さて、この展覧会、すごいのはフェルメールばかりではありません。レンブラントだって6枚も来ちゃっています。日本ではこのところずっとフェルメール・ブームなので、なんとなく当て馬的扱いのレンブラントですが、彼の作品の素晴らしさは変わりません。ヴァン・ダイクもヤン・ステーンもフランス・ハルスもデ・ホーホもヤン・ブリューゲル( 花のブリューゲル ) も、ルーベンスだって来ちゃってます。オランダ絵画と言った時に集結するような面子はとりあえず皆来ているようです。数は48枚と多くはありませんが、内容は中々素晴らしいです。
 
構成は6つの章から成されています。
   第1章 美術館の歴史
   第2章 風景画
   第3章 歴史画 ( 物語画 )
      第4章 肖像画と「トローニー」
   第5章 静物
   第6章 風俗画
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第1章はあまり興味が無いもので、どんどん見て進んでいきます。第2章もあまり興味がないので、どんどん進んでいきました。私としてはあまり興味がないものの、風景画ではオランダ風景画で有名な画家ヤーコプ・ファン・ライスダールの「漂白場のあるハールレムの風景」「ベントハイム城の眺望」、ヤーコプの叔父さんでその時代の有名な風景画家だったサロモン・ファン・ダイスダールの「帆船の浮かぶ湖」、パウルス・ポッテルの「牧場の牛」が並んでいます。品揃えはよいのでは
と思います。何だかゴブラン織りのような風景もあったりしました。
 
第3章は見所満載です。しょっぱなにヤン・ブリューゲル ( 花のブリューゲル ) とヘンドリック・ファン・バーレンの共作「四季の精からの贈り物を受け取るケレスと、それを取り巻く果実の花輪」という作品が出てきますが、お互いに得意な部分を描きましたということなんでしょう。こうもはっきりと二人で描きましたというのはあまりお目にかかったことがないので珍しい作品だなという印象を受けました。好きかと尋ねられると、いや、あんまり・・・ではあるのですが。
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続いてはルーベンスの「聖母被昇天 ( 下絵 ) 」でして、「フランダースの犬」でネロが亡くなるアントワープ大聖堂に架けられている大画面の作品の下絵だそうです。納品した作品の方は、工房のお弟子さんを沢山使って描いたらしいのですが、発注主に見せる下絵はルーベンス本人がささっと描いて「こんな感じでいかがでしょう ? 」と見せるらしいのです。下絵といってもそこはルーベンス、いい出来です。これがそのまま作品でもおかしくない。私はいまいちルーベンスというとありがたみがない
ように感じていたのですが、この下絵を見て、やっぱりすごく上手いんだなとヘンに関心してしまいました。ウィーンの美術史美術館で巨大なルーベンスの絵をこれでもかこれでもかと見てしまったのがいけなかったのかもしれません。豊満でピンクな肉体をした女性たちが大量に描かれているイメージだったのですが、この人はそれだけでは無いんだなと認識いたしました。実際、次の章に出てくる肖像画でも、落ち着いた筆さばきでその人物をよく表しています。
 
ルーベンスに続いてはレンブラントが2枚。「スザンナ」と「シメオンの賛歌」です。
「スザンナ」は水浴していると好色な老人に物陰から盗み見られているというお話
だったと思います。確か老人は2人だったはず。スザンナはイメージ 4明るく光を当てられた
ように描かれていて、老人たちは物陰に潜んでいるので暗くてよく見えない構図になっています。何やら視線を感じたらしいスザンナが思わず衣類で身体を隠そうとしている一瞬を捉えた作品で、スザンナの恥ずかしがっているような困惑しているような表情が絶妙。作品自体は割りと小さめです。色々な画家が描いているので見比べるのも面白いですよね。
 
「シメオンの賛歌」は、これも割りと小さいですが、いいですね。気に入りました。キリストが神の子であると告げられるシーンらしいのですが、キリストを抱きかかえている老預言者シメオンの顔の下辺りから光に包まれたキリストによって光が出ているような描き方で、そのあたりがまばゆい光にあふれている構図です。周りは暗い色で、物語の雰囲気を盛り上げます。レンブラントが比較的若い頃の作品だそうです。
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つぎは、アーレント・デ・ヘルデルの「シメオンの賛歌」ですが、サイズも大きいし構図もタッチも全く違うので、見比べるのも一興ですね。
 
最後はフェルメールの「ディアナとニンフたち」です。フェルメールが20歳頃に描いたらしいのですが、後年の作品とは全くタッチも違います。私的にはイマイチです。つまりフェルメールはどんどん上達して、自分の作品世界を形作ることに成功したということでしょうか。若くて、迷ったり悩んだりしていたんでしょうね。
 
第4章はこの展覧会のハイライトです。まず、特別コーナーに今回の目玉の「真珠の耳飾の少女」です。その一枚を見るために蛇行した行列が出来ていて、そろりそろりと進みます。最前列で見なくてもいい人は、その列の後ろ辺りから見えるのですが、作品自体が振り返ってものイメージ 6
言いたげな少女なだけに、人並みの中からみるとまるでパーティーなど
で知ってる少女に出会ったとか、お互いに秋波を送りあっているような感じに見えるのです。例えば「ロミオとジュリエット」のパーティーのシーンで、とか、なんかこんな表情しちゃわない ? と思うのです。
 
真珠の首飾りの少女」はあまり大きい絵ではありません。ついでに言うと、浮世絵の大首絵とでもいいましょうか、画面にバンっとアップです。バックにもなにも描き込まれていなくて、暗い色が塗ってあるだけ。でも、フェルメールのことを「光の画家」とはよく言ったもので、画面左側から光がさしており、顔にスポットライトが当たっているように見えます。その中でも、真珠の首飾りのきらめき、目、口といった細部に光を集めたような仕上がりで、バックの暗い色が効いて、少女が浮かび上がって見えるのです。この絵が人気があるのも分かりますね。すごく気になる表情だもの。衣装もブルーと黄色のターバンと黄色のジャケットのような服の色のコントラストが美しい。フェルメールはブルーと黄色が好きだったのか、大抵描かれている女性はブルーか黄色を纏っているように思います。この絵は「オランダのモナリザ」と呼ばれているそうです。
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次は安定した仕事振りのヴァン・ダイクの肖像画が2枚、フランス・ハルスが3枚、ルーベンス、ホーフェルト・フリンクと続き、ここから怒涛の「ザ・レンブラント」に突入です。まず、レンブラント工房の作品が1枚、そのあとは「笑う男」「自画像」「老人の肖像」「羽根飾りりある帽子をかぶる男のトローニー」と年代が違う肖像画が並びますが、レンブラントという人は何というかチャレンジャーですね。「自画像」と「老人の肖像」は年代が近いせいかタッチが似ています。晩年まで色々と実験を重ねていたそうです。「笑う男」は10cm×6cmくらいの小さな絵で、銅板に描かれているようです。何故そんなところに描いたのか不思議ですが、小さいのにタッチは伸びやかです。「羽根飾りのある帽子をかぶる男のトローニー」は襟の辺りに誂えられているらしい真鍮かなにかの輝きの描写が素晴らしく、先日「ベルリン美術館展」で見た「黄金の兜の男」の光の加減を彷彿とさせました。こういった反射している輝きの描写の見事さは、さすがレンブラントと言ったところでしょうか。
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第5章は静物画で、これもオランダ絵画では欠かせないジャンルですね。まず、ヤン・ブリューゲル ( 花のブリューゲル ) の「万暦染付の花瓶に生けた花」です。この人の花の絵は本当にうっとり。花瓶は中国製でしょうか、青っぽい色合いです。生けられている花はバラとチューリップでしょうか ? 控えめな赤とピンク、白の花が花瓶とよく合っています。このコーナーではカレル・ファブリティウスの「ごしきひわ」という小さな騙し絵風の作品が人気です。
 
第6章の風俗画ではヤン・ステーンが大きいのから小さいのまで3枚あります。小さいながら意味深な「牡蠣を食べる娘」、大画面の「親に倣って子も歌う」など民衆の普段の生活が描き出されていて、今も昔も民衆っていうのはあまり変わらないのだなと思わせてくれます。ピーテル・デ・ホーホの「デルフトの中庭」ではタバコを吸う男性の前でビールを飲む女性が描かれているのですが、この女性、召使いらしいです。豪快に飲んじゃってます。ヘラルド・テル・ボルフの「手紙を書くイメージ 9
女」はフェルメールの「手紙を書く女」と似たような作品で、この時代の絵画のテー
マで人気があったのかもしれません。
 
作品数が48枚と少ないので小1時間で見て回れます。私は最初にざっと見てから、特に見たいものや気に入ったものにまた戻ってそれだけじっくり見るのですが、会場が3つのフロアーに分かれていて、エスカレーターで移動します。「もう戻れないよ」と言っていた方がいましたが、エレベーターを利用して戻ってまた見る事ができます。心行くまで好きな作品を堪能できます。展示会場を出たところに、今展覧会のオフィシャル・サポーターである女優の武井咲さんが着た「真珠の耳飾の少女」の衣装が展示されています。今回の展覧会の為に服飾系学校の学生さんたちが復元プロジェクトで衣装を作成したのだとか。美しい衣装です。後ろの肩の辺りに費だが取ってあって、ふくらんだ袖になっています。展覧会だけでなく、こういったプロジェクトもあったりして力が入っているなと思いました。
 
お土産コーナーではオランダといえばミッフィーとばかりに「真珠の耳飾の少女」と同じ衣装のミッフィーも売っていました。
 
総体的に楽しい展覧会でした。そしてつくづく思ったのは、2014年にマウリッツハイス美術館の修復が終わったら、是非一度、マウリッツハイス美術館を訪れてみたいということです。小さい美術館ながら収蔵されている作品は充実していて、レンブラントの「テュルプ博士の解剖学講義」もあります。
 
真珠の耳飾の少女」をはじめ、今回の展覧会で出展されている作品の多くは、日本での展覧会の後はアメリカへ行くそうです。まさにワールド・ツアーですね。今回の展覧会は充実していてお勧めです。
 
 
開催中の東京都美術館
  ルーベンス「聖母被昇天」の教会にある方。下絵はもっと色がソフトで聖母の顔がとろけそうな表情。
  レンブラント 「スザンナ」。
  レンブラント 「シメオンの賛歌」。
  フェルメール 「ディアナとニンフたち」。
  レンブラント 「自画像」。
  ヤン・ブリューゲル ( 父 )   「万暦染付の花瓶に生けた花」。
   カレル・ファブリティウス 「ごしきひわ」。