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「黒死館殺人事件」 とてもヘン、ペダンチックな法水ワールドにようこそ

日本の推理小説には「三大奇書」というのがありまして、奇抜な、幻惑的なというニュアンスを有する作品のようです。「黒死館殺人事件」「ドグラ・マグラ」「虚無への供物」の3作品です。気になったので、最近ぼちぼち読んでいまして、先日「ドグラ・マグラ」を読んで、とても面白く、気をよくしたので、続いて「黒死館殺人事件」も読んでみました。
 
黒死館殺人事件」ですが、作者は小栗虫太郎。図書館で検索しようにも、「オグリ」か「コグリ」か分からない上、「チュウタロウ」だと思っていたら、なんと「ムシタロウ」ですよ ! 図書館の検索機ではカタカナ入力なのです。「オグリムシタロウ」で「コクシカンサツジンジケン」を検索したところ、1件ヒット。おぉ ! と、すぐにある場所に突進したところ、普通の小説の棚、「お」の所にチョコナンと1冊ありました。
 
それは早川ポケットミステリーというシリーズで、サイズが20cm×10cmくらいで、上下2段組み。332ページなので、ま、そんなに長くないわね、とばかりに読み始めて四苦八苦。
 
猛烈に読みづらい・・・。なぜかというと、旧字なので、漢字がなんて書いてあるのかよく分からないのです。ついでに漢字で書かれている名詞の脇にカタカナでルビが振ってあり、その頻度が途方も無く多いのです。以下の様な感じです。
 
臼杵耶蘇會神学林 うすきジェスイットセミナリオ
弦楽四重奏団    ストリング・クワルテット
書類綴り        ファイル・ブック
 
これ、結構辛いです。そこで、なんとか別のバージョンで出ていないか、なにせ昭和10年に出た作品なので、表記が古いのは仕方ないとしても、せめて当用漢字バージョンはないかと色々探しましたが見つかりませんでした。その間も、通勤の行き来にはこれを読んでいたのです。
 
そして、もしかして全集のようなものに、この作品が入っているかもと探し、「日本探偵小説全集」の6巻が「小栗虫太郎全集」なので、内容は分からないまま予約注文してみました。翌日届いて見てみると、きちんと「黒死館殺人事件」も入っていました。ついでにこちらは当用漢字。良かった、これで安心して読み進められる、と思った頃には、なんと旧字で読むのに慣れてしまいました。だいたい早川ミステリーで50ページくらいまで読んだあたりから、すっかりこの世界に慣れてしまい、どうとでもなる状態になっていました。さらに、この作品は著作権が切れていて、ネットでまるまる読めるのも分かりました。
 
それで、毎日毎日えんえん読み続けまして、すっかりどっぷり「黒死館殺人事件」の世界観にはまってしまいました。
 
かなりヘンな話です。一応ミステリです。主役の刑事弁護士である法水(のりみず)の繰り出してくる推理が、ペダンチックすぎて、事件自体が何であったのか忘れてしまいそうです。そして、よく推理小説である、地位は高いのに推理を自慢そうに披露していつも間違えてしまう刑事が出てきますが、この作品では法水の推理が鮮やか過ぎてうっとりさせられるものの、次の瞬間、その華麗な推理は裏切られて事件はますます深い闇の中に入って行きます。

正直言って、事件の本筋はどうでもよくなってきます。法水が次々繰り出す怒涛の知識がとても面白く、もっと聞いていたくなるからです。

お見立て殺人らしき図や、暗号、毒物、不気味な人形、不気味な造りの中世の屋敷、屋敷に住む不可解な人々、その一族の暗い歴史・・・、と、もう、これでもかこれでもかと怪しい材料てんこ盛りです。

トリックの説明はあるものの、分かったような分からないような。もう、そんな事はどうでもいいかと言う気分になってきます。

結果、とても面白い小説でした。読んでいる間は他の事は考えたくないくらい面白く、早く家に帰ってまとまった読書時間が取りたくて仕方なかったほどです。

今までの知らなかった作家ですが、色々な作品があるようなので、これから読んでみるのもいいかなと思います。

三大奇書」も残るはあと1作品です。続けて読みたいと思います。
 
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