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週末はトマス・クロムウェルと過ごす 小説『罪人を召し出せ』

ヒラリー・マンテルの『罪人を召し出せ』をついに読了。

これはヘンリー8世の右腕だったトマス・クロムウェルを主役に据えて、ヘンリー8世の時代のイギリスを活写した3部作で、第1部の『ウルフ・ホール』は上下巻、そこから第2部の『罪人を召し出せ』まで、読むのに何年もかかってしまったが、読み始めたらあっという間にだった。

第1部少年時代のトマス・クロムウェルが故郷を飛び出し、大陸で経験を積み、イギリスに戻った後^_^弁護士として頭角を現し、当時辣腕を振るっていたウルジー枢機卿に見出され、王宮の仕事を振り出しにヘンリー8世の有能なスタッフとして活躍するまでが描かれる。ここでは主人だったウルジー枢機卿が失脚し、非業の最後を遂げる過程や、ヘンリー8世の婚姻問題に発するヘンリーとローマ・カトリック教会との確執、王室の財政問題解消の為の修道院廃止、ヘンリー8世の最初の妻キャサリンと2部目の妻アン・ブーリンの水面下の戦いなど、エピソードが盛りだくさんで、トマス・クロムウェルがいかにしてトマス・クロムウェルになったか、約30年が語られる。

第2部は約1年間の出来事が描かれるが、その年はイングランドという国にとって過渡期になりそうな事件が立て続けに起こる。

第1部ではアン・ブーリンにやられっぱなしだったが、小さな綻びから、大事件へと発展。綻びを煽って大事件へ仕立てたクロムウェルの手腕。ヘンリー8世ジェーン・シーモアと結婚したいばかりに、アン・ブーリンとの結婚を無効にする為、いかにアンが何人もの男と浮気していたかが探られ、国王を騙した反逆罪として死刑が決行されるわけだが、その巻き添いになった数名の男達は、その昔、ウルジー枢機卿が亡くなった後、大司教を嘲笑した男達で、トマス・クロムウェルはこっそりと復讐もしている。たった一人の女(アン・ブーリン)を取り除く為の仕組みの大掛かりさ。作中、フランスの大使が呆れていたが、そこが多分イングランドなのだろう。

第2部ではアン・ブーリンを地獄に送り出したクロムウェルがそのキャリアの絶頂期へと駆け上っていく様が、第1部と対照的で、この第2部の為に第1部があったのかと唸らされる。

『罪人を召し出せ』というタイトルはあまりにも意味深で、ドキリとする。罪人とは一体誰なのか?トマス・クロムウェルなのか、ヘンリー8世なのか、はたまたアン・ブーリンか、如何様にも取れるタイトルだ。

思えばこの本は3回も年末年始に図書館から借り出し、結局読めずに図書館に返却したのだった。前作の『ウルフ・ホール』は上巻を読み終わって、続けて下巻、という時に、新型コロナウィルス感染症の関係で図書館が閉館されてしまい、下巻にたどり着くまで何ヶ月も必要だった。今、この春からマスク着用をしなくてよくなるというタイミングでやっと第2部を読了。なかなか第2部が読めないでいたうちに、第3部が既に出ており、すぐにでも読めますよと催促されているようだ。

物語は絶頂から凋落していくクロムウェルを追うことになりそうだ。分厚い第3部上下巻を、なんだかんだ言いながらも読んでしまいそうだ。

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