ama-ama Life

甘い生活を目指しています。

Bruegel ×3

ブリューゲルの話ばかりですが、まだまだブリューゲル
だって14枚もあるんです。
 
 
●The Procession to Calvary ( ゴルゴダの丘への行進 )
 
イメージ 1
 
 
 
日本語のタイトルで「ゴルゴダの丘への行進」とか「十字架を担うキリスト」と呼ばれる絵。
実物はもっと色鮮やかでした。web上では色などがよく判りませんね。ちょっと残念。
 
画面右手手前は悲しみにくれるキリストに近い人々。ピンクの尼僧服が聖母マリア。その左側に立って慰めているのが、洗礼者ヨハネ。その2人と共に泣きくれている女性が2人。片方がマグダラのマリア
このあたりの人々は信仰に篤い人々なのか、皆祈ったり、悲しんだりしている。その脇にある高い木の上に車輪のようなものが乗っているのは、当時、処刑した遺体をぶら下げるのに使ったものらしい。カラスがとまっている。
キリストと一緒に処刑される泥棒たち2人は馬車に乗せられている。手には小さな十字架を持っている。一緒に乗っている人 ( 役人? 僧侶 ? )が話しかけている。
それに比べて、真ん中あたりに描かれたキリストは大きな十字架を背負って、その重みにひざをついているところを、赤い衣の兵士?にせかされている。十字架の周りに集まった人々は手を貸そうとしているのか。
この行列は右手遠景に描かれた、人垣が円になっている所までいくのだろう。その左側には、遺体をぶら下げる木がいくつも並んでいる。その更に右側奥には絞首刑台が見える。そのあたり、空はどんよりと曇っている。
 
ブリューゲルの生きていた頃のフランドル地方では、死刑執行はお祭り騒ぎのようなイベントだったらしい。
画面全体から、部分部分でちぐはぐな感情が描かれているように思う。右手前は悲しみにくれる人々、キリストの左側はこのイベントとはまったく関係ないような騒ぎが起こっている。左側の遠景の人々は、めずらしい見世物でも見に行くような足取りの軽さだし、その左側では、まったく関係なく走り回って遊んでいる。左側では近くの農民らしい人々がかごに何かを入れて運んでいたり、頭の上に荷物を乗せて運んでいる。この人たちは、キリストが処刑されるのも、まったく関係ありません、という感じだ。
 
真ん中左寄りの遠景の岩山の上に小屋があり風車が付いているようだ。
とにかく、この絵もいったい何人描かれているのだろう、というくらい人々がたくさん描き込まれている。ひとつひとつ丁寧に見ていくと面白い。
こんなに有名な聖書のシーンなのに、この絵に描かれている多くの人にとっては、お祭り騒ぎの一環であったり、日常生活の中であまり関心がない出来事だったり、なのかしらん?
すごくシリアスなストーリィがあるはずの絵なのに、ブリューゲルが料理すると、他とはかなり違ったものに見える絵になるようだ。もっとも、自然とか日常生活とかのほうが、信仰より人々の根っこに息衝いているということなのか。
 
 
 
●The Massacre of the Innocents ( 幼児虐殺)
 
イメージ 2
 
 
このシーンの説明を簡単に。
新約聖書の中のお話。
ヘロデ王の時代にイエスユダヤベツレヘムで生まれた。その時、占星術の学者たちが東方からエルサレムを訪れ、イエスの誕生を知らせる。ヘロデ王は学者たちに贈り物を持たせて、イエスを探すべくベツレヘムに遣わす。イエスを見つけ贈り物をした学者たちは「ヘロデ王のところへ帰るな」との夢のお告げで、別の道を通り自国へ帰る。ヨセフ(イエスの義父)の夢に主の天使が現れて、ヘロデ王がイエスの命を狙っているので、イエスとマリアを連れてエジプトに逃げるように告げる。ヨセフはイエスとマリアを連れてエジプトへ脱出。ヘロデ王は人を送り、ベツレヘムとその周辺一帯の2才以下の男児を一人残らず殺させた。
 
この絵はもう一枚ロンドンにあって、そちらはあまりにもむごい虐殺シーンを、後世の画家が、幼児の上から豚とかポットを描いて隠しているそうです。
で、ウィーン・バージョンです。
一面の銀世界、多分フランドルの田舎、こちらではしっかり幼児が虐殺されているシーンが描かれています。
116×160cmあるようですが、実際見た感じではそんなに大きい絵に感じられませんでした。
とにかく悲惨な光景が繰り広げられています。画面一面悲惨。
村の広場でしょうか、子供を抱えて逃げ惑う母親、何やら役人( ? ) に直訴しているらしい人、既に子供を殺されて呆然としている母親、言葉を失い立ちすくむ人々・・・。一方、子供ょ殺すためにやってきた人々は、槍を突き立てて子供を殺害中、子供を抱いて逃げる母親を馬で追い回す、家の窓から子供がいないか確認する、丸太で家のドアを押し開けようとしている、など、画面中央に鎧をつけた騎馬隊が描かれているけれど、実際手を汚しているのは赤いチュニック姿の役人 ( ? ) たちばかり。甲冑の連中は指図している姿のみ。その騎馬隊の中に黒い服の人物がおり、どうやら彼が指揮官らしい。
画面から悲鳴や泣き声、絶叫に怒号が聞こえてきそうです。
一面の雪景色、他から遮断された村、血なまぐさい事件。
絵全体が茶色っぽいというか赤っぽいというか、シーンとした雪景色と衝撃的な事件が対照的に一枚に収まって、なにやら不穏な空気感すら伝わってきます。描かれてから何百年もたっているのに。
 
当時のフランドルをスペインが統治していた、特に重税をかける対象としてのみ見られていたらしいのですが、そのことを新約聖書の「幼児虐殺」になぞらえて描いているのでは・・・という見方があるようです。
確かに、相手はブリューゲル、だだ新約聖書のワンシーンを描いただけではなさそうです。でも、新約聖書のワンシーンであるとだけ見ても、その凄惨な様子はひしひしと伝わってくる絵です。