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甘い生活を目指しています。

小説「トーマの心臓」を読んでみました

図書館で出会ってしまったので、読んでみました。
 
森 博嗣の「トーマの心臓」です。これは萩尾望都原作のマンガ「トーマの心臓」のノベライズです。
 
まず、私は森 博嗣という作家の作品を一冊も読んだことがありません。沢山作品が出ているのに、今まで読む機会がなかったので、今回初の森 博嗣です。この作家の作風など、全くの白紙状態です。そして、漫画家・萩尾望都先生の大ファンで、ついでに「トーマの心臓」の大ファンです。大ファンと言いつつ、マンガ全体を読まなくなってかなりの年月がたっています。いわば往年の萩尾望都ファンといったところでしょうか。最近、またちょろちょろ近作を読み始めたところです。
 
トーマの心臓」のノベライズが出た、というのは知っていたものの、正直言って、原作の完成度が高すぎて、ノベライズする意味があるのかな、と思っていました。
 
小説の方では、年齢が高校生から大学生くらいになっているようだし、時代設定も戦争が近い、と言っているので第一次大戦前か第二次大戦前らしい。その上、舞台は日本の理数系全寮制男子校で、オスカー以外日本人という設定。皆、なぜかドイツ名のあだ名で呼び合うという校風。
 
一通の手紙を残して、自殺してしまった学園のアイドルであったトーマ。そのトーマから遺書を残された優等生のユーリ。トーマそっくりの転校生エーリク。心を閉ざしたユーリを見守るオスカーといったところが主な登場人物で、オスカーの目を通して一連の物語が語られる。
 
う~ん。
さわやかな物語でした。なんだか梨木果歩さんの少年・少女が登場する小説を彷彿とさせるというか。ヤング・アダルト向け小説とでもいうか。友情を篤く語られたような、そしてとってもさわやかな小説。「トーマの心臓」とオスカーが全寮制の学校に来るまでの事情が描かれた「訪問者」を足したようなストーリィです。
 
でも、正直言って、原作の深さは感じませんでした。原作を読んだことがない人向けなのでは。原作の多重層的な物語の深みというものが描かれていない。「トーマの心臓」は別に友情だけの話ではないし、友情や恋愛や、そういったもの全てを含んだもっと大きな愛の話だと思うのです。そして、キリスト教的な自己犠牲といった愛の形も描かれているのです。そのへんが、お話を日本にしたとたんに限界ができてしまったようで残念です。せめて、学校の設定をキリスト教の学校とかにしたら違ったかも。そして年齢設定も、原作どおり、少年であるほうが話しにぴったりだと思うのです。14・15歳の子供とも大人とも言えない中途半端さが精神的な危うさをはらんでいて、この存在を掛けた愛の話にぴったりくるはずです。
 
小説を読んで、気になったので、帰省したおりにマンガ版を一気に読破。やっぱりマンガの方が私は好き。でも、普段、萩尾望都先生のマンガを読んだことがない森 博嗣ファンおよび小説ファンはこの機会に原作のマンガを読むことをお勧めいたします。読んで後悔がない本物ですよ。